「健康づくりのための睡眠指針2014」のブラッシュアップ・アップデートを目指した「睡眠の質」の評価及び向上手法確立のための研究

文献情報

文献番号
201909025A
報告書区分
総括
研究課題名
「健康づくりのための睡眠指針2014」のブラッシュアップ・アップデートを目指した「睡眠の質」の評価及び向上手法確立のための研究
課題番号
19FA1009
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
栗山 健一(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 睡眠・覚醒障害研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 兼板 佳孝(日本大学 医学部社会医学系 公衆衛生学分野)
  • 内山 真(日本大学 医学部精神医学系 精神医学分野)
  • 尾崎 章子(東北大学大学院 医学系研究科保健学専攻老年・在宅看護学分野)
  • 田中 克俊(北里大学大学院 医療系研究科 産業精神保健学)
  • 三島 和夫(秋田大学大学院 医学系研究科精神科学講座)
  • 角谷 寛(滋賀医科大学 睡眠行動医学講座)
  • 渡辺 範雄(京都大学大学院 医学研究科社会健康医学系専攻 健康増進・行動学分野)
  • 岡田 清夏(有竹 清夏)(埼玉県立大学 保健医療福祉学部健康開発学科 検査技術科学専攻)
  • 駒田 陽子(明治薬科大学 薬学部)
  • 岡島 義(東京家政大学 人文学部心理カウンセリング学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
6,923,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「睡眠の質」は睡眠時間と異なる、睡眠健康の一側面を表現する指標として考えられているが、その生理学的背景・意義は明らかになっていない。多忙な毎日を送る学生・社会人などの、長い睡眠時間を確保するのが物理的に難しい人々、また、不眠症などにより満足な睡眠が得られていない人々にとって、睡眠時間を補完しうる睡眠関連健康増進指標の開発・提案は福音となる。
研究方法
我々は、国民の健康増進に資する新たな「睡眠の質」指標の開発を目的とし、文献システマティックレビュー、既存研究データの再解析を行うとともに、これを適切に国民に普及・啓発するための方法の検討を進めた。平成31年度(令和元年度)は以下の調査・研究を実施した。(1)睡眠健康に関する市民公開講座・講演会の際に、従来の睡眠健康指標である睡眠時間と、「睡眠の質」に対する関心度および、睡眠医療の充実度に関するアンケート調査を行った。(2)睡眠時間を指標とした健康増進の限界点および、日本国民の睡眠習慣・環境が睡眠時間に及ぼす影響に関して文献レビューを実施した。(3)本邦で行われた睡眠時間および「睡眠の質」に関する指標と健康アウトカムに関する横断調査データの再解析により、「睡眠の質」の構成要素や関連因子、健康アウトカムへの影響を調査した。(4)米国睡眠関連コホート研究データベース(National Sleep Research Resources: NSRR)から、3つの縦断コホート研究を抽出し、これのデータから「睡眠の質」関連因子が健康アウトカムに及ぼす影響を再解析し、客観的「睡眠の質」指標と考えられる睡眠ポリグラフや行動量計で計測される睡眠生理指標が健康アウトカムに及ぼす影響も再解析した。
結果と考察
(1)市民公開講座・講演会におけるアンケート調査の結果、睡眠健康に関心を寄せる国民の多くが睡眠時間の確保よりも「睡眠の質」向上に期待をしていることが示唆され、現状の睡眠医療が不十分であると感じている実態が明らかとなった。(2)文献レビューの結果、睡眠時間は年齢や人種、経済状況、睡眠環境等の様々な背景要因に影響を受けるとともに、心理・精神医学的要因によっても影響を受け、また文化等によって睡眠時間の捉え方に差があることから、日本国民の睡眠習慣・環境下において、適切な睡眠時間を、その限界点を含めて調査する必要性が示唆された。(3)本邦で行われた睡眠時間および「睡眠の質」に関する指標と健康アウトカムに関する横断調査データの再解析により「睡眠の質」の主たる構成要素が休息感に基づくものであること、不眠等で生じうる睡眠困難感がこれに影響を及ぼす因子であり、「睡眠の質」向上が生活の質向上を伴うことで、うつ病等の健康アウトカムを改善する指標となる可能性が示唆された。(4)休息感に基づく「睡眠の質」指標は、心血管障害等の身体疾患発症リスクと関連していることが、NSRRのデータ再解析により示唆され、さらにレム睡眠関連指標等の睡眠ポリグラフで計測される睡眠生理指標も主観的「睡眠の質」指標とともに健康アウトカムに影響する可能性が示唆された。
令和2年度は、NSRRデータ等の解析をさらに深め、睡眠時間や「睡眠の質」に関わる因子で層別化を行い、健康アウトカムへの影響を検討することで、有用性の検討をさらに進めるとともに、国内既存データの再解析を同時遂行することで、NSRRで見いだされた睡眠時間および主観的・客観的「睡眠の質」指標の、日本国民における有用性担保の可能性を検討する。また、国際的には「睡眠の質」指標はピッツバーグ睡眠質問票得点で評価されていることから、これと健康アウトカムとの関連性に関する文献システマティックレビューを進め、休息感に基づく「睡眠の質」指標との整合性、および有用性比較を行う。
 上記成果を国民に還元するために、適切な普及・啓発方法の開発を並行して行っていく。他国の睡眠健康指標の啓発方法の調査、近接領域で使用されている方法による益害の評価を行い、新規「睡眠の質」指標の適切な普及・啓発方法が示されることで、国民の健康増進に真に貢献する睡眠健康指標の開発が達成される。
結論
国民の想定する「睡眠の質」指標は、休息感に基づく評価指標であり、健康増進に資する指標としても機能する可能性が示唆された。また、睡眠時間に関連した指標とは独立した指標である可能性も示唆されているが、双補的な関係であるか、どのような健康アウトカムに影響するかの詳細な検討はさらに詰める必要がある。本成果の価値を確立するためには、日本国民の健康増進に資するか精査し、適切な普及・啓発法を定め、さらに国際的なコンセンサスを得ることが必要とされる。

公開日・更新日

公開日
2020-09-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2020-09-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201909025Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,999,000円
(2)補助金確定額
8,998,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,043,952円
人件費・謝金 1,420,033円
旅費 1,323,134円
その他 1,134,972円
間接経費 2,076,000円
合計 8,998,091円

備考

備考
消費税等で端数が発生したため。(自己資金91円)

公開日・更新日

公開日
2021-02-09
更新日
-