文献情報
文献番号
201911085A
報告書区分
総括
研究課題名
プリオン病のサーベイランスと感染予防に関する調査研究
課題番号
H30-難治等(難)-指定-001
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
水澤 英洋(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター)
研究分担者(所属機関)
- 山田 正仁(金沢大学 医薬保健研究域医学系)
- 齊藤 延人(東京大学 医学部附属病院)
- 北本 哲之(東北大学 大学院医学系研究科)
- 中村 好一(自治医科大学 地域医療学センター公衆衛生学部門)
- 金谷 泰宏(東海大学医学部 基盤診療学系・臨床薬理学)
- 原田 雅史(徳島大学大学院 医歯薬学研究部)
- 佐藤 克也(長崎大学 医歯薬学総合研究科)
- 村山 繁雄(東京都健康長寿医療センター 神経内科・バイオリソースセンター・高齢者ブレインバンク(神経病理))
- 太組 一朗(聖マリアンナ医科大学 脳神経外科)
- 佐々木 秀直(北海道大学大学院医学研究院 神経病態学分野神経内科学教室)
- 青木 正志(東北大学 大学院医学系研究科)
- 小野寺 理(新潟大学 脳研究所)
- 三條 伸夫(東京医科歯科大学大学院 脳神経病態学分野)
- 村井 弘之(国際医療福祉大学 医学部)
- 塚本 忠(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター病院 脳神経内科・ 医療連携福祉部)
- 田中 章景(公立大学法人横浜市立大学 大学院医学研究科)
- 道勇 学(愛知医科大学 内科学講座神経内科)
- 望月 秀樹(大阪大学大学院医学系研究科 神経内科学)
- 阿部 康二(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 脳神経内科学)
- 松下 拓也(九州大学病院 神経内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
59,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
稀少かつ致死性感染症であるプリオン病の発症・感染機序の解明・克服を目指して、①全例サーベイランスによる疫学的研究を通じて、わが国における発生状況や新たな医原性プリオン病の出現を監視し、②遺伝子・髄液検査の普及、画像診断の改良、患者・家族への心理カウンセリング等の支援を進め、③プリオン対応の滅菌法も含めた感染予防ガイドラインの改訂を進め、プリオン病患者などの外科手術を安全に施行できる指針を提示し、④手術後にプリオン病と判明した事例を調査して、二次感染対策をとるとともにリスク保有可能性者のフォローアップを行い、⑤プリオン病の臨床研究コンソーシアムJACOPと協力してプリオン病の自然歴を解明し、開発中の治療薬・予防薬の全国規模の治験研究を支援する。
研究方法
全国を10ブロックに分けて地区サーベイランス委員を配置し、脳神経外科、各種検査(遺伝子、髄液、画像、脳波、病理)とカウンセリングの専門委員を加えてサーベイランス委員会を組織し、各都道府県のプリオン病担当専門医と協力して全例調査を目指す。プリオン蛋白質遺伝子検索と病理検索、画像読影、髄液14-3-3蛋白・タウ蛋白の測定、RT-QUIC法などの診断支援を提供し、検査の感度・特異度、診断精度の向上を図る。インシデント委員会を組織し、各事例を評価し新規事例に対する対策とリスク保有可能性者のフォローを行う。
結果と考察
サーベイランス委員会は、平成11年4月の発足より令和2年2月までに7637人を調査し3716人をプリオン病と認定し、本邦におけるプリオン病の実態を明らかにした。その内訳は、孤発性CJD 2845人(77%)、硬膜移植後CJD 91人(2.5%)、遺伝性CJD 611人(16%)、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病(GSS)149人(4%)、致死性家族性不眠症4例であった。今年度プリオン蛋白遺伝子解析を行った291例中67例に変異を認め、V180I変異が46例で最多であった。
脳波のPSD(周期性同期性放電)はCJD全体60%、孤発性CJD(sCJD)70%、遺伝性CJD 25%、硬膜移植後CJD 61%で出現し、PSD非出現群に比べて出現群ではMRI異常高信号が大脳皮質と基底核の両方に出現しやすかった。これまでに蓄積された4213症例の髄液研究では、sCJDの髄液中のバイオマーカー(14-3-3蛋白WB/ELISA、総タウ蛋白、RT-QUIC法)の感度は81.7%/71.1%、74.9%、70.3%、特異度は79.2%/85.1%、77.6%、98.9%で、RT-QUIC法での擬陽性症例が13例あった。これらの成果を活かし、関係するプリオン病及び遅発性ウイルス感染症に関する調査研究班と合同でプリオン病診療ガイドライン2017の改訂を行い2020版として発刊した。
平成29年度に運用を開始した自然歴調査とサーベイランス研究の一体化を本年度も推進し、委員会での討議をタブレット端末で行えるように整備した。未回収例の解消に努め、着実な進捗が見られた。新規インシデント可能性事案は5件であり、1件がインシデント事例であった。2018年末までの全17件のうち10事例で10年間のフォローアップ期間が終了し、二次感染事例は確認されていない。昨年度から継続しているプリオン病感染予防ガイドラインの作成を日本神経学会や関連学会と協力して完成し、3月に2020年版として発刊した。
当班で得られた最新情報は、学会だけでなく直ちにプリオン病のサーベイランスと感染対策に関する全国担当者会議あるいはホームページなどを通じて周知され、適切な診断法、治療・介護法、感染予防対策の普及に大きく貢献している。
PRION2018(スペイン、サンチアゴ)やアジア大洋州プリオン研究会によるAPPS2018(東京)に協力し、若手研究者の参加促進など広く人材育成と国際連携を進めた。
脳波のPSD(周期性同期性放電)はCJD全体60%、孤発性CJD(sCJD)70%、遺伝性CJD 25%、硬膜移植後CJD 61%で出現し、PSD非出現群に比べて出現群ではMRI異常高信号が大脳皮質と基底核の両方に出現しやすかった。これまでに蓄積された4213症例の髄液研究では、sCJDの髄液中のバイオマーカー(14-3-3蛋白WB/ELISA、総タウ蛋白、RT-QUIC法)の感度は81.7%/71.1%、74.9%、70.3%、特異度は79.2%/85.1%、77.6%、98.9%で、RT-QUIC法での擬陽性症例が13例あった。これらの成果を活かし、関係するプリオン病及び遅発性ウイルス感染症に関する調査研究班と合同でプリオン病診療ガイドライン2017の改訂を行い2020版として発刊した。
平成29年度に運用を開始した自然歴調査とサーベイランス研究の一体化を本年度も推進し、委員会での討議をタブレット端末で行えるように整備した。未回収例の解消に努め、着実な進捗が見られた。新規インシデント可能性事案は5件であり、1件がインシデント事例であった。2018年末までの全17件のうち10事例で10年間のフォローアップ期間が終了し、二次感染事例は確認されていない。昨年度から継続しているプリオン病感染予防ガイドラインの作成を日本神経学会や関連学会と協力して完成し、3月に2020年版として発刊した。
当班で得られた最新情報は、学会だけでなく直ちにプリオン病のサーベイランスと感染対策に関する全国担当者会議あるいはホームページなどを通じて周知され、適切な診断法、治療・介護法、感染予防対策の普及に大きく貢献している。
PRION2018(スペイン、サンチアゴ)やアジア大洋州プリオン研究会によるAPPS2018(東京)に協力し、若手研究者の参加促進など広く人材育成と国際連携を進めた。
結論
プリオン病サーベイランス事業の継続により、わが国におけるプリオン病の疫学的特徴を明らかにした。診断に必要な画像・脳波・遺伝子・髄液バイオマーカーの諸検査の重要性を明らかにし、インシデント事例の発生に対応し二次感染予防に努め、診療と感染予防の2つのガイドラインを刊行した。自然歴調査とサーベイランス調査の一体化とともに、調査データのデジタル化を推進した。
公開日・更新日
公開日
2020-07-07
更新日
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