中規模建築物における衛生管理の実態と特定建築物の適用に関する研究

文献情報

文献番号
201826011A
報告書区分
総括
研究課題名
中規模建築物における衛生管理の実態と特定建築物の適用に関する研究
課題番号
H29-健危-一般-007
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
小林 健一(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 島崎 大(国立保健医療科学院)
  • 金  勲(キム フン)(国立保健医療科学院)
  • 鍵 直樹(東京工業大学)
  • 柳 宇(工学院大学)
  • 東 賢一(近畿大学)
  • 長谷川 兼一(秋田県立大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は、建築物衛生法が適用されない中小建築物の中でも2000~3000 ㎡の中規模建築物における室内環境及び空気衛生環境を中心に、給排水の管理、清掃、ねずみ等ペスト防除といった、建築物衛生法の環境衛生管理基準項目に係る要素の実態と、建築物利用者の健康状況を調査し、特定建築物の適用範囲拡大も含めた適切な衛生管理方策の検討に必要な科学的根拠を明らかにすることを目的とする。
研究方法
(1)室内空気環境の衛生実態
(2)建築物利用者の職場環境と健康に関する実態調査
(3)調査対象建築物の執務環境と建物特性
(4)中規模建築物における貯水槽衛生管理および飲料水水質管理の課題
結果と考察
(1)室内空気環境衛生の実態
 温度については,冬期と夏期の中央値が冬期で24.1℃(中小規模)と24.8℃(特定建築物),夏期で26.5℃(中小)と26.6℃(特定)であり,大きな差が見られなかった。相対湿度について,夏期では規模を問わず概ね良好であった一方,冬期では中小規模ビルに比べ特定建築物の中央値がやや高い値を示すが,いずれも中央値や75%タイル値が40%を下回った。CO2濃度については,季節・規模を問わず概ね良好であった。
(2)建築物利用者の職場環境と健康に関する実態調査
 建物との関係が強く疑われるビル関連症状は,冬期では概して小規模建築物ほど有症率が低下するが有意な差ではなかった。夏期では概して中規模建築物が最も高く,次いで特定建築物,小規模建築物の順であったが,有意な差では無かった。
 ビル関連症状における室内環境要因では,冬期夏期ともに乾きすぎとほこりとの関係がいずれの規模の建築物でもみられた。乾きすぎは,特に冬期で顕著にみられ,夏期では特定建築物のほうが小規模や中規模建築物よりも関係のみられた症状が多かった。また夏期では,特定建築物でじめじめとビル関連症状との関係がみられたが,小規模や中規模建築物では全くみられなかった。
(3)調査対象建築物の執務環境と建物特性
 中小建築物は特定建築物と比べて,「空調方式」が個別方式,「給水方式」には直結方式を採用する割合が高い。
 冬期の室内環境に対して,中小建築物での執務者は温度が低い側に不満を抱く傾向が確認できるものの,苦情を訴えるには至っていない。冬期には「乾きすぎる」との申告が中規模建物で割合が低い。「カビの臭い」については,中規模建築物の方が申告割合は高い結果となった。
 夏期の室内環境に対して,中規模建築物では「空気がよどむ」「じめじめする」「カビの臭い」「その他の不快臭」に対する申告の頻度が,特定建築物よりも高い。これらは,ダンプネスと関連する項目であり,湿度調整が十分に行われていない実態が推察される。一方で「乾きすぎる」については,「中規模建築物」の方が申告の頻度は低くなっており,執務空間における湿度が相対的に高いことが予想される。
(4)中規模建築物における貯水槽衛生管理および飲料水水質管理の課題
 全国45,679施設の特定建築物のうち,H29年度において遊離残留塩素の検査が未実施であった施設は1.5%,水質検査が未実施であった施設は2.7%であり,いずれも過去10年間で最も低い割合であった。
 店舗・旅館・その他の用途における未実施率が比較的高いため,各施設に対して遊離残留塩素検査および水質検査実施のさらなる推進が必要である。用途別では学校のみ2.7%と高く,他の用途は1.5%以下であり,要因として学校施設における夜間や休日の滞水が考えられた。
 貯水槽の清掃については,H29年度に未実施であった施設は1.0%であり,これも過去10年間で最も低い割合となった。水道法上の法的義務のある簡易専用水道の検査受検率は80%弱,義務のない小規模貯水槽水道の検査受検率は3%程度にとどまっていた。
結論
 中小規模建築は建物の規模上、中央式空調よりは個別式が導入されることが多く、運用や管理も専門知識のない在室者が行うことが多いため、環境衛生や運用管理が疎かになる可能性を孕んでいる。例えば、浮遊粉じん濃度は低く保たれているが、カビ・細菌、PM2.5 など新たに考慮する必要がある環境要素ではフィルター性能が劣る中小規模建築でより高い濃度が観測されることがある。また、空調分野における新技術の普及や建物の外皮性能の多様化などから、温度・湿度・気流の測定方法や評価法を再考する必要性がうかがわれる。

公開日・更新日

公開日
2019-08-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-08-27
更新日
2019-10-01

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201826011Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,000,000円
(2)補助金確定額
5,963,000円
差引額 [(1)-(2)]
37,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,243,197円
人件費・謝金 558,494円
旅費 1,585,119円
その他 576,317円
間接経費 0円
合計 5,963,127円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2020-04-07
更新日
-