文献情報
文献番号
201826017A
報告書区分
総括
研究課題名
エステティックの施術の安全対策及び衛生管理手法の構築のための研究
課題番号
H30-健危-一般-005
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
関東 裕美(公益財団法人日本エステティック研究財団)
研究分担者(所属機関)
- 舘田 一博(東邦大学医学部)
- 古川 福実(和歌山県立医科大学)
- 山本 有紀(和歌山県立医科大学)
- 吉住 あゆみ(東邦大学医学部)
- 鷲崎 久美子(東邦大学医学部)
- 渡辺 麻衣子(国立医薬品食品衛生研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
3,795,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
エステティックにおける健康被害の防止と衛生管理の徹底を目的とする。「健康被害の防止」については、機器類、化粧品及び手技についてリスク評価を行い、現場へフィードバックする。また、アレルギーなど脆弱皮膚の消費者に対する注意喚起に加え、営業施設や技術者に対する啓発活動を充実する。「衛生管理の徹底」では、営業施設における衛生管理の実態を把握し、自主基準である「エステティックの衛生基準」の問題点を抽出、現場の意見を取り入れて改訂を行い、普及啓発する。
研究方法
A 健康被害の実態把握及び原因の究明
1 国民生活センターの健康被害情報の収集
2 皮膚科医師による健康被害患者の原因究明
3 美容ライト機器の安全性試験
4 施術時に使用する化粧品の安全性の検討
5 フェイシャルスキンケアの皮膚に対する影響試験
6 ハイリスク要因を持つ消費者への対策の立案
B 施設の衛生管理の徹底について
1 施術者の手指細菌調査および被験者の顔面皮膚の細菌検査
2 「エステティック衛生基準」に関する意見聴取
3 施設の衛生管理状況の実態把握
1 国民生活センターの健康被害情報の収集
2 皮膚科医師による健康被害患者の原因究明
3 美容ライト機器の安全性試験
4 施術時に使用する化粧品の安全性の検討
5 フェイシャルスキンケアの皮膚に対する影響試験
6 ハイリスク要因を持つ消費者への対策の立案
B 施設の衛生管理の徹底について
1 施術者の手指細菌調査および被験者の顔面皮膚の細菌検査
2 「エステティック衛生基準」に関する意見聴取
3 施設の衛生管理状況の実態把握
結果と考察
A-1 危害相談件数は、過去5年間平均587件だったが、H29は463件だった。美顔が徐々に減少し、痩身、脱毛が増加してきており、熱傷による被害が増加していることから、機器類の健康被害の増加がうかがえる。
A-2 エステティックで健康被害を受けた患者の診察をした場合受傷原因等の報告を依頼しているが、軽微な被害が多いせいか報告は少数である。
A-3 熱傷の報告がある美容ライト機器について試験をした。これは、プローべを顔の皮膚に密着させ光を照射する施術方法である。試験の結果、皮膚生理学や皮膚表面温度からは問題は認めなかったが、清潔操作が十分ではないケースがあり確認が必要と思われる。
A-4 国産化粧品使用が多かった。しわ、シミケア目的で使用されていると思われるレチノール含有化粧品が多く挙げられていた。角層剥離作用があるレチノール含有化粧品の使用は冬季施術後など皮膚バリア機能が低下した状況で使用されると刺激性接触皮膚炎を起こし得るので注意喚起が必要であろう。防腐剤であるフェノキシエタノールについては、多くの化粧品に使用されるようになっているので、今後の皮膚障害報告を検討していく必要がある。
A-5 施術前後で皮膚機能検査測定を実施した。角層水分量については施術前後でばらつきが多く各個人の皮膚機能に応じて施術による保湿効果は異なる結果になることを確認できた。同じ施術により個人での皮膚機能差があることの検証結果について今後は統計処理をして技術者への教育資料を作成する。
A-6 何らかの疾患を持つ消費者が施術を希望するケースもあり、施術前に消費者の身体の状況を詳しく聞き取ることを推奨したが、疾患を抱えている消費者への対応に迷いがあるとの意見があった。今後迷いの生じるケースなどを収集して適切な施術が組み立てられるような指針の作成を検討していく。
B-1 施術者の手洗いについては、実務経験が少ない技術者で手洗いが不十分と思われるケースが見られた。当該施術者より分離された黄色ブドウ球菌は一般的にヒトの皮膚や鼻腔に常在するとされているが、場合によっては感染症の原因になることがある。
被験者の顔面に保菌が示唆された例に関しても同様に、施術者でも同菌の伝播が示唆される
ため、手洗いおよび手指消毒の徹底が必要と考えられた。
B-2 調査結果から「エステティックの衛生基準」改定に向けた問題点を抽出した。「基準通りにすると手間が増えすぎて業務に支障が出る。」「コストがかかりすぎる」で半数近くを占めており、これらの問題点をふまえて「エステティックの衛生基準」の改定素案を作成した。
B-3 都内及び周辺11サロンについて室内空気を収集、営業時の様子等のアンケート調査を実施した。室内空気の浮遊総菌叢の結果から4施設を選び、拭き取り調査等を実施、その結果をもとに清掃、換気等の指導を行い効果測定したいと考えている。
A-2 エステティックで健康被害を受けた患者の診察をした場合受傷原因等の報告を依頼しているが、軽微な被害が多いせいか報告は少数である。
A-3 熱傷の報告がある美容ライト機器について試験をした。これは、プローべを顔の皮膚に密着させ光を照射する施術方法である。試験の結果、皮膚生理学や皮膚表面温度からは問題は認めなかったが、清潔操作が十分ではないケースがあり確認が必要と思われる。
A-4 国産化粧品使用が多かった。しわ、シミケア目的で使用されていると思われるレチノール含有化粧品が多く挙げられていた。角層剥離作用があるレチノール含有化粧品の使用は冬季施術後など皮膚バリア機能が低下した状況で使用されると刺激性接触皮膚炎を起こし得るので注意喚起が必要であろう。防腐剤であるフェノキシエタノールについては、多くの化粧品に使用されるようになっているので、今後の皮膚障害報告を検討していく必要がある。
A-5 施術前後で皮膚機能検査測定を実施した。角層水分量については施術前後でばらつきが多く各個人の皮膚機能に応じて施術による保湿効果は異なる結果になることを確認できた。同じ施術により個人での皮膚機能差があることの検証結果について今後は統計処理をして技術者への教育資料を作成する。
A-6 何らかの疾患を持つ消費者が施術を希望するケースもあり、施術前に消費者の身体の状況を詳しく聞き取ることを推奨したが、疾患を抱えている消費者への対応に迷いがあるとの意見があった。今後迷いの生じるケースなどを収集して適切な施術が組み立てられるような指針の作成を検討していく。
B-1 施術者の手洗いについては、実務経験が少ない技術者で手洗いが不十分と思われるケースが見られた。当該施術者より分離された黄色ブドウ球菌は一般的にヒトの皮膚や鼻腔に常在するとされているが、場合によっては感染症の原因になることがある。
被験者の顔面に保菌が示唆された例に関しても同様に、施術者でも同菌の伝播が示唆される
ため、手洗いおよび手指消毒の徹底が必要と考えられた。
B-2 調査結果から「エステティックの衛生基準」改定に向けた問題点を抽出した。「基準通りにすると手間が増えすぎて業務に支障が出る。」「コストがかかりすぎる」で半数近くを占めており、これらの問題点をふまえて「エステティックの衛生基準」の改定素案を作成した。
B-3 都内及び周辺11サロンについて室内空気を収集、営業時の様子等のアンケート調査を実施した。室内空気の浮遊総菌叢の結果から4施設を選び、拭き取り調査等を実施、その結果をもとに清掃、換気等の指導を行い効果測定したいと考えている。
結論
平成29年度 健康被害が463件国民生活センターに報告されており、熱傷の割合が増加傾向にあった。脱毛や痩身の機器が原因と考えられ、通常の手順や使用方法の逸脱やヒューマンエラーの可能性が考えられた。機器使用においては、通常の使用方法で施術を行うことを徹底したい。機器の皮膚に接する部分の清潔操作への対策も必要と考えている。
衛生関係では、「施設の衛生管理が杜撰」など衛生に関する報告も見られた。エステティックは、直接顧客の皮膚に対して施術を行うことで十分な感染対策が必要である。「エステティックの衛生基準」の普及は行われているが、忙しいことなどを理由に十分に行われていないことがうかがえた。施設において実行しやすく改定し、普及啓発を継続していく。
衛生関係では、「施設の衛生管理が杜撰」など衛生に関する報告も見られた。エステティックは、直接顧客の皮膚に対して施術を行うことで十分な感染対策が必要である。「エステティックの衛生基準」の普及は行われているが、忙しいことなどを理由に十分に行われていないことがうかがえた。施設において実行しやすく改定し、普及啓発を継続していく。
公開日・更新日
公開日
2019-10-02
更新日
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