文献情報
文献番号
201909012A
報告書区分
総括
研究課題名
社会経済格差による生活習慣課題への対応方策立案に向けた社会福祉・疫学的研究
課題番号
H30-循環器等-一般-004
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
近藤 克則(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 老年学評価研究部)
研究分担者(所属機関)
- 斉藤 雅茂(日本福祉大学 社会福祉学部)
- 村田 千代栄(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 老年学・社会科学研究センター 老年社会科学研究部)
- 佐々木 一郎(同志社大学 商学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
11,530,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
社会経済的に不利な集団など生活背景の違いに着目し、A.食生活、運動、歯・口腔などの生活習慣や社会参加などの状況との関連要因を解明し、B.健康格差を「見える化」し、C.介入策を検討することを目的とした。
研究方法
壮年と高齢者の二つのデータを用い分析を進め、InstantAtlasを用いた「見える化」をし、神戸市職員も交えた研究班会議で介入策を検討した。
結果と考察
A.関連要因の解明 1)壮年データ分析では、行政区間で歯科口腔保健状態に差があり(研究協力者:山本・朱)、食生活や運動習慣、喫煙などの生活習慣や健診受診などの健康行動はサードプレイスがある者で良い傾向があり、スポーツクラブ参加者において健康指標が良好であった(研究協力者:山口・渡邉)。関連要因には、教育歴、所得、就職氷河期世代の女性において就業の有無による違いがうかがえ(佐々木、研究協力者:朱)、行動変容ステージ、サードプレイスとの関連が見られた(斉藤、村田、研究協力者:相田)。2)高齢者データ分析では、入れ歯の手入れをしないことが肺炎のリスク(Kusama)、メタボリック症候群とBMIとの組み合わせ(Yokomichi)や膝痛(Yamada)が認知症リスク、その膝痛は歩きやすさ(Okabe)と、要介護認定も食料品へのアクセス(Momosaki)など建造環境が重要であること、社会参加している人で機能低下が少なく(Ide)、社会参加が増えた市町村でうつ割合が減ったこと(Watanabe)、小児期の貧困がスポーツの会参加を阻害しており(Yamakita)、教育歴が短いことが認知症リスクであること(Takasugi)などライフコースの重要性を明らかにした。また神戸市の予算を主な財源として高齢者調査2019を行った。B.「見える化」システムの開発 若年対象の「市民の健康とくらしの調査」と高齢者を対象とした「健康とくらしの調査」において関連が認められた、または先行研究から重要と思われる指標を作成して、行政区別、あんしんすこやかセンター圏域別の「見える化」システムを開発した。神戸市からの要望も受け、システムを改良し、健康指標が思わしくない区を明らかにした(研究協力者:辻)。C.介入策の検討 健康格差の縮小に向けた介入策としては、上述した建造環境やライフコースが重要と思われるが介入が難しい。そのため、壮年層に対して、神戸市が開発した健康アプリMy Condition Kobe(MCK)の利用促進を図り、行動変容を支援し、社会階層間、行政区間で登録者数の変化などプロセス評価をしていくこととした。高齢者については、数年前からの介入の(中間)アウトカム評価を進めている。
結論
社会経済的に不利な集団の食生活、運動、歯・口腔などの生活習慣や社会参加などの状況には、壮年でも高齢者でも多くの社会的な要因が関連していることが解明できた。健康格差を「見える化」し、介入策を検討し立案できた。
公開日・更新日
公開日
2021-02-09
更新日
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