文献情報
文献番号
201826020A
報告書区分
総括
研究課題名
岩手県における東日本大震災被災者の支援を目的とした大規模コホート研究
課題番号
H25-健危-指定(復興)-001
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
小林 誠一郎(岩手医科大学)
研究分担者(所属機関)
- 祖父江 憲治(岩手医科大学)
- 酒井 明夫(岩手医科大学)
- 坂田 清美(岩手医科大学 医学部)
- 小笠原 邦昭(岩手医科大学 医学部)
- 滝川 康裕(岩手医科大学 医学部)
- 小山 耕太郎(岩手医科大学 医学部)
- 大塚 耕太郎(岩手医科大学 医学部)
- 鈴木 るり子(岩手看護短期大学 地域看護学専攻)
- 田中 文隆(岩手医科大学 医学部)
- 石橋 靖宏(岩手医科大学 医学部)
- 西 信雄(医薬基盤・健康・栄養研究所 国際栄養情報センター)
- 鈴木 康司(藤田医科大学 医療科学部)
- 米澤 慎悦(岩手県予防医学協会 事業推進部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
75,120,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究班の目的は、平成23年度に研究に同意した被災地住民約1万人に健康調査を実施することにより、健康状態の改善度・悪化度を客観的に評価し、1.被災者に適切な支援を継続的に実施すること、2.震災の健康影響を縦断的に評価できる体制を構築することにある。本年度は、平成23年度から平成30年度にかけて収集してきた健診結果を用いて、現時点で被災地住民に生じている健康課題を明らかにした。
研究方法
本研究班は、東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手県大槌町、陸前高田市、山田町、釜石市平田地区を対象に健康調査を実施した。ベースライン調査は、平成23年度に行われた。対象地域の18歳以上の全住民に健診の案内を郵送し、健診会場にて研究参加の同意を得た。ベースライン調査には10,475人が参加した。平成24年度は7,687人、平成25年度は7,141人、平成26年度は6,836人、平成27年度は6,507人、平成28年度は6,157人、平成29年度は5,893人、平成30年度は5,638人が健診を受診した。
健康調査の項目は、身長、体重、腹囲、握力、血圧、眼底検査、心電図検査、血液検査、尿検査、呼吸機能検査である。また、大槌町では歯科健診も実施している。
問診調査の項目は、被災者の生活や健康状態、心情を考慮し、時期に応じて項目の修正を図ってきた。平成23年度の項目は震災前後の住所、健康状態、治療状況と震災の治療への影響、震災後の罹患状況、食事調査、喫煙・飲酒の震災前後の変化、仕事の状況、睡眠の状況、ソーシャルネットワーク、ソーシャルサポート、現在の活動状況、現在の健康状態、心の元気さ(K6)、震災の記憶(PTSD)、発災後の住居の移動回数、暮らし向き(経済的な状況)、活動状況(65歳以上の受診者を対象)である。以降の調査において、頭痛の問診、震災による死別や家屋被害、現在の居住環境、教育歴、日中の眠気(エプワース眠気尺度)の項目を追加した。
健康調査の項目は、身長、体重、腹囲、握力、血圧、眼底検査、心電図検査、血液検査、尿検査、呼吸機能検査である。また、大槌町では歯科健診も実施している。
問診調査の項目は、被災者の生活や健康状態、心情を考慮し、時期に応じて項目の修正を図ってきた。平成23年度の項目は震災前後の住所、健康状態、治療状況と震災の治療への影響、震災後の罹患状況、食事調査、喫煙・飲酒の震災前後の変化、仕事の状況、睡眠の状況、ソーシャルネットワーク、ソーシャルサポート、現在の活動状況、現在の健康状態、心の元気さ(K6)、震災の記憶(PTSD)、発災後の住居の移動回数、暮らし向き(経済的な状況)、活動状況(65歳以上の受診者を対象)である。以降の調査において、頭痛の問診、震災による死別や家屋被害、現在の居住環境、教育歴、日中の眠気(エプワース眠気尺度)の項目を追加した。
結果と考察
8年間の健康状態、生活習慣、社会的支援の推移を分析したところ、心の健康、睡眠の問題、主観的健康状態、飲酒、喫煙、社会的支援の不足といった多くの指標で、初年度以降、問題を有するものの割合は減少、あるいは横ばいの推移となっていた。一方で、高血圧、糖尿病の有所見者は徐々に増加している傾向がみられた。
現在の居住形態と健康状態、生活習慣、社会的支援の関連性を検討した結果、仮設住宅および災害公営住宅の居住者において、男性では心の健康に問題がある者、脂質異常症有所見者、運動量が少ない者、社会的支援が不足している者の割合が多い傾向が認められた。女性では心の健康や睡眠に問題がある者、高血圧の有所見者、運動量が少ない者、社会的支援が不足している者が多い傾向が認められた。このようにプレハブ・みなし仮設住宅、および災害公営住宅居住者においては、震災前と同じ住居に居住している者とくらべて健康状態、生活習慣、社会的支援の問題が男女ともに多くみられた。また直近の傾向として、災害公営住宅の居住者においてより多くの問題がみられるようになっており、引き続き縦断的な分析、および重点的なケアが必要であると考えられた。
また、これまでに実施された被災者健診の一部または初年度のみしか受診していない住民においては、飲酒や喫煙、食事等の生活習慣が不良であるものや、社会的に孤立している者、主観的健康状態が不良な者が多いことが明らかとなった。
仮設住宅および災害公営住宅の居住者や、健診を継続的に受診していない者について、こうした精神健康や生活習慣、社会的支援の問題に対する支援が引き続き重要であることが示唆された。
現在の居住形態と健康状態、生活習慣、社会的支援の関連性を検討した結果、仮設住宅および災害公営住宅の居住者において、男性では心の健康に問題がある者、脂質異常症有所見者、運動量が少ない者、社会的支援が不足している者の割合が多い傾向が認められた。女性では心の健康や睡眠に問題がある者、高血圧の有所見者、運動量が少ない者、社会的支援が不足している者が多い傾向が認められた。このようにプレハブ・みなし仮設住宅、および災害公営住宅居住者においては、震災前と同じ住居に居住している者とくらべて健康状態、生活習慣、社会的支援の問題が男女ともに多くみられた。また直近の傾向として、災害公営住宅の居住者においてより多くの問題がみられるようになっており、引き続き縦断的な分析、および重点的なケアが必要であると考えられた。
また、これまでに実施された被災者健診の一部または初年度のみしか受診していない住民においては、飲酒や喫煙、食事等の生活習慣が不良であるものや、社会的に孤立している者、主観的健康状態が不良な者が多いことが明らかとなった。
仮設住宅および災害公営住宅の居住者や、健診を継続的に受診していない者について、こうした精神健康や生活習慣、社会的支援の問題に対する支援が引き続き重要であることが示唆された。
結論
岩手県の東日本大震災被災者の生活は落ち着きを取り戻しつつあることがうかがえた。一方、仮設住宅および災害公営住宅居住者や、健診を継続的に受診していない者では、依然として健康状態や生活習慣、社会的支援に問題を抱える住民の割合が多いことなど、引き続き重点的なケアが必要であることが示唆された。今後も調査を継続し、支援を行っていく必要がある。
公開日・更新日
公開日
2019-10-21
更新日
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