文献情報
文献番号
201911025A
報告書区分
総括
研究課題名
もやもや病(ウイリス動脈輪閉塞症)の診断、治療に関する研究
課題番号
H29-難治等(難)-一般-032
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
宮本 享(国立大学法人京都大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 冨永 悌二(国立大学法人東北大学 医学系研究科)
- 中原 仁(慶應義塾大学 医学部)
- 黒田 敏(国立大学法人富山大学 医学薬学研究部)
- 小泉 昭夫(国立大学法人京都大学 医学研究科)
- 高橋 淳(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 脳神経外科)
- 佐藤 典宏(国立大学法人北海道大学 北海道大学病院)
- 宝金 清博(国立大学法人北海道大学 北海道大学病院)
- 数又 研(国立大学法人北海道大学 北海道大学病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
6,731,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
もやもや病(ウイリス動脈輪閉塞症)の診断・治療に関する政策研究班は、もやもや病診断基準の適正化、重症度基準に関するエビデンス構築、QOL調査、診療ガイドラインの適宜改訂を主な課題とする。これまで過去2年間にガイドライン改訂、重症度基準の策定、疾患レジストリの構築を行ってきた。また、本研究班を構成する研究者により、現在、5つの多施設共同臨床研究が実施されている。令和元年度は、平成29年度より開始された3年計画の3年目に当たり、[1]診断基準の改訂、[2]疾患レジストリの症例登録継続と生体資料バンクの構築、[3]臨床上重要性が高い事項に対する科学的根拠創出を目指した多施設共同研究の取りまとめと支援を目的とした。
研究方法
もやもや病(ウイリス動脈輪閉塞症)の診断、治療に関する政策研究課題を達成するため、重点課題と複数の多施設共同研究支援を効率的に実施、総括するために、3度の班員全体会議を開催した。そのほかに、各作業グループを組織し、その活動を総括支援した。
結果と考察
[1]診断基準の改訂
これまでの診断基準は2015年に改訂されたものであり、その後の知見の積み重ねにより現状にそぐわない部分がでてきたため、改訂を行った。現在各関連学会からの承認を得るため、各学会に提出して審議中である。
[2]疾患レジストリの症例登録継続と生体資料バンクの構築
昨年度までに、北海道大学脳神経外科と北海道大学臨床研究開発センターで構成されるワーキンググループによりWeb登録システムは完成し、患者登録が開始されている。今年度は他施設も含めて症例の登録作業を行った。令和2年3月末の時点で、127名の患者が登録された。
[3]臨床上重要性が高い事項に対する科学的根拠創出を目指した多施設共同研究の取りまとめと支援
1. 無症候性もやもや病の新たな多施設共同研究(AMORE)
無症候性もやもや病の自然歴を明らかにする多施設共同研究(AMORE)は、平成24年1月1日~平成27年12月31日の期間に109症例を集積し脳卒中イベントの発生率を観察中である。
2. もやもや病における高次脳機能障害に関する検討COSMO-JAPAN study
COSMO-JAPAN studyは、36症例の登録が行われ、そのデータ解析により、帯状回における著明なIMZの集積低下と前頭葉機能の相関が明らかになった。
3.片側性もやもや病の進行と遺伝的要因に関する患者登録研究 (SUPRA Japan Registry)
RNF213遺伝子遺伝子多型ともやもや病の進展との関連を明らかにするために片側性もやもや病の進行とRNF213遺伝子多型の相関を解析した。昨年度までに登録された133例の解析の結果、RNF213遺伝子のR4810K変異が対側進行と有意に関わっていることを示した。
4. もやもや病成人出血発症例の治療方針に関する研究
成人の再出血に対する外科的血行再建術の予防効果に関するRandomized control study (Japan Adult Moyamoya Trial;JAM tria)のリスク層別化解析により、血行力学的重症度によりバイパス術の再出血予防効果が異なる(手術効果が高い)傾向があること(p=0.056)を報告した。
5. 60歳以上の高齢発症もやもや病に関する多施設共同調査(MODEST)
高齢者のもやもや病患者(60歳以上)の自然歴、治療合併症を検討するMODEST研究は現在患者登録を継続している。令和元年8月31日まで51例の患者が登録され、登録を終了した。現在、経過観察中で、これまでに2例で出血転化を認めた。
6. もやもや病における抗血小板療法
昨年度までに,本邦におけるもやもや病での抗血小板薬の使用実態調査の結果の報告ともやもや病での抗血小板療法の使用実態や効果についての記載がなされた論文を検索し,現時点における同治療の総括を行った。
7. RNF213遺伝子の遺伝解析
本年度は、RNF213遺伝子の機能解析を行い、もやもや病でみられるRNF213変異で蛋白の分解や蛋白間のシグナル伝達の機能を有するE3ユビキチンリガーゼドメインの機能低下がみられ、その機能喪失変異は、NFkBの活性化、Caspase3の分解によりApoptosisを引き起こすことを見出した。
これまでの診断基準は2015年に改訂されたものであり、その後の知見の積み重ねにより現状にそぐわない部分がでてきたため、改訂を行った。現在各関連学会からの承認を得るため、各学会に提出して審議中である。
[2]疾患レジストリの症例登録継続と生体資料バンクの構築
昨年度までに、北海道大学脳神経外科と北海道大学臨床研究開発センターで構成されるワーキンググループによりWeb登録システムは完成し、患者登録が開始されている。今年度は他施設も含めて症例の登録作業を行った。令和2年3月末の時点で、127名の患者が登録された。
[3]臨床上重要性が高い事項に対する科学的根拠創出を目指した多施設共同研究の取りまとめと支援
1. 無症候性もやもや病の新たな多施設共同研究(AMORE)
無症候性もやもや病の自然歴を明らかにする多施設共同研究(AMORE)は、平成24年1月1日~平成27年12月31日の期間に109症例を集積し脳卒中イベントの発生率を観察中である。
2. もやもや病における高次脳機能障害に関する検討COSMO-JAPAN study
COSMO-JAPAN studyは、36症例の登録が行われ、そのデータ解析により、帯状回における著明なIMZの集積低下と前頭葉機能の相関が明らかになった。
3.片側性もやもや病の進行と遺伝的要因に関する患者登録研究 (SUPRA Japan Registry)
RNF213遺伝子遺伝子多型ともやもや病の進展との関連を明らかにするために片側性もやもや病の進行とRNF213遺伝子多型の相関を解析した。昨年度までに登録された133例の解析の結果、RNF213遺伝子のR4810K変異が対側進行と有意に関わっていることを示した。
4. もやもや病成人出血発症例の治療方針に関する研究
成人の再出血に対する外科的血行再建術の予防効果に関するRandomized control study (Japan Adult Moyamoya Trial;JAM tria)のリスク層別化解析により、血行力学的重症度によりバイパス術の再出血予防効果が異なる(手術効果が高い)傾向があること(p=0.056)を報告した。
5. 60歳以上の高齢発症もやもや病に関する多施設共同調査(MODEST)
高齢者のもやもや病患者(60歳以上)の自然歴、治療合併症を検討するMODEST研究は現在患者登録を継続している。令和元年8月31日まで51例の患者が登録され、登録を終了した。現在、経過観察中で、これまでに2例で出血転化を認めた。
6. もやもや病における抗血小板療法
昨年度までに,本邦におけるもやもや病での抗血小板薬の使用実態調査の結果の報告ともやもや病での抗血小板療法の使用実態や効果についての記載がなされた論文を検索し,現時点における同治療の総括を行った。
7. RNF213遺伝子の遺伝解析
本年度は、RNF213遺伝子の機能解析を行い、もやもや病でみられるRNF213変異で蛋白の分解や蛋白間のシグナル伝達の機能を有するE3ユビキチンリガーゼドメインの機能低下がみられ、その機能喪失変異は、NFkBの活性化、Caspase3の分解によりApoptosisを引き起こすことを見出した。
結論
もやもや病(ウイリス動脈輪閉塞症)の診断、治療に関する研究班の研究成果について総括した。疾患横断的な難病プラットフォームや学会の登録事業との連携を模索しながら、従来から継続している診療エヒデンスの構築を軸足として、多施設共同臨床研究からより高い成果をあげることを目標としていく。
公開日・更新日
公開日
2021-05-27
更新日
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