親子の心の診療を実施するための人材育成方法と診療ガイドライン・保健指導プログラムの作成に関する研究

文献情報

文献番号
201907005A
報告書区分
総括
研究課題名
親子の心の診療を実施するための人材育成方法と診療ガイドライン・保健指導プログラムの作成に関する研究
課題番号
H29-健やか-一般-005
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
永光 信一郎(久留米大学 医学部 小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 三牧 正和  (帝京大学 医学部 小児科学講座 )
  • 岡 明 (東京大学 医学部 小児科 )
  • 川名 敬(日本大学 医学部 産婦人科 )
  • 荻田 和秀(りんくう総合医療センター 産婦人科 )
  • 山下 洋(九州大学病院 子どものこころ診療部 )
  • 山崎 知克(浜松市子どものこころ診療所 )
  • 岡田あゆみ(土居 あゆみ)(岡山大学病院 小児医療センター 子どものこころ診療部 )
  • 大西 雄一(東海大学医学部 児童青年精神医学 )
  • 道端 伸明(東京大学大学院医学系研究科 ヘルスサービスリサーチ講座 )
  • 片岡 弥恵子(聖路加国際大学・ウィメンズヘルス・助産学 )
  • 平林 優子(信州大学医学部・保健学科 )
  • 内山 有子(東洋大学ライフデザイン学部 )
  • 堀越 勝(国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センター )
  • 片柳 章子(古賀 章子)(国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センター )
  • 関口 進一郎(慶應義塾大学 医学部 小児科 )
  • 村上 佳津美(堺咲花病院 心身診療科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
12,526,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
子どもの心の問題が社会的な関心を集める中、子どものみならず親を含めた家族の心の支援が必要とされている。その背景には、妊娠期~新生児期の特定妊婦、要保護児童、虐待死、特別養子縁組の問題、乳幼児期は発達の偏りを軸にした育てにくさの問題、そして思春期には自殺率の上昇や不健康なやせの増加など、子どもの支援だけでは解決できない問題が山積している。これらの克服には多職種(小児科医、産婦人科医、精神科医、心理士、保健師、助産師、看護師、養護教諭)と行政の連携が不可欠である。研究班最終年度には、親子の心の診療に関する様々な専門家による連携体制の構築を目的に「親子の心の診療における多職種連携マニュアル」の作成を目的とした。また、研究分担者の専門領域を中心に、ライフステージ別に産後ケアの充実、特別養子縁組の生母支援、周産期メンタルヘルスシステムの構築、発達障害の支援、アタッチメント理論の啓発、摂食障害の親子関係解析、学校との連携および保健教育の充実、親子の心の診療医の育成など、様々な視点から親子の心の診療大切について検討を行った。
研究方法
研究代表者が所属する研究機関で「親子の心の診療のための多職種連携マニュアル」検討チームを立ち上げ、前年度に抽出された親子の心の診療課題と班会議での意見を集約し、マニュアルの構成を「連携症例集」、「連携職種」、「連携部署」の3つのパートととした。思春期から子育て期における親子の心の問題の「連携症例集」から、診療科間、多職種間の連携方法について本書から学び、その職種の診療内容や支援内容は「連携職種」に簡素にまとめた。そして、親子の心の診療のためにどの行政機関や教育機関などと連携をすればよいのか各々の機関の特徴を「連携部署」にまとめた。

結果と考察
分担研究報告は、周産期~乳幼児期領域において、産後うつ、精神疾患合併妊娠、特定妊婦、ハイリスク妊婦の支援連携について、山下、川名、荻田、片岡、平林が担当した。乳幼児期においては、アタッチメント理論の詳説、自閉スペクトラム症の基礎疾患を山崎、三牧が担当した。学童思春期においては、心理職、教育機関との連携について村上、岡田、大西、内山が担当した。思春期の精神疾患である摂食障害の親子関係について道端が担当し、思春期の自殺予防に向けたポピュレーションアプローチ方法について岡が詳説した。トラウマに対する心理教育マテリアル作成や、心の診療におけるアプリ開発を堀越、片柳、永光、石井が担当した。人材育成の教育プログラムについて村上、関口が担当した。
結論
本研究班最終年の成果として、「親子の心の診療における多職種連携マニュアル」を作成した。医療職、教育職、行政職を対象としている本マニュアルの活用は、周産期から乳幼児期、学童思春期における様々な親子の心の診療において、多くの職種や関連部署の情報を提供している。多職種、多機関の連携が深まり、心が救われる子どもと親が増える事が期待される。

公開日・更新日

公開日
2020-10-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2020-10-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201907005B
報告書区分
総合
研究課題名
親子の心の診療を実施するための人材育成方法と診療ガイドライン・保健指導プログラムの作成に関する研究
課題番号
H29-健やか-一般-005
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
永光 信一郎(久留米大学 医学部 小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 三牧 正和(帝京大学 医学部 小児科学講座)
  • 岡 明(東京大学 医学部 小児科)
  • 川名 敬(日本大学 医学部 産婦人科)
  • 荻田 和秀(りんくう総合医療センター 産婦人科)
  • 山下 洋(九州大学病院 子どものこころ診療部)
  • 山崎 知克(浜松市子どものこころ診療所)
  • 岡田 あゆみ(土居 あゆみ)(岡山大学病院 小児医療センター 子どものこころ診療部)
  • 大西 雄一(東海大学医学部 児童青年精神医学)
  • 道端 伸明(東京大学大学院医学系研究科 ヘルスサービスリサーチ講座)
  • 片岡 弥恵子(聖路加国際大学・ウィメンズヘルス・助産学)
  • 平林 優子(信州大学医学部・保健学科)
  • 内山 有子(東洋大学ライフデザイン学部)
  • 堀越 勝(国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センター )
  • 片柳 章子(古賀 章子)(国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センター)
  • 関口 進一郎(杏林大学 医学部)
  • 村上 佳津美(堺咲花病院 心身診療科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
子どもの心の診療体制が厚労省の施策のもと大幅に整備されてきた。しかし、多様化している子どもの心の問題は、親を含む家族の心の問題が背景に存在することがあることがある。子どもの心の問題の解決には子どものみならず親の支援や診療も必要である。本研究班の目的は、親子の心の診療を実施するための人材育成/診療ガイドライン・保健指導プログラムの作成とした。
研究方法
研究班は小児科医、精神科医、産婦人科医、看護師、助産師、心理職、養護教諭、行政職等の多職種17名から構成され、以下4つの課題について取り組んだ。1) 親子の心の診療に関する課題整理、2) 親子の心の診療に関する様々な専門家による連携体制の構築、3) 親子の心の診療を実施するための研修プログラムの開発、4) 親子の心の診療ガイドライン・保健指導プログラムの作成。各々の課題について、12、6、2、4つの研究課題が実施された。
結果と考察
1)親子の心の診療に関する課題整理:調査研究から、母子保健領域の課題克服には妊娠や出産をしてからではなく、思春期からの保健指導の充実と、思春期におけるメンタルヘルス課題の早期支援が重要であると示唆された。さらに周産期、思春期のいずれの心の問題においても、親へのアプローチ手段が限られており、その支援には、親支援/診療のマニュアル化、予算化が必要であると思われた。母子保健領域の喫緊の課題である虐待対策、育てにくさへの対策が求められる中、親自身の医療アクセスの困難さも考慮したとき、子どもの保険診療内での同一診療医による親支援/診療の医療保険算定化も検討されるべきであると思われた。
2)親子の心の診療に関する様々な専門家による連携体制の構築:異なる職種が接する場として健やか親子21推進協議会が一翼を担った。健やか親子21推進協議会は、母子保健の健康水準向上に向けた国民運動計画を推進していく職能団体の集まりで、日本小児科学会、日本産科婦人科学会等を含む80以上の学会・団体から構成されている。班研究機関中に共通の母子保健テーマ向上に向けた研究テーマを共有することで互いの職種の理解を深めることができた。このような行政主導の有機的な協議会が多職種連携の要になることが期待される。
3)親子の心の診療を実施するための研修プログラムの開発:班研究で新たな研修プログラムを作成することは行わなかった。その理由として、子どものこころ専門医機構で子どものこころ専門医の研修到達目標・カリキュラムが作成中であったため見送った。また、小児科医療における思春期医学の確立のために小児科専門医における思春期医療の到達目標についても検討がなされた。
4)親子の心の診療ガイドライン・保健指導プログラムの作成:親子の心の診療ガイドラインおよび保健指導プログラムについて医師(小児科医・産婦人科医・精神科医・心療内科医)を対象とした「親子の心の診療マップ」と、保健師、助産師、看護師、心理士をはじめとする医療職や教育職、行政職を対象とした「親子の心の診療における多職種連携マニュアル」を作成した。さらに親と子を対象とした医療資源を知るツールとしての「親子の心のHEORESアプリ」を開発した。「親子の心の診療マップ」は、家族が抱える心の問題に医療者が“気づき”、どの職種と連携をとればよいのか、つまり“つなぐ”を目標として制作した。さらにライフステージに沿って、産婦人科医、小児科医、精神科医が主に関わるであろう「女性の心版」、「子どもの心版」、「親の心版」の3編を作成した。「親子の心の診療における多職種連携マニュアル」に関しては、“連携症例集(30例)”、“連携職種の紹介(28職種)”、“連携部署の紹介(56部署)”から構成されている。どこにいる、どの職種につなぐことがよいのか症例集から学ぶことができる。「親子の心のHEORSアプリ」は、“ヒーロー探し”と“ヒーロー図鑑”の2セクションからなり、アプリには14人のヒーロー(医療職、教育職、行政職)が登場する。親子の心の問題に対する各職種の役割を9つのストーリーから学び、図鑑からは各ヒーローの強みや得意分野を知ることができる。

結論
親子の心の診療ガイドライン作成研究班は、小児科医をはじめとする産婦人科医、精神科医と、様々な医療職、教育職、行政職から構成され、多職種連携のもと平成29年度の研究班発足時に掲げた4つの到達目標をほぼ成し遂げた。厚生労働行政施策への反映として、「健やか親子21(第2次)」が掲げる基盤課題、重点課題の克服において、本研究班成果が妊娠期から乳幼児期の切れ目ない一貫した母子保健の向上を促進し、産婦人科医、精神科医、小児科医による連携した妊婦新生児の支援強化につながり、思春期の様々な保健課題に対しても多職種による親子の支援が可能となる。

公開日・更新日

公開日
2020-10-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2020-10-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201907005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
子どもの心の問題に対する厚生労働省施策事業として現在までに、「子どもの心の診療医の養成(平成17年以降)」「子どもの心の診療ネットワーク事業(平成23年以降)」が実施されてきた。子どもの心の問題の解決には子どものみならず、親を含めた家族の支援が必要であることから、本研究班では小児科医のみならず産婦人科医、精神科医に加え、保健師、心理士、助産師、教育職など多職種からなるチームを構成し、課題整理、診療マニュアル作成、連携マニュアル作成、親子の心のHEROSアプリ制作など多数の成果物を輩出した。
臨床的観点からの成果
親子の心の診療には、複数の診療科、職種、部署の連携が必要な中、小児科医、精神科医、産婦人科医、心療内科医、心理士、助産師、保健師、ソーシャルワーカー、養護教諭、行政職種などオールジャパン体制で、子どもの視点、親の視点で課題整理を行い、親子の心の進診療マニュアル等を成果物として作成した。アンケート調査においては日本小児科医会、日本産婦人科医会、日本精神科診療協会、行政機関の支援を得るころで課題について意識共有を高めることでできた。
ガイドライン等の開発
2つのガイドライン(手引き)を作成し、書籍化、およびホームページにも掲載し、多くかつ幅広い職種が自由に情報を収集できる体制を作った。2つのガイドライン(手引き)は、1)産婦人科医、小児科医、精神科医、心療内科医のための親子の心の診療マップ、2)親子の心の診療における多職種連携マニュアル。1)については、女性の心版、子どもの心版、親の心版を作成した。2)については、30の連携症例、27の連携職種、46の連携部署について60名以上の専門家によって作成された。
その他行政的観点からの成果
平成29年度に実施した親子の心の診療のための課題整理では福岡県・大分県の全市町村および小児科・精神科・産婦人科の全医療機関でアンケート調査を実施した。虐待・母親の精神疾患等に対する多職種による連携構築が喫緊の課題であること、行政主導の施策が医療現場の末端までに十分伝達されず情報共有が実施されていないことが明らかなになった。また連携マニュアルの30の連携症例では医療での診療の流れや、医療が求める行政支援内容を網羅できる教材となった。
その他のインパクト
親子の心の診療に携わる職種のことを国民が知る手段として、子どもと親が利用できるアプリを作成した(子どもと親のためのヒーロー図鑑;心を支えてくれるヒーローたち)。9つの(希死念慮、不登校、摂食障害、育てにくさ、性、ネット依存、虐待、産後うつ、いじめ)ストーリーを紹介し、14のヒーローズ(医師、看護師、心理士、保健師等)と出会い、集めるというゲーミフィケーションの概念を取り入れた。Google, IOSにアップロード、展望としてGPSとリンクして地域社会資源とつながるシステムを検討している。

発表件数

原著論文(和文)
18件
原著論文(英文等)
9件
その他論文(和文)
20件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
86件
学会発表(国際学会等)
9件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
山下大輔, 向井隆代, 千葉 比呂美, 他
小児摂食態度調査票(ChEAT-26)の有用性について 神経性やせ症と回避・制限性食物摂取症との比較から
子どもの心とからだ , 28 (1) , 51-57  (2019)
原著論文2
永光信一郎, 村上佳津美.
小児特定疾患カウンセリング料の適応拡大に向けた実態調査
日本小児科学会雑誌 , 123 (12) , 1822-1827  (2019)
原著論文3
Nagamitsu S, Fukai Y, Uchida S, et al.
Validation of a childhood eating disorder outcome scale.
Biopsychosoc Med , 13 (21)  (2019)
doi: 10.1186/s13030-019-0162-3.
原著論文4
Sakai S, Nagamitsu S, Koga H, et al.
Characteristics of socially high-risk pregnant women and children's outcomes.
Pediatr Int , 62 (2) , 140-145  (2020)
doi: 10.1111/ped.14058.
原著論文5
Shimomura G, Nagamitsu S, Suda S, et al.
Association between problematic behaviors and individual/environmental factors in difficult children
Brain Dev , 42 (66) , 431-  (2020)
原著論文6
Suda M, Nagamitsu S, ObaraH, et al.
Association between children’s sleep habits and problematic behaviors at age 5
Pediatr Int , 62 (10) , 1189-  (2020)
原著論文7
Nagamitsu S, Mimaki M, Koyanagi K, et al
Prevalence and associated factors of suicidality in Japanese adolescents: results from a population-based questionnaire survey
BMC Pediatr , 20 (1) , 467-  (2020)

公開日・更新日

公開日
2020-10-28
更新日
2024-05-23

収支報告書

文献番号
201907005Z