文献情報
文献番号
201905006A
報告書区分
総括
研究課題名
国外の健康危機発生時に対応できる人材に必要なコンピテンシーの分析及び人材を増強するための研修プログラムの開発のための研究
課題番号
19BA1001
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
大曲 貴夫(国立国際医療研究センター 国際感染症センター)
研究分担者(所属機関)
- 森田 公一(国立大学法人長崎大学 熱帯医学研究所)
- 押谷 仁(国立大学法人東北大学 大学院医学系研究科)
- 山本 太郎(国立大学法人長崎大学 熱帯医学研究所)
- 松井 珠乃(国立感染症研究所)
- 西條 政幸(国立感染症研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題解決推進のための行政施策に関する研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
5,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
我が国の「国際的に脅威となる感染症対策の強化に関する基本計画」において国際感染症等対応人材の育成や派遣の推進が掲げられている。世界的な感染症対策チームとしてGOARN(地球規模感染症に対する警戒と対応ネットワーク)があり、これまで複数の日本人もGOARNに登録し派遣されているが、その数は限られている。そのため、本研究班は、日本人専門家の国際感染症等対応人材の育成やGOARNの枠組みでのアウトブレイク対応派遣の推進を行い、国外の感染症危機時に派遣できる国内体制を構築することを目的とした。
研究方法
GOARN研修の日本誘致のために、WHO本部とWPROと連携を行う。過去に日本でGOARN研修を実施した経験のある長崎大学、過去の講師に対してヒアリングを実施する。研究代表者が所属する国立国際医療研究センター 国際感染症センターは2017年4月より新興・再興感染症に対する臨床マネージメントと感染管理の分野でWHO協力センターとして認定されており、WHOと密なコミュニケーションを継続している。さらに、研究代表者は、長崎大学大学院 熱帯医学・グローバルヘルス研究科の客員教授も担っている。また、本研究班の分担は、臨床、感染管理、検査・診断、疫学、公衆衛生の各分野から構成されており、多角的な視点からGOARN研修を誘致することができる。
さらに、WPROやカントリーオフィスと連携を行い、WPRO域内におけるアウトブレイク対応を行う。対応時は、シニア専門家とジュニア専門家のセットで対応を行うことで、人材育成も行う。本研究班の分担は、臨床、感染管理、検査・診断、疫学、公衆衛生の各分野から構成されているための様々なリクエストに応じることが可能である。
さらに、WPROやカントリーオフィスと連携を行い、WPRO域内におけるアウトブレイク対応を行う。対応時は、シニア専門家とジュニア専門家のセットで対応を行うことで、人材育成も行う。本研究班の分担は、臨床、感染管理、検査・診断、疫学、公衆衛生の各分野から構成されているための様々なリクエストに応じることが可能である。
結果と考察
国外の健康危機発生時に対応するための人材育成プログラム開発および GOARN Tier 1.5研修実施に関する研究では、 WHO本部のGOARN、WPRO、GOARNパートナー機関、厚生労働省、本研究班の連携により人材育成プログラムを開発し、GOARN派遣時に必須研修の1つであるWHOの公式GOARN Tier1.5研修を、約10年ぶりに2019年12月5日(木)〜6日(金)の1.5日間のプログラムとして、50名を対象に東京都で実施した。受講者の評価結果より、回答者の95%以上にとって、本研修で学んだことは今後の派遣に役立つ内容であり、本研修への参加が今後の国際的アウトブレイク対応に従事する意欲や、GOARNやWPROのミッションへの応募意欲につながったことが確認された。GOARN派遣を促進するための因子を明らかにするための研究では、GOARN Tier 1.5研修に参加した全日本人47名のアンケート調査結果より、国際感染症危機管理業務に従事することを希望している参加者が多いことが明らかになった。一方、要求される技能・知識についての懸念、派遣人材の育成に当たって研修や技術支援、派遣情報の提供、派遣中の金銭的補償や医療保障といった多岐に渡る支援に需要があることも明らかとなった。国外の健康危機発生等対応のキャリアパスを明らかにするための研究では、 GOARN派遣を経験した3名の日本人専門家の体験談より、GOARN派遣に要求される能力として、専門家としての技術的な要素に加えて、言語能力、コミュニケーション能力、WHOの組織人としての能力等を抽出することができた。日本の専門家のGOARN派遣を促進するための体制整備に関する研究では、日本で開催したGOARN Tier1.5研修の受講者の中から、GOARN Japanロースターとして34名が登録された。登録者へGOARN派遣に役立つ情報提供も開始し、COVID-19の流行に対して1名が感染予防管理の専門家としてWHOフィリピン国事務所へ、1名が Information and PlanningとCountry supportの部門でWPROおよび、WHOカンボジア国事務所へGOARN派遣された。また、GOARNの派遣制度にはないが、日本のODAの下での派遣制度では専門家個人や所属先に生じる社会経済的な負担を緩和することで、GOARN派遣を円滑にする仕組みが確認された。
結論
本研究では、GOARN研修等を通じ、日本人専門家の国際感染症等対応人材の育成、GOARN派遣の推進を行うことができたが、GOARN派遣制度に伴う問題点も明らかとなった。国外の感染症危機時に派遣できる国内体制をより強固に構築しいくためには、これらの問題点を解決していく必要がある
公開日・更新日
公開日
2020-06-02
更新日
-