産業別・地域別における生活習慣病予防の社会経済的な影響に関する実証研究

文献情報

文献番号
201909029A
報告書区分
総括
研究課題名
産業別・地域別における生活習慣病予防の社会経済的な影響に関する実証研究
課題番号
19FA1013
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
野口 晴子(学校法人早稲田大学 政治経済学術院)
研究分担者(所属機関)
  • 朝日 透(学校法人早稲田大学 理工学術院)
  • 阿波谷 敏英(国立大学法人 高知大学 教育研究部医療学系医学教育部門)
  • 川村 顕(公立大学法人  神奈川県立保健福祉大学 大学院ヘルスイノベーション研究科)
  • 玉置 健一郎(学校法人早稲田大学 政治経済学術院 )
  • 花岡 智恵(学校法人東洋大学 経済学部)
  • 富 蓉(フ ヨウ)(学校法人早稲田大学 商学学術院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
7,692,000円
研究者交替、所属機関変更
分担研究者である川村顕氏と富蓉氏のの所属・職位が下記の通り異動になったことを報告いたします。 川村顕氏は、2019年9月より、早稲田大学・政治経済学術院・准教授から、公立大学法人神奈川県立保健福祉大学・大学院ヘルスイノベーション研究科・教授へ異動 富蓉氏は、2020年4月より、早稲田大学・政治経済学術院・講師(任期付き)から、早稲田大学・商学学術院・専任講師へ異動

研究報告書(概要版)

研究目的
超高齢社会に突入した我が国にとって、生活習慣病発症あるいは重症化の抑制は、住民のQOL向上や医療費抑制の観点から喫緊の課題であり、そのためには予防対策が不可欠である。しかし、既存研究では、(1)生活習慣の違いの類型化と予防対策の効果との関係、(2)生活習慣病の重症度と労働生産性との関係、について十分に研究されてきたとは言えない。そこで本研究では、以下の4つを研究課題として設定する。(1)業種別・地域別の生活習慣病の実態について分類・整理し、重症度の算出を試みる;(2)健診受診や特定保健指導が生活習慣病の発症・重症化抑制に(どの程度)寄与するか業種別・地域別に統計的検証を行う;(3)生活習慣病が就労に(どの程度)影響するか業種別・地域別に統計的検証を行う; (4)生活習慣病の発症・重症度が就労状況に与える影響をシミュレーションにより推計する。
研究方法
第1に、本年度の研究では、2000-2020年の直近20年間に、国際的学術誌に掲載された英文による論文の中から、産業、職業、及び、地理的な要因に重点を置いて、生活習慣病と労働生産性の関連性に関する定量的・定性的な検証を行った先行研究70件の論文について、著者・公刊雑誌・公刊年・分析対象国・分析に用いられたデータ・就労と健康に関する変数・分析手法・結果について要約・整理を行った。
第2に、令和元年度に予定していた全国規模の個票情報の収集・整備について、2019年6月5日以降、厚生労働省・政策統括官(統計・情報政策担当)へ二次利用申請を行ったが、利用データの規模が膨大に及び、2020年には新型コロナウイルス拡大感染の影響もあり、上記のデータに対する承認には未だ至っておらず、2020年5月26日現在、全データは未入手の状況にある。したがって、本研究の前進プロジェクトである、2017-2018年度・厚労科研費「費用対効果分析の観点からの生活習慣病予防の労働生産性及びマクロ経済に対する効果に関する実証研究」(H29-循環器等-一般-002)に基づき二次利用が承認されたデータ(承認番号:厚生労働省発政統0424第3号;承認日2018年4月24日:※尚、当該データについては既に消去済み)から得られた知見から、当該プロジェクトの報告書に掲載されなかった記述統計量を報告する。
結果と考察
本研究における先行研究のレビューの結果、代表性の高いデータに洗練された計量経済学の手法を用いた分析が数多く存在するが、分析対象となった国や地域が、とりわけ欧州に偏っていることが分かった。また、生活習慣病の罹患に代表される「負」の健康ショックは、概して、就労状況にネガティブな影響を与える傾向にあるが、その影響の大きさや統計学的有意性は、性別・人種・年齢・教育水準・疾患の種類や重症度等の個人属性のみならず、職業類型や国・地域によって異なり、そのメカニズムの解明にはいまだ至っていない。
次に、『国民生活基礎調査』(2007-2016年)における20歳以上を分析対象として、産業別・職業類型別・地域別の生活習慣病の基本統計量を概観した結果、第1次産業における平均罹患率が、第2・3次産業よりも高い傾向にあることがわかった。他方、職業による疾患の違いにあまり大きな違いはなく、全職業を通じて、最も罹患率が高いのが高血圧症であった。地域別にみると、都市部における生活習慣病(糖尿・肥満・高脂血・高血圧)の罹患率は低く、地方で高い傾向がみられる。また、肥満に関しては西高東低;高脂血症については、日本海側で高く、太平洋側で低い;また、高血圧については、東北・四国・南九州で高い傾向が観察された。
結論
本研究のレビューでは、生活習慣病の罹患に代表される「負」の健康ショックは、概して、就労状況にネガティブな影響を与える傾向にあるが、その影響の大きさや統計学的有意性は、性別・人種・年齢・教育水準・疾患の種類や重症度等の個人属性のみならず、職業類型や国・地域によって異なることがわかった。したがって、日本や東アジアでの研究からは、特に欧州を中心とした分析とは、異なる結果が得られる可能性が高い。また、医療や介護施策は、生活習慣病の罹患確率に直接影響を及ぼす可能性が高く、ひいては、産業や職業類型の違い、そして、施策が異なる国や地域における両者の関連性の統計学的な有意性とその影響の大きさについては、さらに検証の余地が残されている。たとえば、本研究の前進プロジェクトに基づく知見からは、記述統計量で見る限り、日本国内においても、産業や地域によって生活習慣病の罹患状況が異なることがわかった。以上のことから、本研究プロジェクトに基づくデータが入手され次第、職業類型や地域による違いがどういったメカニズムに起因するのかに着目した分析を行うこととする。

公開日・更新日

公開日
2021-02-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-02-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201909029Z