文献情報
文献番号
201911034A
報告書区分
総括
研究課題名
先天性呼吸器・胸郭形成異常疾患に関する診療ガイドライン作成ならびに診療体制の構築・普及に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H29-難治等(難)-一般-041
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
臼井 規朗(地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪母子医療センター 小児外科)
研究分担者(所属機関)
- 田口 智章(国立大学法人九州大学 大学院医学研究院 小児外科学分野 )
- 早川 昌弘(名古屋大学 医学部附属病院 新生児科)
- 奥山 宏臣 (国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科 小児成育外科)
- 照井 慶太(国立大学法人千葉大学 医学部附属病院 小児外科)
- 甘利 昭一郎(国立成育医療研究センター 周産期母性診療センター 新生児科)
- 増本 幸二(国立大学法人筑波大学 医学医療系 小児外科)
- 漆原 直人(静岡県立こども病院 小児外科)
- 岡崎 任晴 (順天堂大学 医学部 小児外科)
- 稲村 昇(近畿大学 医学部 小児科)
- 豊島 勝昭(地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター 新生児科)
- 古川 泰三(京都府公立大学法人京都府立医科大学 小児外科)
- 岡和田 学(順天堂大学医学部 小児外科)
- 黒田 達夫(慶應義塾大学医学部 小児外科 )
- 広部 誠一(東京都立小児総合医療センター 小児外科)
- 渕本 康史(慶應義塾大学医学部 小児外科)
- 松岡 健太郎(東京都立小児総合医療センター 検査科)
- 野澤 久美子(地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター 放射線科)
- 前田 貢作(国立大学法人神戸大学 大学院医学研究科 小児外科学分野)
- 西島 栄治(社会医療法人愛仁会高槻病院 小児外科)
- 守本 倫子(国立研究開発法人国立成育医療研究センター 感覚器形態外科部耳鼻咽喉科)
- 肥沼 悟郎(慶應義塾大学医学部 小児科 )
- 二藤 隆春(学校法人埼玉医科大学 総合医療センター 耳鼻咽喉科)
- 藤野 明浩(国立研究開発法人国立成育医療研究センター 臓器・運動器病態外科部外科)
- 小関 道夫(国立大学法人岐阜大学 医学部附属病院 小児科)
- 平林 健(国立大学法人弘前大学 医学部附属病院 小児外科)
- 川上 紀明 (国家公務員共済組合連合会名城病院 整形外科/脊椎脊髄センター)
- 渡邉 航太(慶應義塾大学医学部 整形外科)
- 山元 拓哉(日本赤十字社鹿児島赤十字病院 第二整形外科 )
- 小谷 俊明(聖隷佐倉市民病院 整形外科)
- 鈴木 哲平(独立行政法人国立病院機構神戸医療センター リハビリテーション科)
- 佐藤 泰憲(慶應義塾大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、先天性呼吸器・胸郭形成異常疾患である先天性横隔膜ヘルニア、先天性嚢胞性肺疾患、気道狭窄、頚部・胸部リンパ管腫(リンパ管奇形)・リンパ管腫症、肋骨異常を伴う先天性側弯症につき、診断基準や重症度分類を作成したうえで、学会等と連携しながら診療ガイドラインを整備し、長期的なフォローアップ体制と患者支援のための診療体制を構築し、難病拠点病院と連携した適切な診療体制を構築することである。
研究方法
先天性横隔膜ヘルニアについては、REDCapを用いた症例登録システムを利用し、本研究班に参加している15施設の症例について2006年-2016年の症例に関しては後方視的研究としてデータの統計解析を行った。2017年以降に出生する症例に関しては、治療標準化のための統一治療プロトコールを作成した上で前方視的研究として統計解析が行えるようにし、長期生存例に対する長期フォローアップも行えるようにCase Report Formを設計した。先天性嚢胞性肺疾患については、先天性嚢胞状腺腫様肺形成異常(CPAM)のみを単独で抜き出し、CPAMを特定するための臨床的・病理学的要件を検討して、新たなCPAMの診断基準を作成した。また、診療ガイドラインについては、最後に残ったCQ3、CQ4、CQ5の3題についてガイドラインの推奨文・解説文を策定した。気道狭窄については、本症の分類を含めた診断、症状、治療法と介入のタイミングの4部構成とし、16 題のCQの二次スクリーニングの結果から、これらを統括して推奨文を作成する方針とした。頚部・胸部リンパ管腫・リンパ管腫症については、リンパ管拡張症も研究対象として含めたうえで、全国調査の総括として論文を作成した。また、「血管腫・血管奇形・リンパ管奇形診療ガイドライン2017」の英語論文化を進めた。肋骨異常を伴う先天性側弯症については、二分脊椎疾患における脊柱変形および胸郭変形の後ろ向き調査、胸郭不全症候群に対するギプス/装具治療の後ろ向き調査、VEPTR手術の効果についての検討、早期固定術の呼吸機能と胸椎高への影響に関する検討、dynamic MRIを用いた呼吸動態評価、早期発症側弯症に対するgrowing rod手術の成績などを行った。
結果と考察
先天性横隔膜ヘルニアでは、2011-2017年の計531症例のデータを2019年3月末までにデータクリーニングを終え、2018年に出生した70例の新規追加症例登録と当該年齢に達した長期フォローアップ症例の追加登録を行い計601例での解析が可能となった。また CDH Study Groupとの国際共同研究ではデータ送付を終えた。先天性嚢胞性肺疾患では、診療ガイドラインの残る3題のCQすなわちCQ3:病変容積指標はリスク判定に有用か、CQ4:生後診断にCTは有用か、CQ5:血管造影は推奨されるかの推奨文を作成した。気道狭窄では、CQに対する文献検索と二次スクリーニング完了後、AMEDエビデンス創出研究班『咽頭・喉頭・気管狭窄に関する全国疫学調査 』の調査を行った。頚部・胸部リンパ管腫・リンパ管腫症では「血管腫・血管奇形・リンパ管奇形診療ガイドライン2017」の英語論文が秋田班との協力で完成し、2019年11月に2誌にacceptされた。肋骨を伴う先天性側弯症では、二分脊椎が胸腰椎移行部に及ぶと脊柱変形は学童期までに高度となる可能性が高いことや、 Growing rod術前81.8±22.1°の Cobb角が最終固定術後は50.6±22.1°になること、Growing rod手術により47例に116件の合併症が発生したことなどが示された。本研究が対象とする先天性横隔膜ヘルニア、先天性嚢胞性肺疾患、気道狭窄、頚部・胸部リンパ管腫・リンパ管腫症、肋骨変形を伴う脊椎側弯症のうち、半数以上の疾患で診療ガイドラインが作成されたが、難治性希少疾患であるがゆえに推奨文のエビデンスレベルはいずれも低いものに留まった。今後は難治性希少疾患のであるこれらの疾患について、さらなる症例の蓄積と科学的根拠を高めるための臨床研究の遂行により、エビデンスレベルを高めるとともに、社会保障制度を充実させながら、患者支援のための診療体制を確立することが重要と考えられた。
結論
先天性呼吸器・胸郭形成異常疾患のうち、難治性希少疾患のである先天性横隔膜ヘルニア、先天性嚢胞性肺疾患、気道狭窄、頚部・胸部リンパ管腫(リンパ管奇形)・リンパ管腫症、肋骨異常を伴う先天性側弯症については、さらなる症例の蓄積と科学的根拠を高めるための臨床研究の遂行により、エビデンスレベルを高めるとともに、社会保障制度を充実させながら、患者支援のための診療体制を確立することが重要と考えられた。
公開日・更新日
公開日
2021-05-27
更新日
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