難治性聴覚障害に関する調査研究

文献情報

文献番号
201911024A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性聴覚障害に関する調査研究
課題番号
H29-難治等(難)-一般-031
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
宇佐美 真一(国立大学法人信州大学 学術研究院医学系)
研究分担者(所属機関)
  • 松原 篤(弘前大学 大学院医学研究科)
  • 佐藤 宏昭(岩手医科大学 耳鼻咽喉科)
  • 野口 佳裕(信州大学 医学部)
  • 和田 哲郎(筑波大学 医学医療系)
  • 石川 浩太郎(国立障害者リハビ リテーションセン ター病院 耳鼻咽喉科)
  • 池園 哲郎(埼玉医科大学 耳鼻咽喉科)
  • 武田 英彦(虎の門病院 耳鼻咽喉科)
  • 加我 君孝(東京医療センター 臨床研究センター)
  • 小川 郁(慶應義塾大学 耳鼻咽喉科学)
  • 山岨 達也(東京大学 医学部耳鼻咽喉科)
  • 佐野 肇(北里大学 医療衛生学部)
  • 岩崎 聡(国際医療福祉大学 三田病院 耳鼻咽喉科)
  • 曽根 三千彦(名古屋大学 大学院医学系研究科)
  • 村田 敏規(信州大学 学術研究院医学系)
  • 内藤 泰(神戸市立医療センター中央市民病院 耳鼻咽喉科)
  • 西崎 和則(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 山下 裕司(山口大学 大学院医学系研究科)
  • 羽藤 直人(愛媛大学 医学系研究科耳鼻咽喉科頭頸部外科)
  • 中川 尚志(九州大学 医学部耳鼻咽喉科)
  • 東野 哲也(宮崎大学 医学部耳鼻咽喉科)
  • 鈴木 幹男(琉球大学 大学院医学研究科)
  • 小橋 元(獨協医科大学 医学部公衆衛生学)
  • 中西 啓(浜松医科大学 医学部耳鼻咽喉科 頭頸部外科)
  • 茂木 英明(信州大学 学術研究院医学系(医学部附属病院))
  • 西尾 信哉(信州大学 医学部)
  • 将積 日出夫(富山大学 大学院医学薬学研究部)
  • 北原 糺(奈良県立医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
難聴は音声言語コミュニケーションの際に大きな障害となるため、日常生活や社会生活の質(QOL)の低下を引き起こし、長期に渡って生活面に支障を来たすため、診断法・治療法の開発が期待されている重要な疾患のひとつである。しかしながら、①聴覚障害という同一の臨床症状を示す疾患の中に原因の異なる多くの疾患が混在しており、②各疾患の患者数が少なく希少であるため、効果的な診断法および治療法は未だ確立されていない状況である。本研究では、指定難病である若年発症型両側性感音難聴、アッシャー症候群、遅発性内リンパ水腫について、All Japanの研究体制で調査研究を行う事により、希少な疾患の臨床実態および治療効果の把握を効率的に実施し、診断基準の改訂、重症度分類の改訂および科学的エビデンスに基づいた診療ガイドラインの策定を目的としている。
研究方法
令和1(平成31)年度は、全国の拠点医療機関に属する分担研究者協力研究者によって収集された若年発症型両側性感音難聴、アッシャー症候群、ならびに遅発性内リンパ水腫の患者データからなる臨床情報データベース(症例登録レジストリ)を構築し、疾患ごと臨床的所見(臨床像・随伴症状など)の詳細な検討を行なった。
結果と考察
若年発症型両側性感音難聴に関しては、症例登録レジストリに794症例が登録された。症例の家系情報から、遺伝形式としては常染色体優性遺伝形式をとる難聴症例が多く認められた。原因遺伝子の解析結果では、現在の指定難病の要件である 7遺伝子に変異が同定されている症例は22%であった。一方、その他の原因遺伝子に変異が同定されている症例が16%あった。登録された症例のうち中等度難聴までが75%を占めており、指定難病の重症度判定とされる70dB以上の高度~重度難聴は25%であった。
 アッシャー症候群は、204症例が症例登録レジストリに登録された。臨床症状から解析したサブタイプ分類では、タイプ1、2、3がそれぞれ同程度の頻度であった。原因となる遺伝子変異に関しては、従来の報告と同様に、タイプ1症例より、MYO7A、CDH23遺伝子変異、タイプ2ではUSH2A遺伝子変異が多く同定された。ただし、遺伝学的検査を行っている症例が約半数であり、また、指定難病認定が済んでいる症例が約25%程度であることから、遺伝学的検査の拡充と指定難病申請に関する啓蒙が必要である。
 遅発性内リンパ水腫に関しては90症例の臨床情報が収集され、先行する高度難聴の発症年齢、原因疾患から、ムンプス難聴が主要な原因となっている可能性が明らかとなった。今後さらなる検討が必要である。
結論
レジストリに集積されたデータを基に詳細な検討を行い得られた成果は、発症メカニズムの解明や、今後の新たな治療法開発のための重要な基盤情報となることが示唆される。

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201911024B
報告書区分
総合
研究課題名
難治性聴覚障害に関する調査研究
課題番号
H29-難治等(難)-一般-031
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
宇佐美 真一(国立大学法人信州大学 学術研究院医学系)
研究分担者(所属機関)
  • 松原 篤(弘前大学 大学院医学研究科)
  • 佐藤 宏昭(岩手医科大学 耳鼻咽喉科)
  • 野口 佳裕(信州大学 医学部)
  • 原 晃(筑波大学 医学医療系)
  • 和田 哲郎(筑波大学 医学医療系)
  • 石川 浩太郎(国立障害者リハビ リテーションセン ター病院 耳鼻咽喉科)
  • 池園 哲郎(埼玉医科大学 耳鼻咽喉科)
  • 武田 英彦(虎の門病院 耳鼻咽喉科)
  • 加我 君孝(東京医療センター 臨床研究センター)
  • 小川 郁(慶應義塾大学 医学部耳鼻咽喉科)
  • 山岨 達也(東京大学 医学部耳鼻咽喉科)
  • 佐野 肇(北里大学 医療衛生学部)
  • 岩崎 聡(国際医療福祉大学 三田病院 耳鼻咽喉科)
  • 曽根 三千彦(名古屋大学 大学院医学系研究科)
  • 村田 敏規(信州大学 学術研究院医学系)
  • 内藤 泰(神戸市立医療センター中央市民病院 耳鼻咽喉科)
  • 西崎 和則(岡山大学 大学院医歯薬学総 合研究科)
  • 山下 裕司(山口大学 大学院医学系研究 科)
  • 羽藤 直人(愛媛大学 医学系研究科耳鼻 咽喉科頭頸部外科)
  • 中川 尚志 (九州大学 医学部耳鼻咽喉科)
  • 東野 哲也(宮崎大学 医学部耳鼻咽喉科)
  • 高橋 晴雄(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 鈴木 幹男(琉球大学 大学院医学研究科)
  • 小橋 元(獨協医科大学 医学部公衆衛生学)
  • 中西 啓(浜松医科大学 医学部耳鼻咽喉科 頭頸部外科)
  • 茂木 英明 (信州大学 学術研究院医学系 (医学部附属病院))
  • 西尾 信哉(信州大学 医学部)
  • 将積 日出夫(富山大学 大学院医学薬学研 究部(医学))
  • 北原 糺(奈良県立医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
難聴は音声言語コミュニケーションの際に大きな障害となるため、日常生活や社会生活の質(QOL)の低下を引き起こし、長期に渡って生活面に支障を来たすため、診断法・治療法の開発が期待されている重要な疾患のひとつである。しかしながら、①聴覚障害という同一の臨床症状を呈する疾患の中に原因の異なる多くの疾患が混在しており、②各疾患の罹患者数が少なく希少であるため、効果的な診断法および治療法は未だ確立されていない状況である。本研究では、指定難病である若年発症型両側性感音難聴、アッシャー症候群、遅発性内リンパ水腫について、All Japanの研究体制で調査研究を行う事により、希少な疾患の臨床実態および治療効果の把握を効率的に実施し、診断基準の改訂、重症度分類の改訂および科学的エビデンスに基づいた診療ガイドラインの策定を目的としている。
研究方法
本研究では、全国の拠点医療機関に属する分担協力者、協力研究者によって収集された若年発症型両側性感音難聴、アッシャー症候群、ならびに遅発性内リンパ水腫の患者データにより構築された臨床情報データベース(症例登録レジストリ)を基盤とし、臨床的所見(臨床像・随伴症状など)、および治療実態の解析を行なった。これらに並行して、平成29–30年において、 若年発症型両側性感音難聴ならびにアッシャー症候群の症例数の把握を目的とした、全国疫学調査を実施した。
結果と考察
若年発症型両側性感音難聴に関しては、症例登録レジストリに794症例が登録された。症例の家系情報から、遺伝形式としては常染色体優性遺伝の症例が多く認められた。原因遺伝子の解析結果では、現在の指定難病の要件 7遺伝子の変異が同定されている症例は22%であった。一方、その他の原因遺伝子変異が同定されている症例が16%あった。登録された症例のうち中等度難聴までが75%を占めており、指定難病の重症度判定とされる70dB以上の高度~重度難聴は25%であった。
アッシャー症候群に関しては、204症例が症例登録レジストリに登録された。臨床症状から解析したサブタイプ分類では、タイプ1、2、3がそれぞれ同程度の頻度であった。原因となる遺伝子変異に関しては、タイプ1では従来の報告と同様に、MYO7A、CDH23遺伝子変異、タイプ2ではUSH2A遺伝子変異が多く同定された。ただし、遺伝子学的検査を行っている症例が約半数であり、また、指定難病認定が済んでいる症例が約25%程度であることから、遺伝学的検査の拡充と指定難病申請に関する啓蒙が必要である。
遅発性内リンパ水腫では90症例の臨床情報が収集され、先行する高度難聴の発症年齢、原因疾患から、ムンプス難聴が主要原因となっている可能性が明らかとなった。今後さらなる検討が必要である。
また、レジストリに収集されたデータを用い、急性感音難聴(突発性難聴、急性低音障害型感音難聴、外リンパ瘻、ムンプス難聴、急性音響障害)について、重症度・治療効果についてまとめるとともに、システマティックレビューを行い、成果を『急性感音難聴診療の手引き2018年版』として出版した。
全国疫学調査では、全国の調査対象となった耳鼻咽喉科784施設、ならびに眼科847施設に、一次調査表を送付し、それぞれ592施設(75.7%)、569施設(67.1%)から回答を得た。一次調査結果に基づく患者推計では、若年発症型両側性感音難聴は全国に約720症例と推計され、人口10万人あたり0.57人と推定された。アッシャー症候群に関する患者推計では、約510症例と推計され、人口10万人あたり0.40人と推定された。
結論
疫学調査ならびにレジストリに集積されたデータを基に詳細な検討を行い得られた成果は、患者数の把握、臨床実態の把握、治療効果の解析の基盤となる。また、将来的には、発症メカニズムの解明や、新たな治療法開発(診療ガイドラインの策定など)のための重要な基盤としての活用が期待される。

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201911024C

収支報告書

文献番号
201911024Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
26,000,000円
(2)補助金確定額
24,113,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,887,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 7,157,501円
人件費・謝金 5,825,285円
旅費 2,106,775円
その他 3,023,658円
間接経費 6,000,000円
合計 24,113,219円

備考

備考
自己資金219円

公開日・更新日

公開日
2021-06-14
更新日
-