文献情報
文献番号
201901011A
報告書区分
総括
研究課題名
ナショナルデータベース(NDB)データ分析における病名決定ロジック作成のための研究
課題番号
H30-政策-指定-007
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
満武 巨裕(一般財団法人 医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構 研究部)
研究分担者(所属機関)
- 喜連川 優(東京大学生産技術研究所)
- 合田 和生(東京大学生産技術研究所)
- 横田 治夫(東京工業大学情報理工学院)
- 北川 博之(筑波大学計算科学研究センター)
- 櫻井 保志(大阪大学産業科学研究所)
- 豊田 正史(東京大学生産技術研究所)
- 杉山 麿人(国立情報学研究所)
- 小笠原 克彦(北海道大学 大学院保健科学研究院)
- 藤森 研司(東北大学 大学院・医学系研究科)
- 東 尚弘(国立がん研究センター がん対策情報センターがん臨床情報部)
- 大江 和彦(東京大学 医学部附属病院)
- 山本 隆一(一般財団法人医療情報システム開発センター)
- 橋本 英樹(東京大学 大学院医学系研究科)
- 今中 雄一(京都大学 医学研究科)
- 伏見 清秀(東京医科歯科大学)
- 宮田 裕章(慶應義塾大学)
- 津本 周作(島根大学 医学部)
- 松田 晋哉(産業医科大学)
- 中島 直樹(九州大学病院メディカルインフォメーションセンター)
- 永井 良三(自治医科大学)
- 山縣 邦弘(筑波大学)
- 横手 幸太郎(千葉大学)
- 秋下 雅弘(東京大学医学部附属病院)
- 戸谷 義幸(横浜市立大学附属病院)
- 亀井 美和子(日本大学 薬学部)
- 尾島 俊之(浜松医科大学)
- 谷澤 幸生(山口大学 大学院医学系研究科医学専攻)
- 森田 朗(津田塾大学 総合政策学科)
- 野口 晴子(早稲田大学 政治経済学術院)
- 飯島 勝矢(東京大学高齢社会総合研究機構)
- 後藤 励(慶應義塾大学経営管理研究科)
- 野田 光彦(学校法人 埼玉医科大学)
- 佐方 信夫(一般財団法人 医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構 研究部)
- 石川 智基(一般財団法人 医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構 研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
16,818,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、レセプト情報を基にした病名決定ロジックの定義を作成すると同時に、そのプロセスを示すことである。レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)の6年間データ及び保険者から収集した75万人規模の医療レセプトデータを申請者らが構築した「次世代超高速・超学際NDBデータ研究基盤」に保管・利用するし、今回の病名決定ロジックを適用した患者数の算出を行う。
研究方法
各種がん(子宮頸がん、前立腺がん、大腸がん、乳がん、肺がん)、糖尿病(1型糖尿病)、脂質異常症、脳卒中、心不全・虚血性心疾患・急性心筋梗塞、関節リウマチ、透析、高血圧等の患者数の集計を実施する。各種がんは、公衆衛生学・疫学についての専門家、各がんに関する臨床専門家とエキスパートパネルを作成し、病名決定ロジックを作成した。ロジックの作成において、診療行為、医薬品の特定には最新の診療ガイドラインを参照するが、ガイドラインにおける推奨と実臨床の診療行為・医薬品処方には乖離が存在する。こうしたエビデンス診療ギャップが、NDB解析に影響を及ぼさぬようにエキスパートパネルで協議の上、該当疾患患者の可能性を示す診療行為・医薬品処方を特定する。その他の疾患については日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本動脈硬化学会、日本腎臓学会、日本リウマチ学会と連携し、各学会内にワーキンググループを設置する等して、病名コード、処置コード、医薬品コードなどを設定し、検討を進めた。高血圧においては、NDBオープンデータにおいて採用されている都道府県別、年齢階層別といった集計軸に加えて、年齢調整を施した受療率、複数年データの利点を生かした時系列の可視化機能についても検討した。
結果と考察
各種がん、糖尿病(1型糖尿病)、脂質異常症、脳卒中、心不全・虚血性心疾患・急性心筋梗塞、関節リウマチ、透析、高血圧等について試行的に患者数を算出した。そのロジックや集計結果は、資料1を参照されたい。一方で、研究者間での病名ロジックの完成度、検証が十分ではない等の理由から、報告書に掲載できなかった疾患も存在する。本研究において、各学会のワーキンググループおよびエキスパートパネルに共通する課題は、レセ電コードと対応する形での各種病名や医薬品などの国際分類コード( ICD10や解剖治療化学(ATC)分類等))の付与であった。我々は、医薬品マスタのレセ電コードと対応する形での国際分類コード( 解剖治療化学(ATC)分類等))を準備・提供することで、エキスパートパネルおよび学会のワーキンググループのメンバーの医薬品のコード指定の労力が軽減する措置を講じた。しかし、これらコードとの対応は労力と専門知識が必要とされ、病名決定ロジック作成時には継続的に労力が必要となる課題である。そのため、病名や医薬品に対応するコードを公開・共有し更新していくことが望ましい。IDの名寄せ技術を活用することも、正確な患者数を算出する上で必要であった。現在、NDBの識別子のユニーク数はID1が 2.73億件、ID2が2.28億件(NDB 6年分)となる。そのため、識別子遷移グラフ処理による識別子併合を行うことで、日本国民の数に近い1.38億件(人)にまで識別子のユニーク数を併合することができた。個人追跡可能性は、約70%から99%と大幅に向上することになり、患者のダブルカウントの可能性も極めて低いと考えられた。米国ではメディケア加入者に関連が深い23種類の慢性疾患(Chronic Conditions)を対象に病名決定ロジックを医学会と共に開発し、経年追跡調査が可能となっている。台湾では、癌、糖尿病、精神疾患、高額な医療費を要する疾患といった15種類を対象にしている。日本においては米国CMSのChronic Conditionsの可視化指標(有病率、医療費、入院率、再入院率、入院死亡率等)に加えて、都道府県別、年齢階級別、性別の表示に加えて、年齢調整済受療率(都道府県別)、時系列の可視化機能を実現することで、国民に対する情報提供機能としての展開もあると考えられる。
結論
各種がん(子宮頸がん、前立腺がん、大腸がん、乳がん、肺がん)、糖尿病(1型糖尿病)、脂質異常症、脳卒中、心不全・虚血性心疾患・急性心筋梗塞、関節リウマチ、透析、高血圧等の病名ロジックを作成・公開することができた。また、IDの名寄せ技術の開発は、正確な患者数を算出する上で有効であった。各学会のワーキンググループおよびエキスパートパネルに共通する課題は、NDBシステムを運用する上で利用されており電子レセプトマスタにおける網羅性および各種コードとの対応である。そのため、本報告書の資料1で示した様に病名や医薬品に対応するコードおよび推計ロジック等を公開・共有することが望ましい。
公開日・更新日
公開日
2023-06-09
更新日
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