乳幼児突然死症候群(SIDS)を含む睡眠中の乳幼児死亡を予防するための効果的な施策に関する研究

文献情報

文献番号
201907001A
報告書区分
総括
研究課題名
乳幼児突然死症候群(SIDS)を含む睡眠中の乳幼児死亡を予防するための効果的な施策に関する研究
課題番号
H29-健やか-一般-001
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
戸苅 創(学校法人金城学院)
研究分担者(所属機関)
  • 高嶋幸男(国際医療福祉大学 医療福祉学研究科 )
  • 加藤稲子(三重大学 医学系研究科)
  • 中川 聡(国立研究開発法人国立成育医療研究センター 手術集中治療部)
  • 成田正明(三重大学 医学系研究科)
  • 大澤資樹(東海大学 医学部)
  • 柳井広之(岡山大学 大学病院)
  • 平野慎也(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪母子医療センター 新生児科)
  • 加藤則子(十文字学園女子大学 人間生活学部)
  • 長村敏生(京都第二赤十字病院 小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
4,616,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
各国のSIDS対策キャンペーン検討、脳神経病理学的研究、乳児の睡眠環境調査と乳児突然死例実態調査、リスク因子に関する疫学的研究、Sudden Unexpected Postnatal Collapse (SUPC)の病態解明、SIDS診断法の検討、などの研究から睡眠中の乳児突然死の実態を調査し、SIDS予防対策について検討を行う。
研究方法
SIDS対策キャンペーのおしゃぶりの使用に関する検討、脳神経病理学的研究、健康乳児の睡眠環境、Sudden Unexpected Postnatal Collapse (SUPC)の病態解明、先天的因子の関与について、法医学的および病理学的に解剖された症例の実態調査、早期新生児死亡の病態解明法から考慮したSIDS診断法の検討、平成9年度SIDS全国調査データの再解析、小児救急領域での乳児突然死の実態調査、などから突然死の実態と診断、予防対策について検討した。
結果と考察
おしゃぶりの使用については約20編の報告があり、理由は明らかではないが、その全部がSIDS発症の予防効果を明確に示すものであり、多くの国でキャンペーンに取り入れることとなっている。
SIDSの病態に関しては、genetic pathologyの研究が多いことが判明した。ヒト中脳背側縫線核のstress peptide pituitary adenylate cyclase activating polypeptide (PACAP)とその受容体PAC1の関与、セロトニン作動性異常、喫煙がマウス脳幹、線条体エンドカナビノイド系の発達を障害し突然死の原因となる、などが示唆された。
健康乳児の睡眠環境調査からは大人用寝具に寝かす割合が乳児の月齢が進むとともに増加していた。法医学施設を対象とした乳児突然死例調査では月齢1ヶ月が最も多く、大人用寝具で寝かせていた症例が多かった。頭部が寝具などで覆われた状態は約三分の一で認められた。
SUPCの多くは出生24時間以内に発生、頻度は10万出生分の2.6から133、約半数は死亡、半数は重篤な後遺症を認めた。
先天性ウイルス感染動物モデル群(poly I:C投与群)から産まれた仔では、橋・延髄膜貫通型シグナル受容体の遺伝子グループに発現変動が認められ、先天的因子の関与も示唆された。
法医学多施設共同研究から、睡眠関連乳児突然死例について検討した。月齢は生後1ヶ月が最も多く、人口動態調査数を対照としてリスク因子を検討すると、低体重出生児と早産が正常体重児と満期産に対して2倍程度の増強因子となった。異常発見時の添い寝は62%で、体位は仰向け52%、うつ伏せ40%、横臥位7%であった。
日本病理学会データベースに登録されたSIDS症例は全SIDS症例の約9%であった。SIDS病理解剖数には地域差,施設差があり、SIDSと診断された症例で遺族の承諾等の問題から中枢神経系の検索が行われていない症例が約半数認められた。
大阪母子医療センターでの早期新生児死亡例の剖検システムでは、全例で死因につながる病態が明らかになり、約半数の症例で原因を解明することができた。全身解剖に加えて、細菌培養検査、尿検査、全身X線検査、遺伝子検査などの補助検査が診断の一助となった。臨床情報と剖検診断を臨床医と病理医で詳細に検討することが有用である。
平成9年度SIDS患者対照研究データの解析から、死亡児で首すわりと寝返りの発達の早い集団がみられ、首すわりの早さと寝返りの早さが相互に関連していた。あおむけ寝の死亡児で早い時期で寝返りをしていたものが多く、SIDSリスクが示唆された。
小児救急領域における突然死例では突然死の半数近くが0歳児、約三分の二が3歳未満であった。3歳未満の死因としては、原因不明、SIDS疑い、窒息、虐待の割合が高かった。
結論
SIDS予防キャンペーンでは各国の持つ社会文化、出産文化、育児文化が大きく関与する。社会的背景を考慮した上で、関係する各種組織の協力と行政的な判断も考慮して展開するべきと考える。我が国の文化的背景を勘案した上で、実施するに値するものを下記のように検討した。
SIDS/SUID予防のため、以下のことに注意して下さい。
(1) 1歳になるまでは、お昼でも夜でも、寝かせるときは仰向けにしましょう。
(2)できるだけ母乳で育てましょう。
(3)たばこをやめましょう。
(4) 生後2ヶ月以降で、母乳保育が出来るようになったら、泣いて寝ないときにはおしゃぶりの使用を考えてよいでしょう。
(5) 赤ちゃんの周りに、枕、ぬいぐるみ、おもちゃ、などを置かないようにしましょう。
(6) 添い寝の時は、お母さんの過労、薬、飲酒などでの熟睡に気をつけましょう。
(7)添い寝授乳(添い寝をしながらの授乳)はやめましょう。

公開日・更新日

公開日
2020-09-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2020-09-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201907001B
報告書区分
総合
研究課題名
乳幼児突然死症候群(SIDS)を含む睡眠中の乳幼児死亡を予防するための効果的な施策に関する研究
課題番号
H29-健やか-一般-001
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
戸苅 創(学校法人金城学院)
研究分担者(所属機関)
  • 高嶋幸男(国際医療福祉大学 医療福祉学研究科)
  • 市川光太郎(地方独立行政法人北九州市立八幡病院小児救急センター)
  • 加藤稲子(三重大学 医学系研究科)
  • 中川 聡(国立研究開発法人国立成育医療研究センター 手術集中治療部)
  • 成田正明(三重大学 医学系研究科)
  • 大澤資樹(東海大学 医学部)
  • 柳井広之(岡山大学 大学病院)
  • 平野慎也(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪母子医療センター 新生児科)
  • 加藤則子(十文字学園女子大学 人間生活学部)
  • 長村敏生(京都第二赤十字病院 小児科)
  • 山中龍宏(緑園こどもクリニック)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
乳幼児突然死症候群(SIDS)を含む乳幼児の予期せぬ突然死(SUID)を防ぐための効果的な施策を検討するため、SIDSの病態解明、神経病理学的検討、リスク因子、先天性因子の関与、法医病理学的検討などについて複数の専門家による研究を実施し、予防対策について検討する。
研究方法
欧米、豪州のSIDS対策の現地調査、脳神経病理学研究の文献検索、健康乳児の睡眠環境、教育・保育施設での死亡例、Brief Resolved Unexpected Events (BRUE)およびSudden Unexpected Postnatal Collapse (SUPC)の病態、先天的因子の関与、法医学的および病理学的に解剖された症例の実態調査、SIDS診断法、平成9年度SIDS全国調査データの再解析、小児救急領域での乳児突然死例の調査、乳児の体動モニタリングについて検討した。
結果と考察
SIDSキャンペーンのおしゃぶりの効果については論文報告が約20編あり、その全てが機序は不明であるもののSIDS予防効果を明確に示すものであった。日本でおしゃぶり使用を考慮する場合、(1)生後2ヶ月以降、母乳保育が出来るようになってから使用する、(2)強制するものではない、(3)眠っている間に口から落ちても再挿入の必要はない、(4)付帯している紐は絞扼の危険があるため首にかけないようにする、(5)生後2ヶ月から生後6ヶ月頃まで、遅くとも1歳まで、などが考えられた。
神経病理学的には、SIDSの発生病態に関しては、genetic pathologyの研究が多いことが判明した。サブスタンスPとその受容体ニューロキニン 1の関与、喫煙の脳幹への影響などが突然死の原因となり得る。
健康乳児では大人用寝具に寝かす割合が乳児の月齢が進むとともに増加していた。法医学施設での乳児突然死例では月齢1ヶ月が最も多く、大人用寝具に寝かせていた割合が高かった。頭部が寝具などで覆われた状態は約三分の一で認められた。
教育・保育施設等ではSIDSと断定されているものは少なかった。ALTE患者の1~19%がBRUEのlower-risk群に相当していた。SUPCの多くは出生24時間以内に発生、頻度は10万出生分の2.6から133、約半数は死亡、半数は重篤な後遺症を認めた。
先天性ウイルス感染動物モデル群から産まれた仔では、橋・延髄膜貫通型シグナル受容体の遺伝子グループに発現変動が認められ、先天的因子の関与も示唆された。
法医多施設共同研究から、睡眠関連乳児突然死例は月齢が生後1ヶ月で最も多く、リスク因子を検討すると、低体重出生児と早産であった。異常発見時の添い寝は62%、体位は仰向け52%、うつ伏せ40%、横臥位7%であった。
日本病理学会データベースでSIDS症例は全SIDS症例の約9%であった。地域差,施設差が認められ、中枢神経系の検索が難しいことが判明した。
早期新生児死亡例の剖検システムでは解剖に加えて、細菌培養検査、尿検査、全身X線検査、遺伝子検査などの補助検査が診断の一助となっていた。
平成9年度SIDS患者対照研究データの解析から、死亡児で首すわりと寝返りの発達の早い集団がみられ、SIDSリスクとの関連が示唆された。
小児救急領域における突然死例調査からは、突然死の半数近くが0歳児、約三分の二が3歳未満であった。3歳未満の死因としては、原因不明、SIDS疑い、窒息、虐待が多かった。
加速度センサで子どもの体位・体動を計測することが可能であった。
結論
SIDS予防キャンペーンでは各国の持つ社会文化、出産文化、育児文化が大きく関与する。社会的背景を考慮した上で、関係する各種組織の協力と行政的な判断も考慮して展開するべきと考える。我が国の文化的背景を勘案した上で、実施するに値するものを下記のように検討した。
SIDS/SUID予防のため、以下のことに注意して下さい。
(1) 1歳になるまでは、お昼でも夜でも、寝かせるときは仰向けにしましょう。
(2)できるだけ母乳で育てましょう。
(3)たばこをやめましょう。
(4) 生後2ヶ月以降で、母乳保育が出来るようになったら、泣いて寝ないときにはおしゃぶりの使用を考えてよいでしょう。
(5) 赤ちゃんの周りに、枕、ぬいぐるみ、おもちゃ、などを置かないようにしましょう。
(6) 添い寝の時は、お母さんの過労、薬、飲酒などでの熟睡に気をつけましょう。
(7)添い寝授乳(添い寝をしながらの授乳)はやめましょう。

公開日・更新日

公開日
2020-09-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-09-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201907001C

収支報告書

文献番号
201907001Z