文献情報
文献番号
201901018A
報告書区分
総括
研究課題名
公的医療保険における医療技術の評価に関する研究
課題番号
19AA2005
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
岩中 督(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
- 川瀬 弘一(聖マリアンナ医科大学医学部)
- 瀬戸 泰之(東京大学 医学部附属病院)
- 宮田 裕章(慶應義塾大学 医学部)
- 隈丸 拓(東京大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
7,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、医療の効率化の推進等、将来のあるべき姿を踏まえた技術評価のあり方及び具体的な評価手法を検討することにある。特に外科手術の評価方法について、外保連において議論された新たな評価軸に沿った評価方法や施設症例数を含む医療機関の特性などと医療の質の関係を踏まえた評価の可能性などに着目した。
研究方法
研究班では、評価の方法となりえ、かつデータベースなどに記録された情報を用いて実証的に示すことのできる指標を議論した上で、具体的な実証検討の対象として、2018年に保険償還されたロボット支援手術における医療の質の評価そして保険上の施設要件と関連する術者経験症例数と手術アウトカムとの関係を解析した。解析は、National Clinical Database (NCD) に2018年に登録された数の限られた症例データを用いた予備的なものである。
結果と考察
2018年に胃癌・直腸癌に対して実施されNCDに登録されたロボット手術症例を対象に解析を実施した。200人を超える術者の経験症例数と患者背景や腫瘍因子との関係を評価したところ、患者年齢やASA-PSといった背景因子については、経験症例数との明確な関連は認めなかったが、術式やTNM分類などの腫瘍に関連した因子は、明らかな相関があった。手術時間の中央値は経験症例数とともに明確に減少していったが、出血量は全体を通してわずかで、臨床的な意味合いは大きくないことが見込まれた。周術期の死亡もまた頻度が極めて低く、経験症例数との関連を見るにあたっての評価項目としては不適であった。Clavian Dindo 3a以上の術後合併症は一定の頻度で発生が認められ、また評価の正確性からも、適切な指標と考えられた。
結論
実証分析において、症例数の増加と逆相関した周術期合併症発生頻度の減少は、胃癌症例・直腸癌症例のいずれにおいても認められなかった。学会が主導するプロクター制度、施設認定、その他の認定条件及び症例登録制度などが存在する状況においては、保険診療上の施設基準のみならず、学術団体の取組みなどとの組み合わせで、新たな手術手技の安全性が確保されている。新規に承認をうけた手術手技の安全性を確保する上では、このような複合的なアプローチを議論するとともに、大規模で信頼性の高いデータを用いた検証に基づいて適切に評価・調整を行うことが期待される。
公開日・更新日
公開日
2020-10-21
更新日
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