将来に亘って持続可能ながん情報提供と相談支援の体制の確立に関する研究

文献情報

文献番号
201908005A
報告書区分
総括
研究課題名
将来に亘って持続可能ながん情報提供と相談支援の体制の確立に関する研究
課題番号
H29-がん対策-一般-005
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
高山 智子(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策情報センター がん情報提供部)
研究分担者(所属機関)
  • 河野 浩二(公立大学法人福島県立医科大学医学部消化管外科学講座)
  • 近藤 俊輔(国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院 先端医療科 )
  • 中島 信久(琉球大学医学部付属病院 地域医療部 )
  • 田村 和夫(福岡大学医学部総合医学研究センター )
  • 奥村 晃子(公益財団法人 日本医療機能評価機構 EBM医療情報部 )
  • 若尾 文彦(国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策情報センター )
  • 西田 俊朗(国立研究開発法人 国立がん研究センター 中央病院 )
  • 中山 健夫(京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻健康情報学分野 )
  • 藤 也寸志(国立病院機構九州がんセンター )
  • 清水 奈緒美(神奈川県立がんセンター 看護局 )
  • 萩原 明人(国立循環器病研究センター予防医学・疫学情報部 )
  • 森田 智視(京都大学大学院医学研究科医学統計生物情報学 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
4,929,000円
研究者交替、所属機関変更
非該当

研究報告書(概要版)

研究目的
求められるがんの情報や支援の範囲は急速に広がり、誤った情報への誘導を避けるためにも、迅速・確実な情報提供体制が求められている。現在、がんに関する情報提供は、主に国立がん研究センター「がん情報サービス」により広範囲にわたるがんの情報提供が行われているが、限られる資源の中で、今後も標準治療から専門性の高い情報まで広がり続ける情報をどのように適切かつ正確、迅速に提供していくかは、喫緊の課題となっている。
同様に、複雑化し増え続けるがん患者らの相談支援ニーズに対応するために、持続可能で適切な相談支援体制の構築に向けて、エビデンスに基づくがん相談支援体制の確立が求められている。患者をはじめとする国民が信頼できるがん情報を迅速に享受でき、また、適切に活用できるようになるためには、持続可能ながんの情報提供と相談支援の体制は、両者がそれぞれ、また相互によりよく機能することが重要である。
そこで本研究では、将来に亘って持続可能ながん情報提供と相談支援の体制の確立に向けて、1)急速に多様化するがん情報ニーズに迅速かつ正確に対応するために“All Japan”でのがん情報提供体制のあり方を提言すること、2)がん診断早期からのがん相談支援の有効性の検証を行い、エビデンスを構築することの2つを目的として、初年度の検討を開始した。
研究方法
1)持続可能ながん情報提供体制の検討では、(1)患者や国民向けのがんの情報の品質管理の可視化、(2)がん関連の学術団体等との連携のあり方、(3)科学的根拠に基づく信頼できる情報づくりの担い手の育成、(4)患者や家族の質問や疑問の継続的な収集方法と活用方法に関する検討と(5)提言書の取りまとめを行った。2)持続可能かつ有効ながん相談支援体制の確立に関する検討では、(1)がん相談体験スケールの開発、(2)がん相談支援センター利用の前後での利用者のQOLと心理状態の比較検討、(3)がん相談支援センターの相談支援の状況とその体制づくりの実態、(4)がん相談支援事業の周知活動の評価に関する研究を実施した。
結果と考察
1)持続可能ながん情報提供体制の検討:がん関連の各関係組織・団体等が、「情報の質」を中心に据えてそれぞれの強みを発揮し、連携の下で、信頼できる適切な情報を作る体制をもつことが解決策の一つの姿であると考えられた。連携による体制が機能しうるのかについて、実現可能性の検討・検証が必要である。2)がん相談支援の有効性の検証に関する検討:開発したがん相談体験スケールの信頼性・妥当性は確認され、心理状態とQOLとの肯定的な関連が示された。また相談支援センターの利用後の心理状態の改善が示された。がん相談支援センターの体制の検討では、特徴は4つに類型化されたことからも、体制の違いによる相談支援センターの効果についてもさらに検討を進めることが重要であると考えられた。
結論
1)持続可能ながん情報提供体制の検討:連携によるがんの情報提供の実現には、学術団体以外のさまざまな諸機関との調整、資金やマンパワーの確保も求められる。運営資金のあり方や体制について考えるべき課題は残されており、引き続き、モデル事業等も含めた慎重な検討が必要である。以上について、「患者や国民のためのがん情報を提供する持続可能な体制の確立に関する提言書」を作成した。
2)がん相談支援の有効性の検証に関する検討:本研究で開発した「がん相談体験のスケール」の信頼性および妥当性は確認され、相談支援センター利用者の利用後の心理状態の改善が示された。相談支援センターの利用前後の有効性の最終評価とともに、相談支援センターの体制別の効果の検証も必要である。

公開日・更新日

公開日
2020-09-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2020-09-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201908005B
報告書区分
総合
研究課題名
将来に亘って持続可能ながん情報提供と相談支援の体制の確立に関する研究
課題番号
H29-がん対策-一般-005
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
高山 智子(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策情報センター がん情報提供部)
研究分担者(所属機関)
  • 河野 浩二(公立大学法人福島県立医科大学医学部消化管外科学講座 )
  • 近藤 俊輔(国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院 先端医療科 )
  • 中島 信久(琉球大学医学部付属病院 地域医療部 )
  • 田村 和夫(福岡大学医学部総合医学研究センター )
  • 奥村 晃子(公益財団法人 日本医療機能評価機構 EBM医療情報部 )
  • 若尾 文彦(国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策情報センター )
  • 西田 俊朗(国立研究開発法人 国立がん研究センター 中央病院 )
  • 中山 健夫(京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻健康情報学分野 )
  • 藤 也寸志(国立病院機構九州がんセンター )
  • 清水 奈緒美(神奈川県立がんセンター 看護局 )
  • 萩原 明人(国立循環器病研究センター予防医学・疫学情報部 )
  • 森田 智視(京都大学大学院医学研究科医学統計生物情報学 )
  • 藤原 俊義(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科・消化器外科学 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
H29.10.1に、研究分担者の中島 信久先生の所属機関変更 H31.4.1に、研究分担者の藤原 俊義先生と河野 浩二 先生が交代 H31.4.1に、研究分担者の萩原 明人 先生の所属機関変更

研究報告書(概要版)

研究目的
求められるがんの情報や支援の範囲は急速に広がり、誤った情報への誘導を避けるためにも、迅速・確実な情報提供体制が求められている。現在、がんに関する情報提供は、主に国立がん研究センター「がん情報サービス」により広範囲にわたるがんの情報提供が行われているが、限られる資源の中で、今後も標準治療から専門性の高い情報まで広がり続ける情報をどのように適切かつ正確、迅速に提供していくかは、喫緊の課題となっている。
同様に、複雑化し増え続けるがん患者らの相談支援ニーズに対応するために、持続可能で適切な相談支援体制の構築に向けて、エビデンスに基づくがん相談支援体制の確立が求められている。患者をはじめとする国民が信頼できるがん情報を迅速に享受でき、また、適切に活用できるようになるためには、持続可能ながんの情報提供と相談支援の体制は、両者がそれぞれ、また相互によりよく機能することが重要である。
そこで本研究では、将来に亘って持続可能ながん情報提供と相談支援の体制の確立に向けて、1)急速に多様化するがん情報ニーズに迅速かつ正確に対応するために“All Japan”でのがん情報提供体制のあり方を提言すること、2)がん診断早期からのがん相談支援の有効性の検証を行い、エビデンスを構築することの2つを目的として、初年度の検討を開始した。
研究方法
1)持続可能ながん情報提供体制の検討では、患者や国民向けの情報提供について(1)がん関連の組織・団体等との連携体制、(2)学術団体等の情報提供状況と連携のあり方、(3)情報作成や提供を支える担い手の育成、(4)国内外のがんの情報提供の現状と優先すべき情報の範囲、(5)がん情報の品質管理、(6)患者や家族等の情報ニーズの継続的な収集と活用、また、2)持続可能かつ有効ながん相談支援体制の確立に関する検討では、がん相談支援センターの(1)利用者による活動評価、(2)相談支援の状況・体制の実態と院内他部署から見た特徴、活動の優先順位を決める事業評価に関する研究を実施した。
結果と考察
1)持続可能ながん情報提供体制の検討:「情報の質」を中心に据えて、がん関連の各関係組織・団体等がそれぞれの強みを活かしたAll Japanがん情報コンソーシアム構想(仮)の体制を目指すことが解決の一つの方法と考えられた。連携による体制が機能しうるのか、実現可能性の検討・検証が必要であると考えられた。2)がん相談支援の有効性の検証に関する検討:開発したがん相談体験スケールの信頼性・妥当性は確認され、心理状態とQOLとの肯定的な関連が示された。また相談支援センターの利用後の心理状態の改善が示された。がん相談支援センターの体制の特徴は4つに類型化され、今後体制の違いによる効果の検討も必要であると考えられた。
結論
1)持続可能ながん情報提供体制の検討:体制の実現には、関係組織・団体等の調整や資金、マンパワーの確保が必要であり、運営資金のあり方や体制について、モデル事業等も含め、慎重な検討が必要である。3年間の検討結果の成果を「患者や国民のためのがん情報を提供する持続可能な体制の確立に関する提言書」としてまとめた。2)がん相談支援の有効性の検証に関する検討:日本の医療背景や文脈を踏まえて開発した「がん相談体験のスケール」の信頼性および妥当性は確認され、相談支援センター利用後の心理状態の改善が示された。全国のがん相談支援センターの体制は複数あると考えられ、体制別の効果の検証も今後必要である。

公開日・更新日

公開日
2020-09-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2020-09-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201908005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
国内全体のがんの情報作成や提供の観点から議論およびコンセンサスづくりを行った研究としては初めてであり、まとめられた提言書の意義は大きい。がん相談支援センターの効果の測定は本研究が国内で初めてである。
臨床的観点からの成果
研究班の中で行われた患者の疑問・質問を収集する仕組みとQ&Aという形で情報を作成するしくみは、患者や国民が必要とする情報を迅速に作成する有用な仕組みの一つになり得る。またがん相談体験スケールにより、今後相談支援センターの活動評価が、利用者の観点から実施しやすくなる。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
現時点でなし
その他のインパクト
2018年12月1日に国立がん研究センターで、公開シンポジウム「患者・市民のための情報づくりに向けて:All Japanでの協力・連携体制づくりを考える」を開催した。がん関連の学会関係者、研究班関係者、行政関係者、その他のメンバー(20学会から総勢約100名)と実施した意見交換会では、がん情報コンソーシアム構想(仮)について、連携体制として国内でのコンソーシアムの創設と活用は有用であると概ね賛同を得られ、コンセンサスづくりの場となった。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
患者の疑問・質問の収集に関する報告2報、がん相談支援センター評価に関するもの2報
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Takayama T, Inoue Y, Yokota R, et al.
New approach for collecting cancer patients’ views and preferences through medical staff.
Patient Preference and Adherence. , 15 , 375-385  (2021)
10.2147/PPA.S292239.
原著論文2
Toh Y, Hagihara A, Shiotani M, et al.
Employing multiple-attribute utility technology to evaluate publicity activities for cancer information and counseling programs in Japan.
J Cancer Policy , 27 , 100261-  (2021)
https://doi.org/10.1016/j.jcpo.2020.100261

公開日・更新日

公開日
2021-06-16
更新日
2022-05-27

収支報告書

文献番号
201908005Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,407,000円
(2)補助金確定額
6,407,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 287,289円
人件費・謝金 317,970円
旅費 1,701,415円
その他 2,623,264円
間接経費 1,478,000円
合計 6,407,938円

備考

備考
自己資金938円

公開日・更新日

公開日
2021-05-14
更新日
-