市民によるAEDのさらなる使用促進とAED関連情報の取扱いについての研究

文献情報

文献番号
201909007A
報告書区分
総括
研究課題名
市民によるAEDのさらなる使用促進とAED関連情報の取扱いについての研究
課題番号
H29-循環器等-一般-009
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
坂本 哲也(帝京大学 医学部救急医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 丸川 征四郎(医誠会病院 名誉病院長)
  • 畑中 哲生(救急救命九州研修所 教授)
  • 石見 拓(京都大学 環境安全保健機構健康管理部門 教授)
  • 横田 裕行(日本医科大学大学院医学研究科 救急医学分野 教授)
  • 田邉 晴山(救急救命東京研修所 教授)
  • 森村 尚登(東京大学大学院医学系研究科 救急医学 教授)
  • 中原 慎二(神奈川県立保健福祉大学大学院 ヘルスイノベーション研究科 教授)
  • 太田 邦雄(金沢大学医薬保健研究域医学系 小児科学 准教授)
  • 西山 知佳(京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻臨床看護学講座クリティカルケア看護学分野 准教授)
  • 玉城 聡(帝京短期大学 専攻科臨床工学専攻 講師)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
3,807,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成16年の市民によるAED使用の認可以降、市中で利用可能なAED(PAD)設置が普及しつつあるが、その有効活用は十分ではなく、MC体制下での検証の状況も明らかではない。救急蘇生統計によると、市民により心停止の時点が目撃されてもAEDの使用に至らなかった事例が多く存在しており、市民によるAEDの積極的な活用を阻害する因子を明らかにして、適正配置や救命講習の内容の改善、適切な検証によりAEDの有効活用が推進されると考えられる。
そこで本研究では、基礎データとしてのAEDの普及状況に係わる調査、AED設置場所と使用状況に関する調査、市民によるAEDの積極的な活用を阻害する因子に関する調査、心停止発生通知システムの実地調査における検討、AEDの内部記録情報を含めた市民による使用事例の事後検証体制構築に関する検討、児童生徒の院外心停止の調査を実施した。
研究方法
AEDの普及状況に係わる調査では、製造販売業者の協力のもと当年度のAED販売台数(PAD・医療機関・消防機関別)、把握されている廃棄台数の取りまとめを継続し、合わせて耐用年数についても調査した。
院外心停止の発生とAED設置場所、使用状況に関する調査として、対象地区において実地調査を行い、設置場所の看板等での案内状況、発生時刻における使用可能状況等につき調査した。
市民によるAEDの積極的な活用を阻害する因子の調査では、救急現場(心停止現場に限定せず)に居合わせた市民が行った救命行動の実態とAEDの使用への障壁について質問紙調査を行い、救急現場の種別等について解析を進めた。
心停止発生通知システムの実地調査における検討では、モデル地域での実運用を通じて検討を進めており、登録救助者に対して救命行動を起こす際の行動促進・阻害要因につき質問紙調査を行った。
AEDの内部記録情報を含めた市民による使用事例の事後検証体制構築に関する検討では、検証の際の指標として、院外心停止の発生場所区分の記録から市民による自律的なAED実施状況について解析を進めた。
児童生徒の院外心停止の調査では、小児循環器修練施設を対象に症例登録を継続した。
結果と考察
AEDの普及状況に係わる調査では、2019年12月現在わが国の累計販売台数はおよそ117万台で、うちPADが83%を占めた。各年ごとの新規販売台数をみるとPADは10万台余で過去最高となった。ただし設置台数の把握には販売台数や廃棄台数、耐用期間を勘案しての推定が必要となる。AEDは薬事法上の高度管理医療機器及び特定保守管理医療機器であり、わが国全体でより正確に設置台数を把握できる体制構築が望まれる。
院外心停止発生とAED設置場所に関する実地調査では、看板等によるAEDの案内やAEDマップはAED準備率向上につながり有用であるものの、オフィス街・繁華街が過密となる地区においては高層建築物や地下街などの立体的な構造への対応が難しい状況が明らかとなった。
市民によるAEDの積極的な活用を阻害する因子の調査では、救急現場の種別でみると自宅でのAED探索~使用の割合が低く、使用されなかった理由として自分以外の救助者の不在やAED入手に要する時間などが多く挙げられた。複数の救助者の存在が重要となることから、集合住宅でのAED配置、講習における応援要請の強調、登録救助者への通知システム等が解決の方策として有用と考えられる。
心停止発生通知システムの実地調査における検討では、登録救助者に多く含まれる消防・医療関係者とその他市民では行動促進/阻害要因は異なる傾向がみられ、消防・医療関係者における心的障壁とは別の精神的負担(行動しなかった場合の不安・焦燥感)の存在が示唆された。
市民による自律的なAED実施状況についての解析では、自律的なAED実施が考えられる発生場所区分では目撃がある割合が高いもののAED装着の割合は低く、AED装着の増加も他の場所区分に比べて有意なものではなかった。病院前自己心拍再開と一か月後生存の割合は自律的な場所区分で高く、ここでのAED使用状況は今後の事後検証における重要な指標のひとつとなりうる。
学校管理下の心停止の発生状況の把握においては、平成27~30年に小中高校生心原性院外心停止119例が集積され、発生状況、場所、現場での対応など詳細な調査を進める予定である。
結論
以上より、市中のAED設置・稼動状況の正確な把握、配置状況の改善、AED使用の障壁要因を勘案した教育プログラムの改善、心停止発生通知システムの活用、児童生徒の院外心停止症例集積による傾向の把握、市民によるAED使用事例の事後検証での内部情報の活用環境を改善し市民の自律的な実施状況を指標に組み入れることで、AEDの有効活用を推進し、心原性院外心停止の転帰をより一層改善させることができるものと考える。

公開日・更新日

公開日
2022-10-18
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-10-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201909007B
報告書区分
総合
研究課題名
市民によるAEDのさらなる使用促進とAED関連情報の取扱いについての研究
課題番号
H29-循環器等-一般-009
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
坂本 哲也(帝京大学 医学部救急医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 丸川 征四郎(医誠会病院 名誉病院長)
  • 畑中 哲生(救急救命九州研修所 教授)
  • 石見 拓(京都大学 環境安全保健機構健康管理部門 教授)
  • 横田 裕行(日本医科大学大学院医学研究科 救急医学分野 教授)
  • 田邉 晴山(救急振興財団救急救命東京研修所 教授)
  • 森村 尚登(東京大学大学院医学系研究科 救急医学 教授)
  • 中原 慎二(神奈川県立保健福祉大学大学院 ヘルスイノベーション研究科 教授)
  • 太田 邦雄(金沢大学医薬保健研究域医学系 小児科学 准教授)
  • 西山 知佳(京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻臨床看護学講座クリティカルケア看護学分野 准教授)
  • 玉城 聡(帝京短期大学 専攻科臨床工学専攻 講師)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成16年の市民によるAED使用認可以降、市中で利用可能なAED(PAD)が増加してきたが、その有効活用は十分ではなく、MC体制下での検証の状況も明らかではない。救急蘇生統計によると、市民により心停止が目撃されてもAED使用に至らなかった事例が多く存在し、活用を阻害する因子を明らかにして、適正配置や講習の内容の改善、適切な検証によりAEDの有効活用が推進されると考えられる。
そこで本研究では、基礎資料としてのAEDの普及状況に係わる調査、AED設置場所と使用状況に関する調査、市民によるAEDの積極的な活用を阻害する因子に関する調査、心停止発生通知システムの検討、AEDの内部記録情報を含めた市民による使用事例の事後検証に関する検討、児童生徒の院外心停止の調査を実施した。
研究方法
AEDの普及状況については、製造販売業者の協力のもと各年度の販売台数(PAD・医療機関・消防機関別)、廃棄台数の取りまとめを継続し、合わせて耐用年数についても調査した。
設置場所と使用状況に関する調査では、対象地域の消防機関を通じて、公共場所(住宅等除く)での心停止でのAED準備や使用状況につき前向き調査を行った。また設置場所について、地域における院外心停止発生場所との分布の比較やAED準備割合との分析、実地調査での設置形態の検証等を行った。
積極的な活用を阻害する因子の調査では、救急現場(心停止現場に限定せず)に居合わせた市民が行った救命行動の実態とAED使用の障壁について質問紙調査を行い、解析を行った。
心停止発生通知システムの検討では、モデル地域での実運用において登録救助者の応募や、行動を起こす際の行動促進・阻害要因につき調査した。また登録時の講習における心肺蘇生の質の調査も行った。
事後検証体制構築に関する検討では、全国のMC協議会・消防機関に対するアンケートにてAED内部情報を利用した検証の状況について調査するとともに、検証の際の指標として、市民による自律的なAED実施状況について解析した。
児童生徒の院外心停止の調査では、小児循環器修練施設を対象に症例登録を継続した。
結果と考察
AEDの普及状況については、2019年までの累計販売台数はおよそ117万台で、うちPADが83%を占めた。新規販売台数のうちPADは10万台余であった。ただし設置台数については販売台数や廃棄台数、耐用期間からの推定しかできず、薬事法上の高度管理医療機器及び特定保守管理医療機器であるAEDについて、より正確に設置台数を把握できる体制が望まれる。
消防機関を通じた前向き調査では、市民救助者によるAED持参は16.5%、電気ショック適応症例は38.0%であった。またAED設置、院外心停止の発生とも各都市の繁華街において高い傾向があり、各行政区でのAED準備割合から課題の抽出も可能であった。実地調査からは、繁華街等で立体的な建物構造があると設置場所の把握が難しい場合があることが示唆された。
積極的な活用を阻害する因子の調査では、救命行動の実施については、心停止/心停止でない/心停止かどうかわからないという救急現場の状況により実施割合は異なり、AEDを使用できなかった理由としては、AED調達ができなかった(自分以外の救助者の不在)という回答が多かった。また自宅でのAED探索~使用が少なかった。複数の救助者の存在が重要となることから、集合住宅でのAED配置、講習における応援要請の強調等が解決の方策として有用と考えられる。
心停止発生通知システムの検討では、蘇生処置の実施成否、責任などが登録時の阻害要因であったが、消防・医療関係者では異なる精神的負担(行動しなかった場合の不安・焦燥感)もみられた。
事後検証に関する検討では、AED内部情報の解析を用いた検証実施は回答の25%と少なかった。標準的な推奨検証項目の策定と普及、個人情報保護や費用面も含めた医療機関、消防、製造販売業者等の業務フローの検討、共有が解決の方策であると考えられた。また市民が自律的なAED使用の実施をしていると考えられる場所区分ではAEDの使用割合が未だ少なく、今後の事後検証にて重要な指標になりうると考えられた。
児童生徒の院外心停止については、平成27~30年に小中高校生心原性院外心停止119例が集積され、詳細な調査を進める予定である。
結論
以上より、市中のAED設置・稼動状況の正確な把握、設置状況の改善、AED使用の障壁要因を勘案した教育プログラムの改善、心停止発生通知システムの活用、児童生徒の院外心停止症例集積による傾向の把握、市民によるAED使用事例の事後検証での内部情報の活用環境を改善し市民の自律的な実施状況を指標に組み入れることで、AEDの有効活用を推進し、心原性院外心停止の転帰をより一層改善させることができるものと考える。

公開日・更新日

公開日
2022-10-18
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2022-10-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201909007C

収支報告書

文献番号
201909007Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,949,000円
(2)補助金確定額
4,949,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 55,282円
人件費・謝金 1,594,979円
旅費 973,324円
その他 1,183,415円
間接経費 1,142,000円
合計 4,949,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2022-10-18
更新日
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