文献情報
文献番号
201825018A
報告書区分
総括
研究課題名
OECDプログラムにおいてTGとDAを開発するためのAOPに関する研究
課題番号
H30-化学-指定-003
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
小島 肇(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター安全性予測評価部第二室)
研究分担者(所属機関)
- 小川 久美子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 病理部)
- チョウ ヨンマン(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 病理部)
- 西川 秋佳(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 病理部)
- 相場 節也(国立大学法人 東北大学 大学院医学系研究科)
- 大森 清美(神奈川県衛生研究所 理化学部)
- 尾上 誠良(静岡県立大学 薬学部・薬剤学分野)
- 足利 太可雄(国立医薬品食品衛生研究所 安全性予測評価部)
- 杉山 圭一(国立医薬品食品衛生研究所 変異遺伝部)
- 松下 幸平(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
- 山田 隆志(国立医薬品食品衛生研究所 安全性予測評価部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
29,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
動物実験3Rsの国際的な浸透に加えて、実験動物とヒトとの種差等の克服のために、既存の毒性試験法の見直しが進んでいる。経済協力開発機構(OECD)においても、反復投与毒性、生殖発生毒性、感作性、発がん性などの有害性発現経路(AOP)を開発し、動物実験代替法(以下、代替法)を念頭においた試験法ガイドライン(TG)の公定化やin silico法の確立にAOP情報を活用する戦略がある。一方で、毒性情報を網羅した試験法と評価のための統合方式(IATA)を開発し、それに基づく確定方式(DA)により化学物質の安全性評価を推進する戦略がある。DAとは、単独の代替法ではなく、種々の試験データを組み合わせて化学物質の全身毒性を把握しようとする試みであり、OECDではDAの行政的利用が検討されている。このような国際的な潮流に乗り、日本が得意とする分野で主導権を握って、AOPやTGを公定化し、さらにはIATAやDAの開発及び普及に務めることが本研究班の目的である。
研究方法
本研究班では、OECDのAOP開発プロジェクトの中で、化学物質の毒性情報等を集積しながら、免疫毒性、生殖発生毒性、発がん性及び光安全性等に関する日本発のAOP開発を進める。特に、非遺伝毒性発がんは、催乳ホルモン(prolactin)や甲状腺刺激ホルモン(TSH)、甲状腺ホルモン(T4)を含む各種ホルモンレベルの増加と関連しているものも多く、それらは発がん性の主要因子となり得る。そこで、通常の反復投与毒性試験のプロトコルで採取される下垂体、甲状腺などを用いてprolactin、TSH、T4などの発現量の増減を免疫組織化学染色法によって半定量する評価方法の確立を目指す。さらに、腎毒性の作用機構の開発も行う。
これらや既存のAOP情報をもとに開発された皮膚感作性試験代替法ADRA、免疫毒性試験MITA、発生毒性試験スクリーニングHand1-Luc EST、光安全性試験スクリーニングROSアッセイ、LabCyte EPI-MODEL24を用いる腐食性試験代替法、形質転換試験Bhas42法及びラット肝中期発がん性試験について、試験法毎に独立した国内外の専門家による評価を受けた後、TGを開発する。一方で、OECDでの非遺伝毒性発がんIATA及び皮膚感作性DAのTGの開発に関与することを通じて、IATAやDAの国内での普及に務める。
なお、毒性等情報収集として、厚生労働科学研究費補助金化学物質リスク研究事業の総合研究報告書をもとにして、データベースの構築を目指した。
これらや既存のAOP情報をもとに開発された皮膚感作性試験代替法ADRA、免疫毒性試験MITA、発生毒性試験スクリーニングHand1-Luc EST、光安全性試験スクリーニングROSアッセイ、LabCyte EPI-MODEL24を用いる腐食性試験代替法、形質転換試験Bhas42法及びラット肝中期発がん性試験について、試験法毎に独立した国内外の専門家による評価を受けた後、TGを開発する。一方で、OECDでの非遺伝毒性発がんIATA及び皮膚感作性DAのTGの開発に関与することを通じて、IATAやDAの国内での普及に務める。
なお、毒性等情報収集として、厚生労働科学研究費補助金化学物質リスク研究事業の総合研究報告書をもとにして、データベースの構築を目指した。
結果と考察
1.TGの開発
皮膚感作性試験代替法ADRA、光安全性ROSアッセイ及びLabCyte EPI-MODEL24を用いる腐食性試験代替法に関しては、今年度のOECD TG作業グループ(WNT)及び各国専門家との調整を経て、本年4月のWNTにてTG案の採択が内定した。
一方、新たにin vitro免疫毒性評価書の開発及びラット肝中期発がん性試験TGのための申請書をOECDに昨年11月に提出し、in vitro免疫毒性評価書については本年4月にWNTの作業計画に採択された。
2.AOPの開発
本研究班から提案している免疫抑制のAOP154案 ”Inhibition of Calcineurin Activity Leading to impaired T-Cell Dependent Antibody Response”は検討グループにおける内部評価が終了し、外部評価が始まった。他にも光安全性、免疫抑制(IL-2の発現)はAOPの入力段階にあり、これらについては、来年度には内部内部に進むことを期待している。
新たに、免疫毒性で3件、非遺伝毒性発がん13件の申請書をOECDに昨年末に提出した。AOP開発を支援する評価法の確立においては、非遺伝毒性発がん検出のための甲状腺及び下垂体ホルモン等の免疫組織化学染色の条件確立、エピジェニック変異原性のメカニズム解析、腎毒性における尿細管再生機構に関する解析を進めた。
3.IATA及びDAの成立
非発がん性IATAや感作性DAに関するOECD活動に対し、引き続き協力した。
4.毒性等情報収集
平成30年度終了予定の厚生労働科学研究費補助金化学物質リスク研究事業の総合研究報告書をもとにして、データベースのデータ項目の追加を再検討し、フォーマットを作成した。
皮膚感作性試験代替法ADRA、光安全性ROSアッセイ及びLabCyte EPI-MODEL24を用いる腐食性試験代替法に関しては、今年度のOECD TG作業グループ(WNT)及び各国専門家との調整を経て、本年4月のWNTにてTG案の採択が内定した。
一方、新たにin vitro免疫毒性評価書の開発及びラット肝中期発がん性試験TGのための申請書をOECDに昨年11月に提出し、in vitro免疫毒性評価書については本年4月にWNTの作業計画に採択された。
2.AOPの開発
本研究班から提案している免疫抑制のAOP154案 ”Inhibition of Calcineurin Activity Leading to impaired T-Cell Dependent Antibody Response”は検討グループにおける内部評価が終了し、外部評価が始まった。他にも光安全性、免疫抑制(IL-2の発現)はAOPの入力段階にあり、これらについては、来年度には内部内部に進むことを期待している。
新たに、免疫毒性で3件、非遺伝毒性発がん13件の申請書をOECDに昨年末に提出した。AOP開発を支援する評価法の確立においては、非遺伝毒性発がん検出のための甲状腺及び下垂体ホルモン等の免疫組織化学染色の条件確立、エピジェニック変異原性のメカニズム解析、腎毒性における尿細管再生機構に関する解析を進めた。
3.IATA及びDAの成立
非発がん性IATAや感作性DAに関するOECD活動に対し、引き続き協力した。
4.毒性等情報収集
平成30年度終了予定の厚生労働科学研究費補助金化学物質リスク研究事業の総合研究報告書をもとにして、データベースのデータ項目の追加を再検討し、フォーマットを作成した。
結論
昨年度からのOECDへの継続した活動の中、本年度にTGやAOPが採択されたものはなかった。ただし、来年度に3試験法のTG、1件のAOPを成立できる目途がたった。
引き続き、OECDの活動の中で、日本が得意とする分野で主導権を握って、AOPやTGを公定化し、さらにはIATAやDAの開発に協力していく予定である。
引き続き、OECDの活動の中で、日本が得意とする分野で主導権を握って、AOPやTGを公定化し、さらにはIATAやDAの開発に協力していく予定である。
公開日・更新日
公開日
2019-06-17
更新日
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