口腔の健康と全身の健康の関連の文献レビューと因果推論手法の提案

文献情報

文献番号
201909034A
報告書区分
総括
研究課題名
口腔の健康と全身の健康の関連の文献レビューと因果推論手法の提案
課題番号
19FA1018
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
相田 潤(東北大学 大学院歯学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 竹内 研時(名古屋大学 医学系研究科)
  • 大野 幸子(東京大学 大学院医学系研究科)
  • 山田 聡(東北大学 大学院歯学研究科 )
  • 小坂 健(東北大学 大学院歯学研究科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
4,304,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
口腔の健康と全身の健康の関連が数多く報告されている。しかしながら、歯科疾患の特性や研究の倫理上の制約などから、エビデンスのレベルは様々である。口腔と全身の健康の間の因果関係を確認するために、どのような研究が必要なのか明らかにする必要がある。そこで本研究では、今後必要な研究を明らかにするために、関連が指摘される主要な4つの疾患(認知症、呼吸器疾患、循環器疾患、糖尿病)について文献レビューを行った。さらに、近年利用できるようになり注目されるレセプトなどの大規模診療データベースを活用した研究のレビューも行った。
研究方法
口腔の健康との関連が指摘される認知症、呼吸器疾患、循環器疾患、糖尿病の各疾患について、文献検索を行い、重要なシステマティックレビューを検索した。さらに、そのレビューの最終検索日以降の文献について、システマティックレビューを行った。また、レセプトなどの大規模診療データベースを活用して、口腔の健康と全身の健康について検討した研究のシステマティックレビューも行った。
結果と考察
認知症に関しては、検索された31本の論文の内、3本が認知症の発症から口腔の健康の悪化への経路を検証しおり、口腔の健康の悪化から認知症の発症の経路を検証した論文は28本であった。いずれの文献でも口腔の健康と認知症の間に有意な関連が認められた。呼吸器疾患に関しては、1)う蝕は誤嚥性肺炎のリスク因子である可能性、2) 歯周炎と喘息やCOPD、肺炎との中等度から強度の関連、3) 歯の喪失は肺がんリスクの上昇と関連、4) 嚥下障害は高齢者の誤嚥性肺炎のリスク因子である可能性、5) 専門家による口腔ケアが施設入所高齢者の肺炎関連死亡に対し予防的な役割を果たす可能性、が示された。循環器疾患については、最新のシステマティックレビュー以降の3件のコホート研究において、歯周病の治療群のCVDアウトカム発生のリスクは対照群に比べ低いことが示されていた。糖尿病については、最新のシステマティックレビュー以降の10本の無作為化試験から、歯周病治療後3か月程度の短期的には血糖コントロールが改善するが、6か月以上の追跡を行っている研究ではその効果は不明瞭であった。これらの文献の内、観察研究では、未測定の交絡因子によるバイアスが危惧されるものも多かった。こうしたバイアスを軽減しうる研究として、大規模診療データベースのレビューからは、時間非依存性の未測定の交絡に対し統計的な対処を試みた研究としてcase-crossover studyあるいはself-controlled case seriesを用いた論文が3本存在した。
結論
今後、口腔の健康と全身の健康の関係をより確かに評価していくためには、操作変数法を用いた疑似的な無作為化比較試験、因果媒介分析といった因果推論手法、時間非依存性の未測定の交絡に対処する固定効果分析やcase-crossover studyあるいはself-controlled case seriesなどを活用した研究が求められる。

公開日・更新日

公開日
2020-10-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-10-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201909034C

収支報告書

文献番号
201909034Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,940,000円
(2)補助金確定額
4,940,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 906,617円
人件費・謝金 2,462,803円
旅費 904,880円
その他 29,700円
間接経費 636,000円
合計 4,940,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2022-07-13
更新日
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