骨粗鬆症の予防及び検診提供体制の整備のための研究:エビデンスに基づく持続可能で効果的な骨粗鬆症検診体制の構築

文献情報

文献番号
201909030A
報告書区分
総括
研究課題名
骨粗鬆症の予防及び検診提供体制の整備のための研究:エビデンスに基づく持続可能で効果的な骨粗鬆症検診体制の構築
課題番号
19FA1014
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
田中 栄(東京大学医学部附属病院 整形外科)
研究分担者(所属機関)
  • 曽根 照喜(川崎医科大学医学部附属病院)
  • 藤原 佐枝子(安田女子大学薬学部)
  • 萩野 浩(鳥取大学医学部)
  • 上西 一弘(女子栄養大学栄養生理学研究室)
  • 小川 純人(東京大学医学部附属病院)
  • 吉村 典子(東京大学医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
6,150,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
骨粗鬆症(OP)が多くの高齢者の生活の質(QOL)を低下させることによって、健康寿命を短縮し、さらに医療費の高騰、労働力の低下の一因となっていることは明らかである。従ってOP の予防は人生100 年時代に向かうわが国にとって、健康寿命の延伸を目指す上で極めて重要であり、科学的根拠に基づいた有効な予防方法の普及啓発及び早期発見に向けたOP 対策の実施が必要とされている。しかしOP やその前段階の骨量減少の段階では対象者はほとんど無症状であり医療機関に受診することは少ないため、OP の早期発見には地域住民を対象とした検診が必要となる。しかしながらOP 検診実施率は全国平均で5.0%と極めて低く、地域差も大きい。さらにOP 検診の手法や対象者の年齢、実施間隔も統一されておらず、それらの効果も明らかではない。これらの実情を踏まえ、本研究では、科学的根拠に基づいたOP の予防方法および検診手法について検討し、エビデンスに基づく持続可能で効果的な骨粗鬆症検診体制を構築し、今後のOP 対策の推進に資する成果を得ることを目的とした。
研究方法
研究代表者の田中の総括のもと、整形外科、老年病内科、リハビリテーション、核医学、栄養、疫学、公衆衛生の各専門家が参加し、OP 予防に関する文献の検証、検診実施率が高い自治体の訪問調査、一般住民を対象とするコホート研究の追跡調査を実施した。
結果と考察
 OP予防に関する文献の検証として、放射線診療の専門家である曽根らのグループは川崎医科大学の受診患者を対象にして、①OP以外の疾患の診断目的で撮影された脊椎X線CTを利用した既存椎体骨折のスクリーニング、②ステロイド性OPの管理と治療のガイドラインの遵守率の調査を行い、既存椎体骨折のスクリーニングやステロイド性骨粗鬆症のガイドライン遵守率の調査結果から、一定数の症例が適切なOP管理から漏れていることを確認した。
整形外科学の専門家である萩野らのグループはシステマティックレビューを実施し、運動介入の骨折関連事象(骨折、転倒、骨量減少)に対する効果と、検診および運動介入の経済的メリットについて検討したところ、地域在住高齢者および骨粗鬆症女性に対するバランストレーニングを中心とした運動介入は転倒予防、骨量減少予防ならびに医療費削減に有用である可能性が示唆された。
栄養学の専門家である上西らのグループは、栄養と骨の健康についてのシステマティックレビューを実施し、カルシウム摂取量と骨密度には相関がないという報告が多いこと、現時点では骨検診にカルシウム摂取量を加えることの積極的な利点は見いだせないことを明らかにした。老年病学の専門家である小川らのグループは、OP や骨量減少と予後(骨折、QOL 低下、要介護、死亡)との関連性、ならびに要介護の原因・背景疾患である認知症、脳血管疾患、フレイル・サルコペニアなどとの関連性について、文献検索を進めた.OP予防および検診の専門家である藤原は、検診実施率が高い都道府県および検診受診率が高い市区町村の中から、了承を得た自治体において訪問調査を実施した。その結果、OP検診率を高めるための各自治体の工夫と問題点を明らかにすることが出来た。
 OPの疫学研究の専門家である吉村らのグループは研究代表者の田中と協力して、2005年から和歌山県の2地域(山村、漁村)で実施しているOP検診のうち漁村地域住民コホート住民を対象として中高年男女の骨密度検診を実施し、1,175人(男性380人、女性795人、平均年齢62.8歳(標準偏差13.1歳))の参加を得た。
2019年度は、医療機関の実態調査によるOPの把握漏れの実態や、OP検診実施の自治体での聞き取り調査による問題点の把握など、効率的OP検診構築の上で重要な知見を得た。またエビデンスに基づく検診構築の上で重要なシステマティックレビューも実施中である。地域住民を対象とした13年目のOP追跡調査も完了した。これらの結果を総合して、最終報告では、科学的根拠に基づいたOP の予防方法および検診手法について検討し、エビデンスに基づく持続可能で効果的な骨粗鬆症検診体制の提案を行う予定である。
結論
医療機関の実態調査によるOPの把握漏れの実態や、OP検診実施の自治体での聞き取り調査による問題点の把握など、効率的OP検診構築の上で重要な知見を得た。運動、栄養、老年病との関連についてのステマティックレビューを進めた。13年目の地域住民を対象とした詳細なOP検診も完了し、今後これらをあわせて、エビデンスに基づく持続可能で効果的な骨粗鬆症検診体制の提案を行う予定である。

公開日・更新日

公開日
2021-02-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-02-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201909030Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,995,000円
(2)補助金確定額
7,995,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,519,657円
人件費・謝金 2,670,435円
旅費 398,530円
その他 1,563,095円
間接経費 1,845,000円
合計 7,996,717円

備考

備考
確定額を超えた分は自己資金にて補っています。(自己資金1,717円)

公開日・更新日

公開日
2021-02-09
更新日
-