文献情報
文献番号
201907010A
報告書区分
総括
研究課題名
身体的・精神的・社会的(biopsychosocial)に健やかな子どもの発育を促すための切れ目のない保健・医療体制提供のための研究
課題番号
H30-健やか-一般-004
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
岡 明(国立大学法人東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
- 小枝 達也(国立成育医療研究センター こころの診療部)
- 山崎 嘉久(あいち小児保健医療総合センター 保健センター)
- 平岩 幹男(国立大学法人東京大学医学部附属病院 )
- 西崎 和則(岡山大学医歯薬学総合研究科)
- 松浦 賢長(福岡県立大学看護部)
- 中塚 幹也(岡山大学大学院保健学研究科)
- 永光 信一郎(久留米大学医学部)
- 仁科 幸子(国立成育医療研究センター感覚器・形態外科部眼科)
- 中山 秀紀(独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター)
- 阪下 和美(国立成育医療研究センター総合診療部総合診療科)
- 竹原 健二(国立成育医療研究センター政策科学研究部)
- 石崎 優子(関西医科大学小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
19,231,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
子どもの健康に対しBiopsychosocial(BSP)な視点を備えた医療保健体制を確立する必要があり、包括的で切れ目のない小児思春期の保健・医療体制のための基盤作りと実証を行う。
研究方法
(1)日本版Bright Futuresの作成: BSPの視点による課題を抽出し指針を作成公開する。(2)小児保健医療のデータからの課題の抽出:レセプト情報を用い、障害調整生存年(DALY)の推計を試みた。(3)乳幼児健康診査の身体診察マニュアルに準拠した乳幼児健康診査体制:疫学データにより健診項目を必須項目と推奨項目に分類した。パイロット研究の実施に向けてアプリを開発した。標準的な健診の研修のための動画資材を作成した。(4)乳幼児健診における精度管理等データに関する研究:発育性股関節脱臼のスクリーニングの精度管理を検討するとともに、健診の心音異常にて心疾患が発見される頻度について検討した。(5)BPSモデルを用いた思春期面接の試み:思春期の子どもの問診票を作成し小児科の一次医療機関で面接を実施した。(6)思春期健診の社会実装化を目指した研究:思春期保健指導マニュアル、保健指導コメント、保健指導解説、子ども用保健指導リーフレットなどの思春期健診のパイロット研究に必要な資料と計画作成を行った。(7)インクルーシブ教育を受ける思春期の難聴者に関する研究: インクルーシブ教育を受けている難聴児に学校生活に関するアンケートを実施した。(8)日本版Bright Futuresにおける性教育の方法に関する研究:教育方法の概要を作成した。(9)LGBT、特に性同一性障害/性別違和の子どもや関係者への情報提供についての研究: 教職員や大学生を対象とした実態調査、意識調査を実施した。(10)乳幼児健診における視覚スクリーニングの標準化と連携に関する研究:乳幼児健診における視覚スクリーニングの標準化についてまとめるとともに、新たな視覚スクリーニング機器の検討を行った。(11)思春期の薬物メディア依存に関する研究:中学校と幼稚園におけるインターネットやゲーム等の問題(依存的)使用に関する実態調査を行った(12)米国の小児保健体制の応用に関する検討:健康の社会的決定要因(Social Determinants of Health、SDH)の概念を文献的にレビューした。(13)米国Bright Futures、フィンランドNeuvora、日本版ネウボラの比較による日本版Bright Futuresの普及法についての考案・自記式PSC17日本語版の開発:小児保健システムの国際比較を行った。
結果と考察
(1)アメリカ小児科学会をモデルとした日本版Bright Futuresの指針を作成し本研究班のHPに公開した。「乳児から思春期までのヘルススーパービジョンのための指針」としてダウンロードし現場で使用できる様にした。(2)我が国の疾病負担の推計を行い、「精神及び行動の障害」では、傷病名の出現数・DALYの推計値ともに、年齢とともに思春期に向けて増加していた。(3)1歳6か月児健診と3歳児健診につき具体的な診察の方法や所見とする基準を策定した。集団健診で使用可能なアプリを開発し、医師向けの研修動画を作製した。(4)思春期の子どもたちにBPSモデルによる、一次医療機関で実行可能な問診票を作成し診療の場での面接を試行した。さらにモデル地区を選定や、各々の問診項目に対する簡易な保健指導内容を制作などのパイロット健診実施の準備を行った。(5)普通学校に通学する難聴児が生活や学習に多岐にわたる問題を有していることが判明した。(6)性教育の方法についてガイド(概要)を開発し骨格を作成した。学校における性別違和について、学校教員、特に養護教諭に対して、性の多様性、LGBTに関するさらなる情報提供が必要であった。(7)乳幼児健診における有効な視覚スクリーニングの標準的な診察と判定法を周知した。新たな機器Spot Vision Screenerの有用性を検証した。(8)中学1年生では、インターネットを依存的使用している生徒が多数存在し、就寝時刻の遅さと関連している傾向にあった。幼稚園生のメディア・ゲーム利用に対し、予防啓発教育などの必要性が考えられた。(9)小児医療従事者が認識すべき概念として、健康の社会的決定要因の重要性を提言した。(10)日本版Bright Futuresが子育て世代包括支援センターから引継いでヘルススーパービジョンを行うことにより、切れ目ない支援が可能になると考えられた。
結論
切れ目のない小児思春期の保健・医療体制のための基盤作りの資料作成、健診パイロット研究の準備、視覚・聴覚・運動器・性などの課題別検討、保健体制に関する検討などを行った。
公開日・更新日
公開日
2020-10-28
更新日
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