好酸球性副鼻腔炎における治療指針作成とその普及に関する研究

文献情報

文献番号
201911071A
報告書区分
総括
研究課題名
好酸球性副鼻腔炎における治療指針作成とその普及に関する研究
課題番号
H30-難治等(難)-一般-016
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
藤枝 重治(福井大学 学術研究院医学系部門)
研究分担者(所属機関)
  • 竹野 幸夫(広島大学大学院 医歯薬保健学研究科)
  • 檜垣 貴哉(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 )
  • 三輪 高喜(金沢医科大学 医学部)
  • 小林 正佳(三重大学大学院・医学系研究科 )
  • 近藤 健二(東京大学 医学部付属病院)
  • 都築 建三(兵庫医科大学 医学部)
  • 池田 勝久(順天堂大学 医学部 )
  • 吉田 尚弘(自治医科大学 医学部 )
  • 松根 彰志(日本医科大学 医学部)
  • 中丸 裕爾(北海道大学大学院医学研究院)
  • 太田 伸男(東北医科薬科大学 医学部)
  • 浦島 充佳(東京慈恵会医科大学 医学部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
3,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
好酸球性副鼻腔炎の診断基準、重症度分類は日本においてかなり浸透されてきたが、治療指針を作成するデータは、ほとんど存在しない。本研究では、手術治療および保存的治療の症例を電子登録することで、治療効果を判定し、指針作成に反映させる。好酸球性副鼻腔炎の主訴として嗅覚障害が挙げられるが、嗅覚障害のガイドラインを作成する。また臨床マーカーは、各種治療の効果判定、予後判定に有効である。そのため予後判定に使用できる臨床マーカーを探索する。好酸球性の病態に関し、遺伝的要因の影響、外因的要因の影響を調べる。
研究方法
JESREC studyおよび厚生労働省難治性疾患等政策研究事業のホームページ「指定難病306 好酸球性副鼻腔炎に関する研究」において、所属機関で行った手術症例と保存的治療症例を登録する。市民講座、ハンズオンセミナーは学会において共同企画の形で参画する。
好酸球性副鼻腔炎患者において、遺伝子的な面から、Thymic stromal lymphopoietin(TSLP)の遺伝子多型を調べた。鼻腔における一酸化窒素(NO)は主に一酸化窒素合成酵素(NOS2)によって合成され、NOS2遺伝子には遺伝子多型の1つである反復配列多型が存在する。慢性副鼻腔炎患者および好酸球性副鼻腔炎患者において、NOS2反復配列の回数GeneMapper softwareで検討し、術後の再発との関連を調べた。臨床マーカーとして慢性副鼻腔炎患者の血清(n=336)のIgG4とペリオスチンを測定した。
 鼻腔洗浄液および鼻腔組織のトロンビン、thrombin antithrombin Complex (TATc)、Thrombin activatable fibrinolysis inhibitor (TAFI)、Eosinophil cationic protein (ECP)をELISAでした。好酸球上のL-selectin と炎症個所に発現するHEV 様血管内皮上の末梢リンパ節アドレシン(PNAd)との関与に着目した。組織中のPNAd の発現、血管内腔に接着する白血球の傾向、好酸球上のL-セレクチン発現、PNAd を発現させたCHO 細胞への好酸球接着の相違を解析した。
結果と考察
手術症例は、現在470例登録された。第120回日本耳鼻咽喉科学会にて鼻科ハンズオン(48名)を行った。日本耳鼻咽喉科学会夏期講習会でESSのビデオセミナー(25名)を開催した。第58回日本鼻科学会総会において、「鼻の病気の最新情報:アレルギー性鼻炎と副鼻腔炎 減ったあおばな、増える難治性ちくのう」の演題名で市民講座を行った。約120名の参加者があった。第33回日本耳鼻咽喉科学会専門医講習会で鼻科ハンズオンセミナー(40名)を開催した。いずれも参加者からは好評であり、セミナー後のアンケート調査では手術に対する自信が向上していた。嗅覚障害のガイドラインを作成し発刊した。
TSLP 遺伝子多型(rs1837253)が好酸球性副鼻腔炎およびアスピリン不耐症患者ともに別集団による2度の解析で、有意な相関を認めた。NOS2 反復配列の回数が少ないほど鼻茸におけるNOS2 遺伝子発現量が増加していた。反復配列の回数を、11 回以下をS 型、12 回以上をL 型と分類したところ、多施設前向きコホートを用いた慢性副鼻腔炎患者および好酸球性副鼻腔炎患者では、S/S型はS/L 型やL/L 型と比較して高い術後再発率を示した。血清IgG4 は、カットオフ値を95 mg/dl とすると、感度39.7%、特異度80.5%で慢性副鼻腔炎のESS後の再発を予測できた。さらに血清ペリオスチン値(カットオフ値115.5 ng/ml)と組み合わせることで、どちらかが陽性であった例は両者が陰性であった例に比べ、オッズ比3.95で術後再発をきたした。好酸球性副鼻腔炎患者における鼻茸組織と鼻腔洗浄液中のトロンビンとTAFIが健常者と比較して有意に高いこと、特に気管支喘息を合併する患者で高いことを見出した。好酸球性副鼻腔炎の鼻茸にはPNAdが発現したHEV様血管が有意に誘導されていた。さらに好酸球性副鼻腔炎のHEV様血管には、好酸球の接着が有意に多く認めた。
結論
好酸球性副鼻腔炎の治療指針は現在最終段階に入っている。好酸球性副鼻腔炎の啓蒙活動に関しては順調に行えていると考えている。好酸球副鼻腔炎は、まだ十分に病態、原因がわかっていないが、遺伝子発現、遺伝子多型、遺伝子繰り返し配列回数、好酸球浸潤機序がわかってきた。新規治療法として、抗体治療も発表されるとともに保険承認もなされ、好酸球性副鼻腔炎患者にも明るい時代を迎えつつある。

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
2021-11-29

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201911071Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,940,000円
(2)補助金確定額
4,940,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 435,729円
人件費・謝金 2,265,765円
旅費 287,560円
その他 810,946円
間接経費 1,140,000円
合計 4,940,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
2021-06-14