文献情報
文献番号
201908038A
報告書区分
総括
研究課題名
パートナーシップでつくるがん統計情報の国民への還元方法に関する研究
課題番号
19EA1003
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 ゆり(大阪医科大学 研究支援センター 医療統計室)
研究分担者(所属機関)
- 猿木 信裕(群馬県立がんセンター 医療局)
- 片山 佳代子(神奈川県立がんセンター 臨床研究所)
- 伊藤 秀美(愛知県がんセンター研究所 がん情報・対策研究分野)
- 片野田 耕太(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策情報センター)
- 松田 智大(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策情報センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
2,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究ではがん情報における社会のニーズを把握し、がん登録を中心としたビッグデータを各種活用し、正しくわかりやすい情報を発信することを目的とする。その際、患者・家族や臨床現場とがん統計やコミュニケーションの専門家がパートナーシップを構築し、研究を実施することが特徴である。
研究方法
1. 患者・家族、臨床医・相談支援員のニーズ把握
どのようながん情報が必要かについて、がん患者団体等に研究協力を依頼し、患者・家族のニーズ把握を行った。神奈川県がん臨床情報機構ではがん相談支援センターにおけるがん電話相談データを用いて、質的分析を行い、がん患者のアンメットニーズを探った。また、国内外の既存のがん情報に関するウェブサイトの構造を分析し、特定のがん種の統計情報にたどり着きやすさという観点で調査した。
2. がん登録+臨床情報データセットの作成・解析
令和元年度は最新の地域がん登録資料を用いて、がん患者の長期生存率およびサバイバー生存率を算出し、コンテンツ案に適用した。
3. わかりやすい情報コンテンツ作成
がんサバイバー生存率の既報告を用いたインフォグラフィクスの作成を行う。インフォグラフィクスは学術出版をわかりやすく情報提示する部門を備える株式会社カクタス(Editage)と各種がん患者団体の協力を得た。
4. 地域密着型情報発信(群馬・神奈川)
群馬県のがん情報発信サイトをたたき台として、地域でのがん情報のニーズを把握した。神奈川県のがん情報発信サイト構築においては、新規地域密着型がん情報発信サイトの案を患者支援団体と協働により検討した。
5. がん情報教育コンテンツ開発
がん情報のコンテンツのわかりにくさを補完するために、がん情報を見る人、作る人を対象としたがんリテラシー向上を目的とした教育コンテンツの作成を行った。
どのようながん情報が必要かについて、がん患者団体等に研究協力を依頼し、患者・家族のニーズ把握を行った。神奈川県がん臨床情報機構ではがん相談支援センターにおけるがん電話相談データを用いて、質的分析を行い、がん患者のアンメットニーズを探った。また、国内外の既存のがん情報に関するウェブサイトの構造を分析し、特定のがん種の統計情報にたどり着きやすさという観点で調査した。
2. がん登録+臨床情報データセットの作成・解析
令和元年度は最新の地域がん登録資料を用いて、がん患者の長期生存率およびサバイバー生存率を算出し、コンテンツ案に適用した。
3. わかりやすい情報コンテンツ作成
がんサバイバー生存率の既報告を用いたインフォグラフィクスの作成を行う。インフォグラフィクスは学術出版をわかりやすく情報提示する部門を備える株式会社カクタス(Editage)と各種がん患者団体の協力を得た。
4. 地域密着型情報発信(群馬・神奈川)
群馬県のがん情報発信サイトをたたき台として、地域でのがん情報のニーズを把握した。神奈川県のがん情報発信サイト構築においては、新規地域密着型がん情報発信サイトの案を患者支援団体と協働により検討した。
5. がん情報教育コンテンツ開発
がん情報のコンテンツのわかりにくさを補完するために、がん情報を見る人、作る人を対象としたがんリテラシー向上を目的とした教育コンテンツの作成を行った。
結果と考察
1. 患者・家族、臨床医・相談支援員のニーズ把握
がん電話相談の分析結果から判明したことは、男女ともにがんの確定診断のない者からの相談が全体の約2割もあることがわかった。これは、諸外国の先行研究にはなかった日本のがん相談の特徴であった。また、国内外のがんの統計情報のウェブサイトの構造を、がん種別の情報にたどり着きやすさという観点から調べた結果、一覧的視点と個別的視点に分けて提示することで、よりきめ細やかなニーズに対応できると考えられた。
2. がん登録+臨床情報データセットの作成・解析
全国がん罹患モニタリング集計の詳細集計用データの1995-2015年診断症例を2016年末までフォローアップされたデータ用いて、10年生存率及びその推移を算出し、コンテンツに活用する準備を行った。
3. わかりやすい情報コンテンツ作成
研究者とインフォグラフィクスの専門家とで作成した案をがん患者支援団体の会合時に提示し、感想を募った。得られた意見をもとに再度作成したインフォグラフィックスをWebにおいて公開した。その更新バージョンについても改善を行うべく、意見聴取をしたところ、図のみでの提示に限界があるため、動画表現をするのはどうかと提案があった。
4. 地域密着型情報発信(群馬・神奈川)
群馬県に特化したがん情報のサイトを公開した。部位別生存率、2次医療圏別地図情報として年齢調整罹患率、年齢調整死亡率、5年相対生存率(Period Analysis)、進行度割合、施設別生存率を掲載した。地図や表を活用し、医療圏ごとのきめ細かい情報発信を行った。
神奈川県では新規サイトを立ち上げる際に、2019年4月、神奈川県がん患者団体連合会(県がん連)、県がん対策疾病課(行政)、そしてがん疫学専門家(研究者)らによるJ-CIP神奈川制作委員会を発足した。各々の立場でどのようなコンテンツが必要か検討し、2020年2月に公開した。がん電話相談の分析より「がんの疑いのある方」への情報提供なども掲載されている。また、がん患者自身が自らの体験を情報発信するコンテンツもあり、当事者が制作に関わった。
5. がん情報教育コンテンツ開発
がん統計の指標や数値の解釈に必要な統計的基礎知識、解析方法について、統計値の視覚化ツールについて、がん対策におけるがん登録情報を活用についてを内容とするコンテンツの開発と動画のWEB公開を、日本がん登録協議会等の協力を得て実施した。
がん電話相談の分析結果から判明したことは、男女ともにがんの確定診断のない者からの相談が全体の約2割もあることがわかった。これは、諸外国の先行研究にはなかった日本のがん相談の特徴であった。また、国内外のがんの統計情報のウェブサイトの構造を、がん種別の情報にたどり着きやすさという観点から調べた結果、一覧的視点と個別的視点に分けて提示することで、よりきめ細やかなニーズに対応できると考えられた。
2. がん登録+臨床情報データセットの作成・解析
全国がん罹患モニタリング集計の詳細集計用データの1995-2015年診断症例を2016年末までフォローアップされたデータ用いて、10年生存率及びその推移を算出し、コンテンツに活用する準備を行った。
3. わかりやすい情報コンテンツ作成
研究者とインフォグラフィクスの専門家とで作成した案をがん患者支援団体の会合時に提示し、感想を募った。得られた意見をもとに再度作成したインフォグラフィックスをWebにおいて公開した。その更新バージョンについても改善を行うべく、意見聴取をしたところ、図のみでの提示に限界があるため、動画表現をするのはどうかと提案があった。
4. 地域密着型情報発信(群馬・神奈川)
群馬県に特化したがん情報のサイトを公開した。部位別生存率、2次医療圏別地図情報として年齢調整罹患率、年齢調整死亡率、5年相対生存率(Period Analysis)、進行度割合、施設別生存率を掲載した。地図や表を活用し、医療圏ごとのきめ細かい情報発信を行った。
神奈川県では新規サイトを立ち上げる際に、2019年4月、神奈川県がん患者団体連合会(県がん連)、県がん対策疾病課(行政)、そしてがん疫学専門家(研究者)らによるJ-CIP神奈川制作委員会を発足した。各々の立場でどのようなコンテンツが必要か検討し、2020年2月に公開した。がん電話相談の分析より「がんの疑いのある方」への情報提供なども掲載されている。また、がん患者自身が自らの体験を情報発信するコンテンツもあり、当事者が制作に関わった。
5. がん情報教育コンテンツ開発
がん統計の指標や数値の解釈に必要な統計的基礎知識、解析方法について、統計値の視覚化ツールについて、がん対策におけるがん登録情報を活用についてを内容とするコンテンツの開発と動画のWEB公開を、日本がん登録協議会等の協力を得て実施した。
結論
がん統計情報を正しくかつ分かりやすく情報発信するためには、研究者やコミュニケーション専門家だけでなく、がん患者や支援を行うもの、行政担当者、医療従事者などすべての関係者間で協働してコンテンツを開発していく必要がある。
公開日・更新日
公開日
2020-09-09
更新日
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