災害に対応した母子保健サービス向上のための研究

文献情報

文献番号
201907023A
報告書区分
総括
研究課題名
災害に対応した母子保健サービス向上のための研究
課題番号
19DA2002
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
小枝 達也(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター こころの診療部)
研究分担者(所属機関)
  • 村上佳津美(堺咲花病院 心身診療科)
  • 安梅勅江(国立大学法人 筑波大学 医学医療系)
  • 奥田博子(国立保健医療科学院 健康危機管理研究部)
  • 笠岡宜代(坪山宜代)(国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 国際災害栄養研究室)
  • 菅原準一(国立大学法人 東北大学 東北メディカルメガバンク機構)
  • 山崎嘉久(あいち小児保健医療総合センター 保健センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
11,540,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
昨今では地震、津波、洪水、土砂災害など多種多様な災害が発生しており、それに伴う住民の生活基盤の変化と避難生活の長期化によって、急性期のみならず中長期的な健康被害が生じていることが明らかとなった。
とくに東日本大震災後の小児の健康被害を調査した先行研究においては、①肥満の増加、②気管支喘息の増加、③PTSDの遷延化の3つが具体的な健康課題として抽出されている。文献レビューによってこれらの健康被害の効果的な対策に関する知見を収集することおよび災害後の中長期的な母子の健康被害を調査し、母子保健サービス向上のための知見を得ること及び具体的な対策を提言することを目的とする。
研究方法
妊産婦、保健師、栄養士、保育士、保護者、子どもの支援を展開するNGO団体に対してフォーカスグループインタビューによる質的調査を行った。また量的調査として東日本大震災と熊本地震の発災の前後における乳幼児健康診査の健康指標の変化を調査した。東日本大震災の先行研究で明らかとなっている健康被害(肥満、気管支喘息の増加、PTSDの遷延化)等の文献レビューを行った。
結果と考察
質的調査の結果より、発災後の応急対策期では、避難所における妊産婦、乳幼児といった要配慮者の安全で安心な居場所の確保が課題であること、復旧・復興対策期以降では保育活動や食事の供与といった日常生活機能の復旧や乳幼児健診の再開が、復興の促進・保護者のレスパイトおよび子どもの健康被害の予防につながることが、被災地での専門職種の経験として集約された。また地域のつながり、子どもとのかかわりの質・生活習慣の保持がエンパワメント要因となりえることも挙げられた。対策として、保健センターや保育所等を避難所として活用する場合でも、もともとの機能が早期に再開できるように、発災前から工夫や準備をしておくことが重要であると考えられた。また、心のケアとして逆効果となる懸念のある手法が実施されている実態も明らかとなった。
量的調査では、乳幼児健康診査での健康指標の変化を発災の前後で比較した。東日本大震災、熊本地震ともに約10%の評価項目において、災害の影響と判断される変化が認められたが、翌年には解消しており短期間の影響に留まると考えられた。現在の母子保健システムと災害時の救援システムは概ね適切に機能しているものと考えられた。
結論
要配慮者の安全で安心できる居場所の確保や保育や健診が早期に再開できるような避難所の在り方などを、平時より検討して対策を立てる必要がある。健康診査の指標の変化で診た場合に、東日本大震災、熊本地震ともに約10%の評価項目において、災害の影響と判断される変化が認められたが、翌年には解消しており短期間の影響に留まると考えられた。現在の母子保健システムと災害時の救援システムは概ね適切に機能しているものと考えられた。

公開日・更新日

公開日
2020-10-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-10-28
更新日
2021-08-18

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201907023Z