エビデンスに基づいたロコモティブシンドロームの対策における簡便な確認・介入方法の確立と普及啓発体制の構築に資する研究

文献情報

文献番号
201909033A
報告書区分
総括
研究課題名
エビデンスに基づいたロコモティブシンドロームの対策における簡便な確認・介入方法の確立と普及啓発体制の構築に資する研究
課題番号
19FA1017
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
帖佐 悦男(宮崎大学 医学部 感覚運動医学講座 整形外科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 中村 耕三(国立障害者リハビリテーションセンター)
  • 藤野 圭司(藤野整形外科医院)
  • 石橋 英明(医療法人愛友会 伊奈病院 整形外科)
  • 村永 信吾(医療法人鉄蕉会亀田総合病院 リハビリテーション事業管理部)
  • 新開 省二(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
  • 吉村 典子(東京大学 医学部附属病院 22世紀医療センターロコモ予防学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
4,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
健康寿命の延伸は日本が抱える大きな課題の1つであるが、その課題解決には運動器の健康を欠かすことはできない。このロコモ予防事業は各地で実施されているものの、全国におけるロコモの認知度やその取り組みに地域格差があるなどの課題がある。そこで、関連学会で推奨されているロコモの診断方法や介入方法を基本としたより簡便な方法を確立し、自治体の普及啓発体制に適合したロコモ対策のモデルを提示し、ロコモの早期発見の可能性がある部位や症状についても特定に努める。そのモデルを新しい地域で実践・評価することで、全国で実施可能なモデルを証明し、国民の健康寿命延伸に貢献する。尚、事業の実施には関連学会・団体などの研究協力者と連携が重要であるため、関係の強化を図ることとする。
研究方法
疫学研究ではまず、ロコモ・フレイル・サルコペニア、この3者の関係性を整理した。まずフレイルの概念について、本研究ではフレイルを生活機能モデルでとらえる立場をとった。次にフレイルを生活機能モデルで定義、草津町横断研究結果を用いて3者の関係性を整理した。吉村はロコモの疫学指標を推定し、ロコモがフレイルやサルコペニアなど他の要介護に影響する要因との関連を解明するため、大規模住民コホート研究を行った。最初は会場型の検診を実施し、その後会場に来られなかった対象者には郵送による問診票調査を実施した。また、運動機能が低下している介護老人保健施設のデイケアに通所している地域高齢者を対象に実施した歩行補助具の必要性を評価する指標の開発を目的に横断研究を実施した。
 介入研究は宮崎・埼玉および通所リハを利用の要介護・要支援高齢者を対象に地域や自治体で実施可能な介入方法の検討を各研究者のフィールドで3か月間(12週間)で実施した。
 宮崎では、60歳以上の地域住民で基本チェックリストの運動器関係(5項目)において3点以上に該当する者を対象に、食品+運動介入群、運動介入群、対照群に割り付け、0か月と3か月後に問診、体力測定およびロコモ関連指標の調査、健康関連QOL尺度、血液検査を評価項目とした。3か月間、参加者は日誌の記録と活動量計を携帯し、参加者の実施状況確認・継続を促す連絡(ロコモコール)は地域やグループの取りまとめ役に協力を得た。
埼玉では、地域在住高齢者を対象としてロコトレによる3か月間の運動介入プログラム「ロコモコール講習会」を2回行い、その効果を検証、解析した。
 通所リハを利用する要支援・要介護高齢者を対象にも12週間の介入期間を設けたランダム化比較対照試験を実施。基本属性、身体組成、フレイルの評価尺度を含む身体機能評価、ADL評価、QOL、栄養状態などを評価項目とする。
結果と考察
ロコモ・フレイル・サルコペニアの関係性を整理した結果、フレイルが生じる時期やその背景の要因の違いが判明した。今後は大規模コホート研究でと他地域において前年度に実施している同様の調査の結果のリンケージを実施しデータセットを完成させる。来年度はこのデータセットを用いてロコモの疫学指標を推定し、フレイルやサルコペニアなど、他の要介護に影響する要因との関連性を検討する。
 介護老人保健施設のデイケアに通所している地域高齢者を対象に実施した横断研究では、評価項目の結果から、「使用無し群」は「使用あり群」に比べ、有意に好成績であった評価項目がみられた。
 宮崎における介入研究では、有効解析対象者は209人であった。今後0か月と3か月後の変化値や、3か月分の活動量計・日誌の記録を取りまとめ、解析に進む。
 埼玉での介入研究に参加した者は33人で、3か月後の2回目評価に参加した者は28人。うちロコトレを週2回以上続けた者は5回椅子立ち上がり、通常歩行速度、最大歩行速度は有意に向上し、さらには運動習慣も増加傾向となっていた。
 また、通所リハを利用中の要支援・要介護高齢者を対象としたランダム化比較対照試験においては、同意を取得次第研究開始する。
結論
ロコモ予防事業の効果をエビデンスレベルで証明し、全国における事業拡大を目指す本事業は、今後の健康寿命延伸の課題解決に貢献できるものである。また本事業の評価項目は、幅広い項目で構成されているため、ロコモ対策がその他の疾患に及ぼす影響を示せる可能性もでてきた。また、関連学会や自治体などの研究協力者との連携無しでは成り立たない本事業は、自治体等と一緒にその実施方法を検討しながら進めているが、普及や実践を重視した本計画によってその後の事業普及に大きく貢献できると思われる。
 尚、自治体などの研究協力者と共同で実施する本研究は、現在のCOVID-19感染拡大予防対策の実施に伴い、フィールドワークを見合わせざるを得ない状況ではあるが、今後の情勢を見極めながら事業実施を試みる予定である。

公開日・更新日

公開日
2020-10-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2020-10-23
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201909033Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,175,000円
(2)補助金確定額
5,175,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 481,311円
人件費・謝金 2,612,997円
旅費 386,666円
その他 1,019,026円
間接経費 675,000円
合計 5,175,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2021-02-24
更新日
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