文献情報
文献番号
201911018A
報告書区分
総括
研究課題名
先天異常症候群領域の指定難病等のQOLの向上を目指す包括的研究
課題番号
H29-難治等(難)-一般-025
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
小崎 健次郎(慶應義塾大学 医学部 臨床遺伝学センター)
研究分担者(所属機関)
- 松原 洋一(国立研究開発法人国立成育医療研究センター・研究所)
- 森崎 裕子(公益財団法人日本心臓血圧研究振興会附属榊原記念病院・臨床遺伝科)
- 増井 徹(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター・メディカルゲノムセンター)
- 仁科 幸子(国立研究開発法人国立成育医療研究センター・感覚器・形態外科部眼科 視覚科学研究室)
- 松永 達雄(独立行政法人国立病院機構東京医療センター・臨床研究センター・聴覚・平衡覚研究部)
- 小崎 里華(国立研究開発法人国立成育医療研究センター・生体防御系内科部遺伝診療科)
- 青木 洋子(国立大学法人東北大学・大学院医学系研究科)
- 森山 啓司(国立大学法人東京医科歯科大学・大学院医歯学総合研究科)
- 黒澤 健司(地方独立行政法人神奈川県立病院機構 神奈川県立こども医療センター・遺伝科)
- 大橋 博文(埼玉県立小児医療センター・遺伝科)
- 古庄 知己(国立大学法人信州大学・医学部遺伝医学教室)
- 緒方 勤(国立大学法人浜松医科大学・小児科)
- 齋藤 伸治(公立大学法人名古屋市立大学・大学院医学研究科)
- 水野 誠司(愛知県医療療育総合センター発達障害研究所・遺伝子医療研究部)
- 岡本 伸彦(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪母子医療センター(研究所)・遺伝診療科)
- 松浦 伸也(国立大学法人広島大学・原爆放射線医科学研究所)
- 副島 英伸(国立大学法人佐賀大学・医学部)
- 吉浦 孝一郎(国立大学法人長崎大学・原爆後障害医療研究所)
- 沼部 博直(東京医科大学・遺伝子診療センター)
- 樋野村 亜希子(国立大学法人滋賀医科大学 ・倫理審査室)
- 難波 栄二(国立大学法人鳥取大学・研究推進機構)
- 渡邉 淳(国立大学法人金沢大学・附属病院)
- 加藤 光広(昭和大学・医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
19,230,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は先天異常症候群領域の指定難病および類縁疾患の医療水準の向上・患者のQOLの向上に貢献することである。(1)「疾患特異的成長手帳」の普及・啓発(2)対象の53疾患について診断基準・重症度分類・全身管理のチェックポイントの再評価(3)対象の53疾患のうちの非典型症例に対して遺伝子検査による診断を活用して疾患概念の拡張や臨床診断基準の修正(4)新たに指定すべき疾患について評価・検討。臨床ゲノム情報統合データベース事業等国のゲノム関連事業と連携。
研究方法
(1)診断基準と重症度分類:指定難病データベースと連携し、体系的な情報収集。国際プロジェクトの日本代表としての活動も行い、その成果を診断基準に反映。(2)成人期特有の合併症についての情報収集:小児期に診断された成人患者の現状把握。(3)非典型症例:診断基準を満たさない患者に対しての遺伝子診断を継続して行い、臨床診断基準の修正に反映。(4)早期診断体制:診断困難な症例について研究班内での情報共有を図った。臨床ゲノム情報統合データベース事業との連携も行い、早期診断体制を形作った。⑤定量的症例間比較の検討:各疾患の主要症状をHPOを用いて集積⑥疾患特異的成育手帳:フィードバックを収集。
結果と考察
(1)診断基準と重症度分類:対象の53疾患について、現行の診断基準の妥当性を検証し、未知の合併症について情報収集を進めた。成人患者の現状把握と成人期特有の合併症についても情報収集を行った。類型化し、データベース化するための準備を進めた。軽症例の患者数等の実態・重症者との比率を明らかにするため、軽症例並びに非典型例についても情報を集積した。非典型例については遺伝子診断を適切に利用した。非典型的な症状を呈する患者の中で遺伝子診断により確定された患者の比率についても情報を集めた。(2)成人期特有の合併症についての情報収集:指定難病データベースと連携し、成長発達・合併症にかかわる臨床情報を体系的に収集するよう心がけた。既に遺伝子診断が行われ診断が確定した例については、臨床ゲノム情報統合データベースの病的バリアントデータベース等に提供した。国際プロジェクトの日本代表として活動し、その成果を診断基準等に反映させた。国際基準の日本語訳も進めた。(3)非典型症例:非典型的な症例について遺伝子診断を行った。集まった患者の情報から疾患概念の拡張、臨床診断基準の拡張と修正を行い、その感度・特異度の向上を図った。非典型例で遺伝子変異を認めない場合には、AMED「未診断疾患イニシアチブ」と連携し、網羅的な遺伝子診断による疾患原因の究明を行った、(4)早期診断体制:診断困難症例について、研究班内で情報共有を図った。軽症例や非典型症例については遺伝子診断を利用した。遺伝子診断については適宜、臨床ゲノム情報統合データベース事業と連携し、早期診断体制を形作った。変異陽性例の症状幅を明らかにし、これに基づいて診断基準を修正した。(5) 定量的症例間比較の検討:対象の53疾患の患者の診療において患者の症状をHPOで表現し、これを疾患ごとに集積した。先天異常症候群領域の疾患群について、各疾患の症状をHPOの形式を用いて表現型の蓄積を行なった。全ての分担研究者とともに、先天異常症候群領域の疾患について、HPOを用いて表現型を収集した。非典型的な症例については遺伝子検査を行い、遺伝学的に診断がついた患者について同様にHPOによる臨床情報を収集した。データベース構築に向けて集めた情報を類型化した。(6)疾患特異的成長手帳:集積した合併症データをエビデンスとして、検討を進めた。担当医・患者・家族からのフィードバックを集積した。
当研究班が診断基準を策定した13先天異常症候群の遺伝学的検査が2020年度診療報酬改定において対象疾患となった。本研究班が遺伝子変異陽性の非典型例についての検討した結果をもとに要望した疾患群である。
先天異常症候群の多くは、染色体細欠失により発症する。その診断にはマイクロアレイ染色体検査が必須である。本研究班は「診療において実施するマイクロアレイ染色体検査ガイダンス」を発出した。このガイダンスはマイクロアレイ染色体検査キットの薬事申請に使用された。
当研究班が診断基準を策定した13先天異常症候群の遺伝学的検査が2020年度診療報酬改定において対象疾患となった。本研究班が遺伝子変異陽性の非典型例についての検討した結果をもとに要望した疾患群である。
先天異常症候群の多くは、染色体細欠失により発症する。その診断にはマイクロアレイ染色体検査が必須である。本研究班は「診療において実施するマイクロアレイ染色体検査ガイダンス」を発出した。このガイダンスはマイクロアレイ染色体検査キットの薬事申請に使用された。
結論
対象となる53疾患について診断基準・重症度分類の見直しを開始した。小児患者のみでなく成人患者についても情報収集を行い、年齢特異的な合併症を収集することができた。次年度以降、この情報を元に見直し案について検討していく。また、診断困難例・非典型例については遺伝子解析を補助診断として利用した。症状の幅が広い可能性が示された。
公開日・更新日
公開日
2021-05-27
更新日
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