文献情報
文献番号
199800719A
報告書区分
総括
研究課題名
介護保険実施に伴う保健婦活動のあり方に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
植田 悠紀子(国立公衆衛生院)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
-
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
介護保険制度下の保健婦活動のあり方について、地域の条件に即した具体 的な指針の提示に資するために、①保健婦の訪問活動の状況を把握し、介護保険認 定で非該当となる人々の重症化を予防するために、継続あるいは強化すべき保健婦 活動を明らかにする、②地域の相談窓口体制の状況等を把握し、介護保険法の対象とならない住民に対する総合的な相談体制のあり方を明らかにする。
研究方法
①介護保険認定非該当者の重症化予防のための活動に関する検討:介護保 険該当非該当の判定を40歳以上の全住民を対象に実施した3県の協力を得て、26自 治体を対象に、各種サービスの状況、介護度認定結果、保健婦の家庭訪問事例が受けているサービス、必要なサービス等について郵送質問紙調査を行い、結果を介護保険該当者、非該当者で支援が必要な人、一人暮らし高齢者または高齢者世帯の3群に分けて分析した。この結果から、要介護者の重症化予防および一人暮らし高齢者等の支援のための保健婦活動のあり方を考察した。
②総合相談窓口と介護保険制度の有機的な連携に関する検討:研修受講生、山梨 県64市町村、特別区、東京都多摩地域31市町の保健婦を対象に、地域の相談窓口体制、相談機能の状況等について郵送質問紙調査を行い、結果を介護保険の対象者、閉じこもり・虚弱高齢者、近隣苦情・多問題家族相談、精神障害者、難病患者、心身障害児、その他の母子保健問題に分け、相談窓口の体制・機能を分析した。この結果から、市町村のタイプごとにシステム、実績、組織等を比較検討し、介護保険の対象とならない人々に対する総合的な相談体制のあり方を考察した。
②総合相談窓口と介護保険制度の有機的な連携に関する検討:研修受講生、山梨 県64市町村、特別区、東京都多摩地域31市町の保健婦を対象に、地域の相談窓口体制、相談機能の状況等について郵送質問紙調査を行い、結果を介護保険の対象者、閉じこもり・虚弱高齢者、近隣苦情・多問題家族相談、精神障害者、難病患者、心身障害児、その他の母子保健問題に分け、相談窓口の体制・機能を分析した。この結果から、市町村のタイプごとにシステム、実績、組織等を比較検討し、介護保険の対象とならない人々に対する総合的な相談体制のあり方を考察した。
結果と考察
①介護保険認定非該当者の重症化予防のための活動に関する検討では、
自治体の規模による差は明確ではなかった。保健婦は、一人暮らし高齢者や高齢者 のみの世帯に対して自立を支援するための訪問を行っており、また介護保険の認定 で該当とはならなかった人々に対して、多くの支援が必要であると判断していた。現在の訪問対象には介護保険該当者がかなり含まれているが、これらの人々や家族 に対しても、自立や生活の質を高めるための指導を行っており、介護保険制度の施 行後も、自治体の保健婦による訪問指導は必要であると考えられた。今回の調査は 対象自治体も少なく、種々のバイアスがあったが、介護保険制度施行前の状況とし て、保健婦の訪問活動の内容的把握は行い得た。保健婦による家庭訪問は、電話相 談等の伸びもあって近年減少しており、介護保険制度による訪問看護が始まると、 さらに減少することが予想される。しかし、人々を介護保険対象とならないように 自立を助け、地域社会での生活を保障することは自治体の保健婦の重要な役割であ る。介護保険制度と連動した保健婦活動の展開のために、保健婦業務の見直しが急 がれる。
②総合相談窓口と介護保険制度の有機的な連携に関する検討では、総合相談窓口 の設置は特別区・政令市に多く、介護保険制度発足後については、まだ分からない という回答が多かった。相談窓口体制の整備は、介護保険の対象高齢者に対しては よく行われているが、閉じこもり・虚弱高齢者の相談窓口はほとんどない等、予防的 対応が必要な人々に対する相談体制が乏しいことが分かった。高齢者に対する相談 窓口は、介護保険制度実施に向けての準備もあって概ねできてはいるが、精神障害 者・難病患者に対してはこれまで保健所が対応してきたこともあり、これからの問 題である。相談機能に配置するマンパワーや相談後の対応に必要なサービスメニュ ーの充実も課題である。特に小規模町村では民間など多面的なサービス提供機関が 不足していることがうかがわれ、相談機能の充実よりサービスの提供体制の整備が 急務であると思われた。
自治体の規模による差は明確ではなかった。保健婦は、一人暮らし高齢者や高齢者 のみの世帯に対して自立を支援するための訪問を行っており、また介護保険の認定 で該当とはならなかった人々に対して、多くの支援が必要であると判断していた。現在の訪問対象には介護保険該当者がかなり含まれているが、これらの人々や家族 に対しても、自立や生活の質を高めるための指導を行っており、介護保険制度の施 行後も、自治体の保健婦による訪問指導は必要であると考えられた。今回の調査は 対象自治体も少なく、種々のバイアスがあったが、介護保険制度施行前の状況とし て、保健婦の訪問活動の内容的把握は行い得た。保健婦による家庭訪問は、電話相 談等の伸びもあって近年減少しており、介護保険制度による訪問看護が始まると、 さらに減少することが予想される。しかし、人々を介護保険対象とならないように 自立を助け、地域社会での生活を保障することは自治体の保健婦の重要な役割であ る。介護保険制度と連動した保健婦活動の展開のために、保健婦業務の見直しが急 がれる。
②総合相談窓口と介護保険制度の有機的な連携に関する検討では、総合相談窓口 の設置は特別区・政令市に多く、介護保険制度発足後については、まだ分からない という回答が多かった。相談窓口体制の整備は、介護保険の対象高齢者に対しては よく行われているが、閉じこもり・虚弱高齢者の相談窓口はほとんどない等、予防的 対応が必要な人々に対する相談体制が乏しいことが分かった。高齢者に対する相談 窓口は、介護保険制度実施に向けての準備もあって概ねできてはいるが、精神障害 者・難病患者に対してはこれまで保健所が対応してきたこともあり、これからの問 題である。相談機能に配置するマンパワーや相談後の対応に必要なサービスメニュ ーの充実も課題である。特に小規模町村では民間など多面的なサービス提供機関が 不足していることがうかがわれ、相談機能の充実よりサービスの提供体制の整備が 急務であると思われた。
結論
介護保険制度の実施を前に、自治体の保健婦が従来担ってきた活動と介護保険 制度とが有機的に連動することは、今後のよりよい地域サービスの提供の上で重要 であることから、家庭訪問指導と総合相談窓口の活動を取り上げ、地域の状況を把 握し、介護保険制度との関連を検討した。この結果、家庭訪問については、介護保 険制度の対象とならない人々に対する健康問題の予防、自立支援、生活の質の向上 に向けた活動が従来通り必要であるが、介護保険該当となる人々に対しても、現在 行っている自立支援や家族の健康管理等の援助、地域生活への援助等が保健婦の役 割として存在することが考えられた。また。相談窓口体制も同様で、介護保険制度 の準備で進められている範囲では、閉じこもりや虚弱な高齢者、精神障害者、難病 患者等の受け入れ窓口とはならず、総合的な窓口体制が必要であるとともに、特に 小規模町村では、サービスの提供体制の整備が急務である。
公開日・更新日
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