重症多形滲出性紅斑に関する調査研究

文献情報

文献番号
201911021A
報告書区分
総括
研究課題名
重症多形滲出性紅斑に関する調査研究
課題番号
H29-難治等(難)-一般-028
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
森田 栄伸(国立大学法人島根大学 医学部皮膚科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 相原 道子(横浜市立大学 大学院医学研究科)
  • 末木 博彦(昭和大学 医学部)
  • 浅田 秀夫(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部)
  • 阿部 理一郎(国立大学法人新潟大学 医歯学系)
  • 橋爪 秀夫(磐田市立総合病院 第2医療部)
  • 外園 千恵(京都府立医科大学 大学院医学研究科)
  • 黒沢 美智子(順天堂大学 医学部)
  • 莚田 泰誠(国立研究開発法人理化学研究所 生命医科学研究センター)
  • 椛島 健治(京都大学 大学院医学系研究科)
  • 大山 学(杏林大学 医学部)
  • 高橋 勇人(座應義塾大学 医学部)
  • 藤山 幹子(国立病院機構四国がんセンター 統括診療部第一病棟部)
  • 新原 寛之(国立大学法人島根大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
13,462,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
重症多形滲出性紅斑であるSJS/ TEN及びDIHSを対象として診療ガイドラインを策定し、その普及とともに診療ガイドラインのエビデンスに基づく改訂を行い、これらの疾患の医療の向上と均てん化を目的とする。
研究方法
SJS/TENの診療拠点病院の整備
 SJS/TENの適切な診療に必要な一定基準を満たす施設をSJS/TEN診療拠点病院として認定する。認定の基準は、本研究班が開催するSJS/TENの診療ガイドライン2016の解説を行う講習会に参加すること、SJS/ TEN、DIHSの診療を行う病院内診療科の連携体制について確認を行うこととした。
SJS/TEN発症の遺伝的背景の検討
 重症多形滲出性紅斑患者およびその対照者のDNAおよび診療情報の収集を継続して行い、それを基にSJS/TEN発症に関与する遺伝的要因を解明する。
SJS/TENの疫学調査の実施
 2008年に本研究班で実施した全国調査の調査項目を基準に、再度全国疫学調査を実施する。
SJS/TEN治療法向上のための臨床研究の実施
「重症薬疹に対するステロイドパルス療法の有用性に関する多施設共同臨床研究」、ステロイドパルス療法およびベタメタゾン点眼の眼後遺症への効果の検討、SJS/TENに対する新規治療法の臨床試験、薬疹の原因薬同定のためのex vivo同定法としての好塩基球活性化試験(BAT)の有用性評価、重症薬疹の危険因子やバイオマーカーの探索のための臨床研究を実施する。
DIHSの診療ガイドラインの作成
DIHSの重症度分類を作成する。DIHS早期診断に有用な臨床マーカーを見出し、診断精度を高める。ステロイド療法の有効性に関する情報集積を行う。
結果と考察
 重症多形滲出性紅斑の診療拠点病院として32施設を追加認定した。今後はさらに認定施設を拡大し、国内の診療レベルの向上を図るとともに、本政策班と連携して情報収集を担う活動を継続予定である。サルファ剤による重症薬疹の発症リスクとしてHLA-A*11:01を同定した。今後は、この遺伝要因を発症予防に応用して行く予定である。SJS/TENの実態把握のために、全国疫学調査を行った。本研究班で2008年に実施した全国調査の情報と比較して、治療法では、ステロイド大量療法と高用量免疫グロブリン静注療法や血漿交換療法の組合せが多くみられ、この2療法が保険適用され、診療ガイドラインが普及したことを反映している。TENの眼後遺症が減少したことは、発症早期にステロイド大量療法を推奨する診療ガイドラインの普及によるものと思われた。死亡率はSJSが4.1%、TENが29.9%であった。これは前回の調査のSJS 3.1%、TEN 19%を上回ったが、TEN患者の平均年齢の上昇と悪性腫瘍の罹患率の上昇によるものと推定される。SCORTENに準じた死亡数/予測死亡数の解析では、ステロイド大量療法、ステロイドパルス療法が死亡数を減少させる治療法であった。「重症薬疹に対するステロイドパルス療法の有用性に関する多施設共同臨床研究」を実施し、台湾の登録を合わせて11例となった。DIHSについては、重症度分類作成の基礎資料とするため、86例のDIHS症例を収集し、単変量ロジスティック回帰分析を行なった。これらを踏まえて重症化予測スコアリングツール案を作成したので、今後検証してゆく必要がある。また、血清TARC値の迅速測定の先進医療の結果、カットオフ値4,000pg/mlとした場合の感度100%、特異度85%であり、目標設定基準を達成した。DIHS症例で早期にステロイド療法を開始するとヒトヘルペスウイルス-6の再活性化は抑制されるが、サイトメガロウイルスの再活性化が増加することが示された。
結論
32医療施設を重症薬疹診療拠点病院として新たに認定した。
サルファ剤による薬疹のリスク遺伝子はHLA-A*11:01である。
SJS/TENの全国疫学調査により治療法や予後の変化が明らかになり、診療ガイドラインの普及が示された。
「重症薬疹に対するステロイドパルス療法の有用性に関する多施設共同臨床研究」を開始し、11例を登録評価した。
眼症状の予後の解析では、中等症症例が、経過とともに視力低下が大きくなることが示された。SJS 78例のうち15例、TEN 54例のうち10例がDILIgrade1-4を満たす肝障害を合併していた。薬剤リンパ球刺激試験と薬剤によるBATの組み合わせの陰性的中率は97.2%であり、薬剤の原因薬の同定に有用である。重症薬疹のバイオマーカーとしてGalectin-7及びRIP-3を特定した。
DIHS重症度分類作成のための重症化スコアリングツール案を作成した。早期診断の補助となる血清TARC値の迅速測定を先進医療として実施し、その有用性を確認した。

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
2021-11-29

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201911021B
報告書区分
総合
研究課題名
重症多形滲出性紅斑に関する調査研究
課題番号
H29-難治等(難)-一般-028
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
森田 栄伸(国立大学法人島根大学 医学部皮膚科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 相原 道子(横浜市立大学 大学院医学研究科)
  • 末木 博彦(昭和大学 医学部)
  • 浅田 秀夫(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部)
  • 阿部 理一郎(国立大学法人新潟大学 医歯学系)
  • 橋爪 秀夫(磐田市立総合病院 第2医療部)
  • 外園 千恵(京都府立医科 大学 大学院医学研究科)
  • 黒沢 美智子(順天堂大学 医学部)
  • 莚田 泰誠(国立研究開発法人理化学研究所 生命医科学研究センター)
  • 椛島 健治(京都大学 大学院医学系研究科)
  • 大山 学(杏林大学 医学部)
  • 高橋 勇人(座應義塾大学  医学部)
  • 藤山 幹子(国立病院機構四国がんセンター 統括診療部第一病棟部)
  • 新原 寛之(国立大学法人島根大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
重症多形滲出性紅斑であるSJS/ TEN及びDIHSを対象として診療ガイドラインを策定し、その普及とともに診療ガイドラインのエビデンスに基づく改訂を行い、これらの疾患の医療の向上と均てん化を目的とする。
研究方法
SJS/TENの診療拠点病院の整備
認定の基準は、SJS/TENの診療ガイドライン2016の解説を行う講習会に参加、病院内診療科の連携体制について確認を行う。
SJS/TEN診療情報・研究成果の公表
本研究班のホームページを開設し、診療ガイドライン2016の内容、臨床研究の進展状況、SJS/TEN診療拠点病院情報などを公開する。SJS/TEN発症の遺伝的背景の検討
SJS/TEN発症に関与する遺伝的要因を解明する。
SJS/TENの疫学調査の実施
全国疫学調査を実施する。
SJS/TEN治療法向上のための臨床研究の実施
治療法に関する臨床研究、診断に有用な検査法、バイオマーカーの検索を実施する。 
DIHSの診療ガイドラインの作成
 DIHSの症例集積を行い、予後に関与する因子を抽出し、その結果を基にDIHSの重症度分類を作成する。早期診断に有用な臨床マーカーを見出し、診断精度を高める。
治療の有効性に関する情報集積を行う。
分子標的薬や生物学的製剤にみられる皮膚障害の実態調査
 分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬による皮膚障害の症例集積調査を行い、その実態を把握する。
結果と考察
3年間に重症多形滲出性紅斑の診療拠点病院として92施設を認定した。今後はさらに認定施設を拡大し、本政策班と連携して情報収集を担う。
カルバマゼピンによる発症リスク遺伝子HLA-A*31:01、アロプリノールによる発症のリスク遺伝子HLA-B*58:01、糖尿病治療薬DPP-4による発症リスク遺伝子HLA-DQB1*03:01、抗てんかん薬フェニトイン誘発薬疹の発症リスク遺伝子CYP2C9*3およびHLA-B*51:01、サルファ剤による重症薬疹の発症リスク遺伝子HLA-A*11:01を特定した。これらの遺伝要因を発症予防に応用して行く。
全国疫学調査により、ステロイド大量療法と高用量免疫グロブリン静注療法や血漿交換療法の組合せが保険適用に伴い増加した。TENの眼後遺症が減少した。ことは、発症早期にステロイド大量療法を推奨する診療ガイドラインの普及によるものと思われた。TENの死亡率が増加したが、TEN患者の平均年齢と悪性腫瘍の罹患率の上昇によると推定した。SCORTENに準じた死亡数/予測死亡数の解析では、ステロイド大量療法、ステロイドパルス療法が死亡数を減少させる治療法であった。
 SJS/TENの治療に関して、「重症薬疹に対するステロイドパルス療法の有用性に関する多施設共同臨床研究」を実施し、11例を登録した。眼症状の予後の解析では、初診時に結膜侵入、血管侵入のスコアが1あるいは2点の症例が、経過とともに視力低下が大きくなることが示された。
SJS/TENでは約20%にDILIgrade1-4を満たす肝障害を合併していた。
 薬剤リンパ球刺激試験に薬剤によるBATを加えた評価の陰性的中率は97.2%であり、薬剤の原因薬の同定に有用である可能性が示された。
重症薬疹のバイオマーカーとしてGalectin-7及びRIP-3を特定した。
 メラニン・紅斑メグザメーターMX18が重症多形滲出性紅斑の早期の診断に応用できる可能性が示された。
DIHS症例を収集し、死亡リスク因子を単変量ロジスティック回帰分析を行い、重症化予測スコアリングツール案を作成した。血清TARC値の迅速測定は、カットオフ値4,000pg/mlの感度100%、特異度85%であり、目標設定基準を達成した。
DIHS症例で早期にステロイド療法を開始するとヒトヘルペスウイルス-6の再活性化は抑制されるが、サイトメガロウイルスの再活性化が増加することが示された。分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬の皮膚障害の症例集積を行い、皮膚障害の実態を把握した。
結論
92医療施設を重症薬疹診療拠点病院として認定した。
カルバマゼピン、アロプリノール、フェニトイン、サルファ剤による発症リスク遺伝子を明らかにした。
全国疫学調査を行い、10年前の全国疫学調査結果を比較した結果、診療ガイドラインの普及が示された。
治療法、検査法、診断法の向上に関する臨床研究を実施した。
DIHSの重症化予測スコアリングツール案を作成した。血清TARC値の迅速測定の早期診断における有用性を確認した。ステロイド療法は内在性ヘルペスウイルスの再活性化に関与すること、DIHSの診断基準は満たさないが、DRESSスコアでprobableあるいはdefiniteと診断される症例が見られることが明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201911021C

収支報告書

文献番号
201911021Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
17,500,000円
(2)補助金確定額
17,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 5,604,261円
人件費・謝金 2,031,472円
旅費 2,315,269円
その他 3,513,523円
間接経費 4,038,000円
合計 17,502,525円

備考

備考
自己資金:2,525円

公開日・更新日

公開日
2021-06-14
更新日
-