文献情報
文献番号
201908052A
報告書区分
総括
研究課題名
乳がん検診の適切な情報提供に関する研究
課題番号
H30-がん政策-指定-001
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
笠原 善郎(福井県済生会病院 乳腺外科)
研究分担者(所属機関)
- 鈴木 昭彦(東北医科薬科大学 乳腺内分泌外科 )
- 植松 孝悦(静岡がんセンター 乳腺画像診断科)
- 角田 博子(聖路加国際病院 放射線科)
- 高橋 宏和(国立がん研究センター 社会と健康センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
5,853,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
乳腺が多く脂肪が少ない高濃度乳房の人では、乳がんの検出感度が低い傾向にある。本研究では3年間で対策型乳がん検診における乳房の構成に関する適切な情報提供プロセスを構築することを目的とし、2年目の研究を施行した.
研究方法
初年度は、平成29年度厚生労働科学特別研究事業「乳がん検診における乳房の構成(高濃度乳房を含む)の適切な情報提供に資する研究」班にて作成された「「高濃度乳房についての質問・回答集」(以下QA集とする)を用い、福井市(受診者732名)において乳房構成の通知を試行した。今年度は規模を全県下に拡大し、8,311名を対象に通知を実施し実務上の課題を検討した。さらに、乳房構成の通知に関する他国における実態調査、乳房構成の判定のための評価基準の検討、乳房構成の我が国の実態調査のためのシステム構築、高濃度乳房における乳房超音波検査の意義の検討、ブレスト・アウェアネスの普及に関する検討を実施した。
結果と考察
初年度の方法に準じ通知を実施し、大きな混乱なく通知可能であったが、対面での説明・通知希望確認の煩雑さ、QA集を全員に配布する費用面などが今後の課題である。前年度の研究成果から、高濃度・非高濃度に二分して情報提供するのではなく、乳房構成の理解が重要であることが示唆されている。今後の通知のあり方については、米国や欧州の一事例をもって国全体の対策に反映するのではなく、海外の現状や本研究での通知の試行経験を参考に多角的な視点により慎重に議論を進める必要がある。乳房構成の判断基準はほぼコンセンサスが得られ今後アトラス作成の予定である。乳房構成の全国規模での把握は日本乳癌検診学会の全国集計項目に乳房構成が2020年度より盛り込まれる。ブレスト・アウェアネスへの取り組みは順次進んでいる。マンモグラフィに乳房超音波検査を付加する意義に関しては、高濃度・非高濃度乳房に限らず乳房超音波検査追加の効果が期待され、今後さらなる検討を継続する。
結論
今後の乳がん検診受診者への情報提供の在り方に関しては、高濃度・非高濃度に二分して述べるのではなく、高濃度乳房に関する課題をマンモグラフィの「偽陰性問題」としてとらえ、受診者に情報提供を行うことにより、受診者の理解が進むと考える。情報の内容にはブレスト・アウェアネスの概念を盛り込むべきであり、この概念の普及は高濃度乳房に対する対策のみならず、乳がん検診と並ぶもう一つの乳がん医療政策の柱として期待される。
公開日・更新日
公開日
2020-09-09
更新日
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