就労に関するアセスメントツールや手法の活用実態と課題についての研究

文献情報

文献番号
201906039A
報告書区分
総括
研究課題名
就労に関するアセスメントツールや手法の活用実態と課題についての研究
課題番号
19CA2020
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
前原 和明(秋田大学 教育文化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 八重田 淳(筑波大学 人間系)
  • 若林 功(常磐大学 人間科学部)
  • 縄岡 好晴(大妻女子大学 共生社会文化研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
3,133,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在、就労系障害福祉サービスの利用者は年々増大している(平成20年度と平成29年度の比較で約4.56倍)。加えて、その利用者の内、一般企業の就職へと移行する者も増えているが(平成20年度と平成29年度の比較で約4.95倍)、就労継続支援事業所の一般就労への移行状況は横ばいであり、そもそも一般企業に就職させた実績がない事業所も多い(A型:54.8%、B型:80%)。障害者の職業的自立に向けては、就労系障害福祉サービス全体で一般就労への移行を促していくことが必要である。
個々の障害者の特性等に応じたマッチングや職場定着の支援とともに、その全ての支援の前提となる就労アセスメントは早々に実施方法等を整理すべき重要な課題である。しかし、就労アセスメントについては、そもそも実施できていない状態にある事業所も多くあるようである。また、就労アセスメントが実施されている場合にあっても、対象が知的障害者に限られることがある、障害特性に応じた的確な実施ができていない、実施方法等を十分に理解できていない状況にあるようである。
平成28年度障害者政策総合研究事業「就労アセスメント実施者に対する研修カリキュラムの構築のための調査研究」において主に知的障害を伴う自閉症者に対するアセスメント手法(TTAP)が展開された。しかし、これまでの調査研究等においては、障害特性に応じた就労アセスメントの手法について整理された研究成果はない。各事業所が質の高い支援を計画的に実施していくためには、様々な障害種別に対応できる就労アセスメント方法について情報収集、検討を行うことが必要である。
そこで本研究は、就労アセスメントにおいて活用可能なツールや手法・仕組みについて、国内外の文献等を収集し、共通点や相違点、活用方法・効果・限界等を整理する。そして就労系障害福祉サービスで活用できるアセスメント手法を実際に試行し、障害毎に適切なアセスメント手法の活用モデルの作成に向けた基礎資料を作成することを目的とする。
研究方法
文献調査に基づき、就労アセスメントの実施実態及び実施内容(検査器具等に関する情報収集)を実施した。また、全334所の障害者就業・生活支援センターに対する予備調査を実施し、就労アセスメントに対する実態等を把握した。予備調査に基づき、障害者就業・生活支援センター及び就労移行支援事業所、就労継続支援B型事業所に対する訪問ヒアリング調査を実施した。また並行して実地調査として、就労移行支援事業所における就労アセスメントの実施及び就労支援に対する介入(コンサルテーション)を行い、就労アセスメントの意味及び効果について事例収集に基づき検討した。
結果と考察
文献調査及び実地調査に基づき、個々の利用者が常日頃の適切な支援を受けるため、また、一般企業への移行に向けた手立てを明確にするために就労アセスメントは重要な支援であると考えられた。しかしその一方で、近年、利用者として精神障害者や発達障害者など様々な障害種別が登録利用する状況があり、支援スタッフの知識不足があること、多様な就労アセスメントのツールや手続き等の情報を十分に理解できていないという課題があった。また、就労アセスメントを実施するためのマンパワー不足もあるとの状況が見られた。
以上のような実態を踏まえた就労アセスメントにおける上記のような課題の解決に向けた就労移行支援事業所における就労支援事例に対するコンサルテーション介入の実地調査を行った。コンサルテーション介入を行うことにより、就労移行支援事業所の支援者は就労アセスメントの実施、アセスメントに基づく支援等を行うことが可能となり、実施する支援計画の策定、計画に基づく支援の実行など支援プロセスに沿った活動ができるようになった。また、ヒアリング調査からは支援技術のスキルアップ、連携促進の効果も見られた。以上から、就労アセスメントに基づく就労支援モデルの必要性が示唆された。その実践に向けては、つづく米国における職業リハビリテーションの文献調査から、コンサルテーション等を担う専門機関の必要性、自己決定及び労働生活の質に関する支援観点を持つことの重要性が考えられた。
今後の就労アセスメントの実施促進に向けては、「就労アセスメント実施マニュアル」の改訂により、知識不足及び技術不足を補うこと、また、就労アセスメントを活用できるための支援モデルを整備し、支援者のマンパワー不足を補うことが必要であると考えられた。これは、今後の就労のあり方の改善に寄与すると考えられる。
結論
本研究で得られた就労アセスメントのツール及び手続の情報に基づき、就労アセスメントを中核においた就労支援のあり方を検討することは、就労系障害福祉サービス事業所において就労支援を実施する上で有用な観点を提供すると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2020-11-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-11-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201906039C

収支報告書

文献番号
201906039Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,072,000円
(2)補助金確定額
4,072,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,308,818円
人件費・謝金 0円
旅費 1,599,239円
その他 127,123円
間接経費 939,000円
合計 3,974,180円

備考

備考
当初計画していた研究班会議等をメール等の遠隔で実施したため、計上していた旅費が縮減されたため。

公開日・更新日

公開日
2023-05-30
更新日
-