国際的・地域的視野から見た少子化・高齢化の新潮流に対応した人口分析・将来推計とその応用に関する研究

文献情報

文献番号
201901005A
報告書区分
総括
研究課題名
国際的・地域的視野から見た少子化・高齢化の新潮流に対応した人口分析・将来推計とその応用に関する研究
課題番号
H29-政策-指定-003
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
小池 司朗(国立社会保障・人口問題研究所 人口構造研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 透(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 林 玲子(国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部)
  • 小島 克久(国立社会保障・人口問題研究所 情報調査分析部)
  • 岩澤 美帆(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部 )
  • 千年よしみ(国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部)
  • 守泉 理恵(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部 )
  • 石井 太(慶應義塾大学 経済学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
4,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、先進諸国のみならず、新興国においても「ポスト人口転換」とも呼ばれる低出生・低死亡の継続や、国際人口移動の活発化など、国際的な人口動向が変化する一方、国内では継続的な低出生力や人口減少と人口の大都市集中、高齢期の長期化やこれに伴う生活・居住形態の多様化等、少子化・高齢化に関する新たな動きが顕在化してきている。本研究では、このような人口や世帯の新潮流について、国際的・地域的視野を踏まえながら的確に捉えるとともに、国立社会保障・人口問題研究所が行う人口・世帯の将来推計の精度改善及びその応用を目的とした人口学的研究を行うものである。
研究方法
研究は以下の(1)~(3)の3領域に分けて進めた。
(1) 国際的・地域的視野から見た少子化・高齢化の新潮流に対応した総合的な人口・世帯の動向分析
(2) 地域・世帯推計に重点を置いた将来推計モデルの深化に関する基礎的研究
(3) 将来推計を活用した政策的シミュレーションに関する研究
なお、研究全般にわたり、社人研や研究者個人が属する国際的研究ネットワークを最大限に活用し、諸外国や国際機関などと緊密な国際的連携を図って研究を進めた。また、研究所が有する人口・世帯の将来推計に関する研究蓄積を方法論やモデル構築研究に活かすとともに、所内外の関連分野の複数の研究者に研究協力者として参加を要請し、総合的に研究を推進した。
結果と考察
本研究の結果と考察は多岐にわたるため,一部を抜粋して記す。
日本における出生子ども1人の女性に関する分析では,出生子ども数1人の女性は増加しているが、必ずしも子どもは1人が理想だと考えている女性が増えているわけではなく、1子にとどまる理由として、いわゆる「2人目不妊」の問題が想起される身体要因が大きく、次いで社会経済的要因により出産を先送りする出生延期要因が大きいことが分かった。日本人の将来仮定値に同調する外国人年齢別出生率の推計では,間接標準化による市区町別出生率の推計において都道府県の将来出生率を推計した方法を外国人女性に応用することで、全国出生率の中位仮定に同調する2016年~2045年までの、出生順位総数、出生順位別の外国人女性の年齢別出生率の将来値を推計することができた。市区町村別世帯数の将来推計の試みでは,県全体の世帯主率および市区町別男女年齢別人口が所与というタイトな条件のもとでは,5年後の市区町別世帯数の推計精度は全体としては良好であったものの,2010年時点で平均世帯人員の多い地域と少ない地域で相対的に誤差が拡大することとなった。したがって,世帯主率の仮定設定手法には大いに検討の余地があるといえる。外国からの介護人材確保と社会保障制度との関係についての将来人口・社会保障シミュレーションでは,受入れ外国人女性の出生力が滞在期間に応じて変動することは、第二世代以降の将来人口に大きな影響を及ぼしていることから、外国人受入れが公的年金財政に与える影響についてより現実的なシミュレーションを行うためには、具体的なシナリオ設定の検討に加え、滞在期間に応じて受入れ外国人女性の出生力が変動することを考慮するのも重要な点である,等の知見が得られた,
結論
本研究の結論は多岐にわたるため,一部を抜粋して記す。
外国人集住地区の地域分布と特性に関する分析では,非大都市圏の地方都市においても外国人集住地区が形成されつつあることなど,これまで明らかにされることのなかった集住地区の全国的な分布状況が確認された。同様に,インドネシアやベトナム人など,近年増加の著しい東南アジアからの外国人の集住地区居住割合が,中国人や韓国・朝鮮人のそれよりも高い水準にあることが明らかとなった。介護関連の移動では,今後、東京圏など都市圏で高齢者は増え、非東京圏では高齢者が減る自治体も増えてくるなか、地域間の介護需要の格差を考えて、適切な介護提供体制を構築する必要があることが示された。高齢者の居住状態の将来推計では,未婚独居者の増加は、東京都を中心とする大都市圏で特に深刻になると思われることから,よりきめ細かい推計結果によって、家族以外のエージェント間の役割分担を計画する必要があることが示された。外国からの介護人材確保と社会保障制度との関係についての将来人口・社会保障シミュレーションでは,今後、さらなる外国人の日本への移入の拡大が見込まれるなか、外国人が円滑に日本人と共生できる社会を構築する観点からも、受け入れた外国人介護労働者に関する社会保険制度の対応や、滞在期間の長期化に伴う出生力変動などについて具体的なシナリオを設定し、人口や年金に関する長期シミュレーションを行って検討することが重要と結論づけられた。

公開日・更新日

公開日
2020-10-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2020-10-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201901005B
報告書区分
総合
研究課題名
国際的・地域的視野から見た少子化・高齢化の新潮流に対応した人口分析・将来推計とその応用に関する研究
課題番号
H29-政策-指定-003
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
小池 司朗(国立社会保障・人口問題研究所 人口構造研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 透(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 林 玲子(国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部)
  • 小島 克久(国立社会保障・人口問題研究所 情報調査分析部)
  • 岩澤 美帆(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部)
  • 千年 よしみ(国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部)
  • 守泉 理恵(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部)
  • 石井 太(慶應義塾大学 経済学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、先進諸国のみならず、新興国においても「ポスト人口転換」とも呼ばれる低出生・低死亡の継続や、国際人口移動の活発化など、国際的な人口動向が変化する一方、国内では継続的な低出生力や人口減少と人口の大都市集中、高齢期の長期化やこれに伴う生活・居住形態の多様化等、少子化・高齢化に関する新たな動きが顕在化してきている。本研究では、このような人口や世帯の新潮流について、国際的・地域的視野を踏まえながら的確に捉えるとともに、国立社会保障・人口問題研究所が行う人口・世帯の将来推計の精度改善及びその応用を目的とした人口学的研究を行うものである。
研究方法
研究は以下の(1)~(3)の3領域に分けて進めた。

(1) 国際的・地域的視野から見た少子化・高齢化の新潮流に対応した総合的な人口・世帯の動向分析
(2) 地域・世帯推計に重点を置いた将来推計モデルの深化に関する基礎的研究
(3) 将来推計を活用した政策的シミュレーションに関する研究

なお、研究全般にわたり、社人研や研究者個人が属する国際的研究ネットワークを最大限に活用し、諸外国や国際機関などと緊密な国際的連携を図って研究を進めた。また、研究所が有する人口・世帯の将来推計に関する研究蓄積を方法論やモデル構築研究に活かすとともに、所内外の関連分野の複数の研究者に研究協力者として参加を要請し、総合的に研究を推進した。
結果と考察
本研究の成果は多岐にわたることから、3年間全体の研究成果を、結婚・出生の動向分析、人口移動(外国人を含む)の動向分析、家族・世帯および介護の動向分析、次世代推計の開発、外国人受入シミュレーション、の5領域に体系化した。以下、これに基づいて主な研究結果および考察を述べる。
結婚・出生の動向分析として、日本における出生をめぐる行動と意識の長期的変遷に関する分析ほかを行い,1970年代半ばからの少子化過程において、日本では先送り行動が取り戻されずに非婚、無子へとつながる構造が示唆された。人口移動の動向分析として,東日本大震災に伴う日本人の人口移動傾向の変化ほかを行い,津波被害の大きかった市町村のなかで人口移動傾向に大きな差異がみられる要因のひとつとして、市町村の総人口に占める浸水域の人口割合があると推察された。家族・世帯および介護の動向分析として,世帯規模分布の分析ほかを行い,与えられた将来の平均世帯規模を実現する所属世帯規模分布(プロペンシティ)を与える線形変化比モデルを考案し、その有効性を検証した。次世代推計の開発として,都道府県を標準とした市区町村別間接標準化合計出生率と夫婦出生力指標の推計ほかを行い,全国出生率の中位仮定に同調する2016年~2045年までの出生順位総数、出生順位別の都道府県別年齢別出生率の将来値を推計する手法等を開発した。外国人受入シミュレーションとして,外国人介護労働者の社会保険加入シナリオに関する追加的な検討などを行い,滞在期間に応じて外国人の出生力水準が日本人のそれに収束していってしまう場合、将来人口の成長率はそれほど大きいものとはならないこと等が明らかになった。
結論
本研究の結論は多岐にわたることから,一部を抜粋して記す。
人口・世帯の動向は広範な分野の施策に影響を及ぼすことから、本研究で得られた動向分析結果は関連各分野の施策立案に資する基礎資料として活用が可能である。日本における出生をめぐる行動と意識の長期的変遷に関する分析からは,晩婚化の進行や価値観の変化等により結婚したとしても必ずしも出生に結びつかない傾向が次第に強くなりつつあることが示唆された。今後の少子化対策は、このような人口学的観点からの知見を踏まえながら検討されることが望ましい。地域別には、東京都区部における人口移動傾向の変化の分析から、東京圏在住者に占める東京圏出生割合の増大に伴うUターン数の減少の可能性が指摘され,東京圏以外の地域ではIターンの増加に注力していく必要性が示された。世帯・家族や介護の動向に関して、ひとり親の世帯構造の分析では、親と同居することで母子世帯が親から経済的・世話的・時間的な私的支援を受けていることや、ひとり親世帯内部の格差の拡大によって底辺層が貧困や社会的孤立状態に置かれていることが示唆された。今後は,このような実態を踏まえたひとり親支援のあり方が必要となるであろう。さらに,外国人受入れの公的年金財政への影響シミュレーションの成果は、今後の年金制度をはじめとする社会保障制度の検討の基礎資料として活用可能である。外国人が円滑に日本人と共生できる社会を構築する観点からも、受け入れた外国人介護労働者に関する社会保険制度の対応や、滞在期間の長期化に伴う出生力変動などについて具体的なシナリオを設定し、人口や年金に関する長期シミュレーションを行って検討することが重要である。

公開日・更新日

公開日
2020-10-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-10-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201901005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究による人口・世帯に関する一連の将来推計の精度改善は、各種施策の定量的な議論に資するとともに、国民の各種制度に対する信頼性の向上に結びつく効果が期待される。また、今後より関心が高まると考えられる、地域・世帯推計や国際人口移動などに重点を置いた将来推計に関する方法論改善により、厚生労働行政施策のニーズにマッチした地域・世帯に関する詳細な将来推計結果の提供が可能となる。
臨床的観点からの成果
対象外
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
本研究で得られた分析結果は関連各分野の施策立案に資する基礎資料として活用が可能である。たとえば,市区町村別合計出生率の推定では,従来のベイズ推定法に代わる手法として間接標準化を提示している。間接標準化によれば、単年の出生数データからでも市区町村の出生力に相当する指標の算出が概ね可能であり、自治体にとっても各種政策立案に必要な出生力の変化をより明確に捉えられるようになる。
その他のインパクト
社人研の機関誌『人口問題研究』77巻4号ほかにおいて本科研の特集を組んだが、その後、同誌の78巻1号、78巻2号、78巻3号でそれぞれ1本ずつ本科研の論文を掲載するなど、引き続き研究成果の発信に努めている。

発表件数

原著論文(和文)
71件
原著論文(英文等)
5件
その他論文(和文)
22件
その他論文(英文等)
4件
学会発表(国内学会)
71件
学会発表(国際学会等)
37件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
小池司朗
新型コロナウイルス感染拡大に伴う国内人口移動傾向変化の人口学的分析―東京圏を中心として―
人口問題研究 , 78 (4) , 509-527  (2022)
http://doi.org/10.50870/00000437
原著論文2
小池司朗、菅桂太
2015年国勢調査の人口移動集計における不詳按分と按分結果の検証
人口問題研究 , 77 (4) , 293-315  (2021)
http://doi.org/10.50870/00000276
原著論文3
菅桂太
市区町村別生命表作成の課題――小地域における死亡数の撹乱的変動とベイズ推定における事前分布のパラメータを設定する「地域」区分が平均寿命へ及ぼす影響
人口問題研究 , 74 (1) , 3-28  (2018)
原著論文4
石井太、守泉理恵、岩澤美帆、他
国際的視点から見た公的将来人口推計の科学的基礎と推計手法
人口問題研究 , 77 (4) , 335-357  (2021)
http://doi.org/10.50870/00000278
原著論文5
中村真理子
日本における婚前交渉の半世紀;未婚者の性行動はいかに変化してきたのか?
人口問題研究 , 78 (3) , 399-418  (2022)
http://doi.org/10.50870/00000412
原著論文6
守泉理恵
市町村子ども・子育て支援事業計画の策定と実施に関する検証:自治体ヒアリングにもとづく考察
社会保障研究 , 3 (2) , 222-240  (2018)
原著論文7
石井太,小島克久,是川夕
外国人介護労働者受入れシナリオに対応した将来人口変動と公的年金財政シミュレーションに関する研究
人口問題研究 , 74 (2) , 164-184  (2018)
原著論文8
中川 雅貴,小池 司朗
夫婦の出生歴と居住地移動 ―人口動態調査出生票を用いた分析―
人口問題研究 , 78 (2) , 310-326  (2022)
http://doi.org/10.50870/00000365
原著論文9
岩澤美帆,菅桂太,鎌田健司,他
出生力の地域差に対する結婚力効果と夫婦出生力効果―対数線形モデルを利用した市区町村別合計出生率の分解―
人口問題研究 , 78 (1) , 78-105  (2022)
http://doi.org/10.50870/00000329
原著論文10
岩澤美帆,菅桂太,鎌田健司、他
市区町村別合計出生率の推定ー全国および都道府県を標準とした間接標準化法による試みー
人口問題研究 , 77 (4) , 316-334  (2021)
http://doi.org/10.50870/00000277
原著論文11
守泉理恵
日本における無子に関する研究
人口問題研究 , 75 (1) , 26-54  (2019)
原著論文12
林玲子
外国人介護人材の人口的側面とその国際比較
人口問題研究 , 75 (4) , 365-380  (2019)
原著論文13
小池司朗,菅桂太,鎌田健司,他
日本の地域別将来推計人口からみた将来の出生数
人口問題研究 , 76 (1) , 4-19  (2020)
原著論文14
菅桂太,小池司朗,鎌田健司,他
日本の地域別将来推計人口からみた将来の死亡数
人口問題研究 , 76 (1) , 20-40  (2020)
原著論文15
鎌田健司,小池司朗,菅桂太,他
地域別将来推計人口の精度評価―回帰モデルによる推計誤差の空間的特性の検証―
人口問題研究 , 76 (1) , 41-66  (2020)
原著論文16
中川雅貴
外国人集住地区の分布と特性―国勢調査基本単位区レベルの小地域データを用いた分析―
経済学論叢 , 71 (4) , 331-355  (2020)
原著論文17
石井太
将来人口推計と財政検証
社会保障研究 , 4 (4) , 429-444  (2020)
原著論文18
岩澤美帆,余田翔平,別府志海,他
日本人の将来仮定値に同調する外国人年齢別出生率の推計
人口問題研究 , 76 (2) , 201-217  (2020)
原著論文19
小山泰代
平均世帯人員の減少要因の検討
人口問題研究 , 76 (3) , 293-310  (2020)
原著論文20
Kamata, Kenji et al
Demographic Components of Future Population Growth Rates by Prefectures in Japan: Supplementary Materials
IPSS Working Paper Series ,  (32) , 1-38  (2020)
info:doi/10.50870/00000163

公開日・更新日

公開日
2020-10-19
更新日
2023-06-09

収支報告書

文献番号
201901005Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,500,000円
(2)補助金確定額
4,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,157,629円
人件費・謝金 15,900円
旅費 1,712,806円
その他 614,497円
間接経費 0円
合計 4,500,832円

備考

備考
振込手数料が必要であったため,支出の合計がわずかに補助金確定額を上回った。

公開日・更新日

公開日
2021-02-19
更新日
-