HAMならびに類縁疾患の患者レジストリを介した診療連携モデルの構築によるガイドラインの活用促進と医療水準の均てん化に関する研究

文献情報

文献番号
201911081A
報告書区分
総括
研究課題名
HAMならびに類縁疾患の患者レジストリを介した診療連携モデルの構築によるガイドラインの活用促進と医療水準の均てん化に関する研究
課題番号
19FC1007
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
山野 嘉久(聖マリアンナ医科大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 中山 健夫(京都大学 大学院医学研究科)
  • 亀井 聡(日本大学 医学部)
  • 吉良 潤一(九州大学 大学院医学研究院)
  • 郡山 達男(脳神経センター大田記念病院 脳神経内科)
  • 岡山 昭彦(宮崎大学 医学部)
  • 川上 純(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 湯沢 賢治(国立病院機構水戸医療センター 臨床研究部)
  • 中川 正法(京都府立医科大学 医学研究科)
  • 中村 龍文(長崎国際大学 人間社会学部 )
  • 久保田 龍二(鹿児島大学 学術研究院総合科)
  • 松浦 英治(鹿児島大学 学術研究院)
  • 松尾 朋博(長崎大学 病院)
  • 高田 礼子(聖マリアンナ医科大学 医学部)
  • 井上 永介(聖マリアンナ医科大学 医学情報学)
  • 鴨居 功樹(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 中島 孝(国立病院機構新潟病院 神経内科)
  • 村井 弘之(国際医療福祉大学 医学部)
  • 内丸 薫(東京大学 大学院新領域創成科学研究科)
  • 坪井 義夫(福岡大学 医学部)
  • 石原 聡(琉球大学医学部附属病院 第三内科)
  • 新野 正明(北海道医療センター 臨床研究部)
  • 永井 将弘(愛媛大学 医学部附属病院臨床研究支援センター)
  • 梅北 邦彦(宮崎大学 医学部)
  • 竹之内 徳博(関西医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
11,700,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者追加 竹之内 徳博(令和元年8月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究班は、H28-H30難治性疾患政策研究班(代表:山野嘉久)にて「HAM診療ガイドライン2019」を作成しエビデンスに基づいた標準的診療アルゴリズムを示した。しかしながら、患者を取り巻く診療の質を真に向上させるためには、診療ガイドラインを作成し公開するのみでは不十分であり、診療現場における普及活動の実施、さらには活用の実態や満足度を定量的に把握し、ガイドラインの有効性を客観的に評価することで、さらなる改善へとつなげていくことが重要である。そこで本研究では、HAM診療ガイドラインの「普及→導入→評価→改訂」といったPDCAサイクルを実現し、HAMならびに類縁疾患の医療水準の向上と均てん化を目指す。
研究方法
 全国へ向けガイドラインの普及啓発活動を実施する。またガイドラインで推奨した重要な検査について患者レジストリを活用して提供する体制を整備することでガイドラインの導入を促す。さらにガイドラインの中から抽出した”診療プロセスにおける重要項目”の診療現場における実践度や有効性を定量的に評価する指標(Quality Indicator: QI)を開発し、その全国調査を行う。また患者レジストリの疫学的解析より、診療ガイドラインの改訂に必要な情報を得る。
結果と考察
 診療ガイドラインの「普及」については、関連学会ならびにMindsのウェブサイトでの公開を実現した。また診療ガイドラインの英語版を世界のHAM研究者とコンセンサスを得て完成させ、アメリカ神経学会誌(Neurology Clinical Practice, 2020)に掲載した。この成果により、世界中の専門医への波及効果が期待される。またHTLV-1陽性者の臓器移植に関するエビデンス(New Engl J Med, 2019)がアメリカ移植学会ガイドライン2019にも大幅に引用され、世界の医療レベル向上にも貢献できた。
 診療ガイドラインの「導入」については、HAM患者レジストリ「新HAMねっと」、HTLV-1陽性リウマチ患者レジストリ、HTLV-1陽性臓器移植レジストリについて、倫理委員会の承認を得た。これらのレジストリに全国の医療機関が参加することにより、ガイドラインが推奨する重要な検査の提供が実現し、レジストリを介した質の高い医療の導入につながると期待される。
 診療ガイドラインの「評価」については、ガイドライン掲載内容との「ギャップの定量化」と、「課題の抽出やニーズの把握」が重要と考え、質問項目を大きくこの二つに分類した。「ギャップの定量化」は、HAM診療ガイドラインに記載した確定的な内容である、感染や診断のアルゴリズムに関する実施率を測定することとし、これを“QI類似項目”とした。また「課題の抽出、ニーズの把握」は、診療ガイドラインで示した治療方針に対する同意率を測定し、専門医がこの治療方針を妥当と考えているか、すなわち妥当性について調査することとした。本研究で開発したこの評価方針は、エビデンスが不十分である様々な希少難病において、「ガイドライン・プラクティスギャップ」を評価する際に参考となるであろう。
 さらにHAM患者レジストリを活用した疫学解析では、HAM患者の生命予後が悪いこと、死因としてATLが多いことを証明し、ATLハイリスク集団の同定方法を示した。今後、HAM患者やHTLV-1陽性患者における「ATLハイリスクの同定方法」ならびに「ATLハイリスク患者への治療方針」に関するエビデンスの集積は急務と考えられる。またHAM患者の排尿障害評価指標を国際的なコンセンサスの元に確立し、さらにHAM患者におけるQOLの解析から、HAM患者では、運動障害や排尿障害のみならず、痛み・しびれもQOLに大きく影響していることが示された。この結果は、HAM患者において痛み・しびれに関する調査研究や評価指標の確立の必要性を示唆する。
結論
 本研究で開発した「診療の質評価指標」は、ガイドラインから”診療プロセスにおける重要項目”を抽出して作成し調査を行うため、「調査項目=診療上の重要性が高い」ことを調査対象者(医療者)に意識付けでき、さらに調査結果の公開により、医療者自身の診療プロセス改善や、実情を踏まえたガイドラインへの継続的な改訂へと繋がり、豊富なエビデンスを得にくい希少難病の診療環境を改善させるユニークな手法となる可能性がある。さらに、HAM患者レジストリの解析から得られた結果は、診療ガイドラインの改訂に資する情報を提供するだけでなく、2020年度以降の重要な検討課題も示した。このように本研究の遂行は、診療ガイドラインの普及や改善を促進し、患者のQOLを大きく向上させることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201911081Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
15,210,000円
(2)補助金確定額
15,210,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,425,926円
人件費・謝金 170,344円
旅費 3,060,660円
その他 4,047,558円
間接経費 3,510,000円
合計 15,214,488円

備考

備考
自己資金4,488円

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
2021-06-14