地域における循環器疾患発症及び重症化予防に対する取組の推進のための研究

文献情報

文献番号
201909013A
報告書区分
総括
研究課題名
地域における循環器疾患発症及び重症化予防に対する取組の推進のための研究
課題番号
H30-循環器等-一般-005
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
宮本 恵宏(国立循環器病研究センター オープンイノベーションセンター)
研究分担者(所属機関)
  • 豊田 一則(国立循環器病研究センター 脳血管内科)
  • 泉 知里(国立循環器病研究センター 心臓血管内科)
  • 岡村 智教(慶応義塾大学 医学部)
  • 西 信雄(医薬基盤・健康・栄養研究所  国際栄養情報センター)
  • 由田 克士(大阪市立大学大学院  生活科学研究科 食・健康科学講座 公衆栄養学)
  • 山岸 良匡(筑波大学  医学医療系 社会健康医学)
  • 尾形 宗士郎(国立循環器病研究センター 予防医学・疫学情報部)
  • 小久保 喜弘(国立循環器病研究センター  予防健診部)
  • 中尾 葉子(国立循環器病研究センター  循環器病統合情報センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
7,616,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関移動   分担研究者 尾形宗士郎  藤田医科大学(平成30年9月1日~令和2年4月30日)→国立循環器病研究センター(令和2年5月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国では、高齢化に伴い脳卒中と心臓病による死亡数が増加し、65歳以上の高齢者では悪性新生物に肩を並べ、75歳以上の後期高齢者では上回っている。脳卒中と心臓病は介護の主たる原因の4分の1を占め、また総医療費の20%を費やしている。超高齢社会に向けた医療を考えるとき、脳卒中と心臓病対策は緊急に取り組まなければならない最も重要な課題である。本研究では、脳卒中と心臓病のリスク評価や保健指導に十分な実績のある研究者でチームを作り、循環器疾患のリスク・病態を最新のエビデンスやコホートデータを用いて評価し、科学的な知見に基づいて循環器疾患が重症化しやすい高い未受診者・ 受診中断者について、関係機関からの適切な受診勧奨を行うことによって治療に結びつけるとともに、循環器疾患で通院する患者のうち重症化するリスクの高い者に対して主治医の判断により保健指導対象者を選定し、心不全、脳卒中への移行を防止することを目的とするプログラムを作成する。
研究方法
(1)都市部一般住民を対象として、推定24時間尿中ナトリウム・カリウム比(24時間尿中Na/K)とBMIの組み合わせにおける高血圧の有病リスク、健常人の生活習慣や検査所見と血圧、心拍数、ダブルプロダクト(DP)との関連について検討した。
(2)健診受診者を対象として、NT-proBNP(pg/ml)を55未満、55-124、125-399、400以上の4群に分け、55未満を基準として性、年齢及び循環器発症リスクを算出した。
(3)日本における2012年から2017年の古典的循環器病リスク要因の変化が、冠動脈死亡にどの程度寄与したのかを概算した。
(4)シミュレーションモデルの開発のため、PubMedにおいて、循環器疾患に関する地域におけるシミュレーションモデルの有無について、心不全を中心に文献レビュー検索を行いシミュレーションの方法を検討した。
結果と考察
(1)男女ともBMIの高群は低群と比較してSBP、DBPともに有意に高く(p<0.05)、女性の24時間尿中Na/Kの高群でも低群と比較してSBPが有意に高かった(p=0.001)。低Na/K・低BMI群と比較した多変量調整オッズ比(P値)は、高Na/K・高BMI群の男性で2.65 (p=0.02)、女性で11.05 (p<0.001)、高Na/K・低BMI群の女性で1.57(p=0.02)と有意に高かった。高血圧の有病リスクは、BMIと24時間尿中Na/Kの両方が高い場合において最も高いことが示された。DPの上昇を抑制するためには、個々の背景を考慮し、収縮期血圧、心拍数双方に留意した生活習慣指導が必要と考えられた。既存の健診結果(尿中Na/K、DP)を活用した新しい保健指導の視点は、循環器疾患発症及び重症化予防に対する取組の推進につながる可能性が考えられる。
(2)ラクナ脳梗塞の多変量調整ハザード比は55-124の群で0.88(0.21-3.67)、125-399の群で1.64(0.34-7.82)、400以上の群で6.80(1.11-41.6)であった。心房細動有所見者を除外した場合も同様の結果であった。NT-proBNPの高値がラクナ脳梗塞の発症リスクと関連することが示された。
(3)2012年の冠動脈死亡率に基づいた2017年の期待冠動脈死亡数は35,753人であった。収縮期血圧平均値減少、喫煙割合減少、運動習慣無し割合減少により、冠動脈死亡数の減少はそれぞれ266、427、108と推定された。一方で、総コレステロール平均値上昇、BMI平均値上昇、糖尿病割合上昇により、それぞれ1363、86、455の冠動脈死亡数の増加が推定された。血圧平均値減少、喫煙割合減少、運動習慣無し割合減少により冠動脈死亡が減少していたことが推定された。一方、総コレステロール平均値上昇、BMI平均値上昇、糖尿病割合上昇により冠動脈死亡が増加していたことが推定された。
(4)循環器疾患発症の疫学的な予測モデルは欧米を中心として数多く発表されており、システマティックレビュー(Echouffo-Tcheugui JB, et al,2015)も行われている。しかし、今回の検索では心不全に特化したシミュレーションモデルは得られなかった。そこでモデルをシステム・ダイナミクスで作成するとしてVensimを用いてモデルを作成した。
結論
心不全と脳卒中の発症と重症化リスクを軽減させるスクリーニング項目と判定基準を提示し、その介入プログラムを作成することは、社会の重要な役割を担うこととなる高齢者の健康寿命延長および早期介入による循環器疾患の予防により、保健事業を運営する保険者および事業主・自治体などの予算(財政)の最適化に資すると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2020-08-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-08-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201909013Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,900,000円
(2)補助金確定額
9,584,000円
差引額 [(1)-(2)]
316,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,477,331円
人件費・謝金 4,390,682円
旅費 1,064,526円
その他 368,117円
間接経費 2,284,000円
合計 9,584,656円

備考

備考
予定していた出張が無くなり、旅費が執行されなかったため。

公開日・更新日

公開日
2022-07-13
更新日
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