新型毒性試験法とシステムバイオロジーとの融合による有害性予測体系の構築

文献情報

文献番号
201825016A
報告書区分
総括
研究課題名
新型毒性試験法とシステムバイオロジーとの融合による有害性予測体系の構築
課題番号
H30-化学-指定-001
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
菅野 純(独立行政法人 労働者健康安全機構 日本バイオアッセイ研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 北野 宏明(特定非営利活動法人システム・バイオロジー研究機構)
  • 北嶋 聡(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部)
  • 相崎 健一(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部)
  • 夏目 やよい(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所・バイオインフォマティクスプロジェクト)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
37,694,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、化学物質曝露が実験動物に惹起する遺伝子発現を網羅的にネットワークとして描出する技術と、バイオ・インフォマティクス技術とを実用的に統合し、従来の毒性試験に不確実係数(安全係数)を組み合わせる評価手法を補強するとともに、さらに迅速、高精度、省動物を具現化した新たな有害性評価システムとして従来法を代替することを目標とする。
研究方法
我々が開発したPercellome絶対量化法(BMC Genomics.7,64,2006/特許441507/細胞1個当たりのmRNAコピー数として発現値を得る方法)を用いて化学物質の反復曝露に対する生体の遺伝子発現の反応を解析した結果、毎回の投与の度に、①その都度の変化を示す「過渡反応」と、②回を重ねるに連れて発現値の基線(ベースライン)が徐々に移動する「基線反応」の二つの成分から構成され、単回曝露影響を単純に積算した変化とは異なることが明らかとなった。そこで、過渡反応と基線反応の関連性が観測可能な新型反復曝露実験(4日間の反復曝露を行い、次の日に単回曝露を実施し2、4、8、24時間後に肝の網羅的遺伝子解析を行う)を本年度はイミダクロプリド及び、ジエチルニトロサミンについて実施した(国立医薬品食品衛生研究所の「動物実験の適正な実施に関する規程」を遵守)。また、先行研究で新型反復曝露実験を実施したバルプロ酸ナトリウムについて、ヒストン修飾解析を次世代シーケンサーを用いて行った。並行して、本研究解析に用いるアルゴリズム等を、Percellome技術やシステムバイオロジーに基づいて開発し、独自開発の解析プログラムに実装の上、利用した。
結果と考察
『短期間「新型」反復曝露実験と単回曝露実験データベースの対比による反復曝露毒性予測技術の開発』については、本年度はイミダクロプリド及び、ジエチルニトロサミンに対し「新型」反復曝露実験セットを実施した。先行研究で実施した化学物質に比べると、この2物質は小胞体ストレス系を誘導せず、第Ⅰ相第Ⅱ相代謝酵素系の誘導も軽度であるという特徴を有していた。また両化学物質とも、反復曝露によりそれぞれの特性(神経毒性及び発癌性)に関わるシグナルネットワークが発動することが示された。『化学物質の反復曝露による毒性発現のエピジェネティクス機構解析』においては、バルプロ酸ナトリウムの14日間反復曝露のヒストン修飾解析を行い、有意な変化を示すヒストン修飾部位を抽出した結果、一般認識であるヒストン脱アセチル化酵素1(HDAC1)の阻害はなく、H3K9me3がグローバルに阻害されていた。『システム毒性解析の人工知能(AI)化』においては、AI化が可能な工程として遺伝子発現データから候補遺伝子を抽出する工程を選定して開発を進めた。また解析パイプラインの中核としては、先行研究によるSHOEとその関連ツールを選定して開発を進めた。『Percellome専用解析ソフトウェアの開発・改良』では、Percellomeデータベースから基準となるデータ群を選定し、これを基にした新型反復曝露実験の有意な基線反応を抽出するアルゴリズムを開発して、基線反応を示す遺伝子の自動抽出ソフトウェアを開発した。『Percellomeデータベースを利用した解析パイプライン』では実用的な解析パイプライン整備として、Garuda等の優れた解析ソフトウェアを収集し、それらを用いて実際の解析プロセスを実行して解析パイプラインの動作や性能を評価した。
結論
先行研究での9化学物質に加え、本研究での2化学物質の新型反復曝露時の、過渡反応と基線反応の関連性解析を進めると同時に、化学物質ごとの独特の発現変動情報も蓄積した(これらの知見は新規性が高く、エピジェネティクス機序の関与が示唆される)。
反復曝露による基線反応成立のエピジェネティクス機構解析においては、ヒストン修飾の解析情報を中心に分子機序の解明を進め、H3K9me3が強く阻害されているという新知見を得た。
システム毒性解析の人工知能化については遺伝子発現データから候補遺伝子を抽出する工程のAI化を進め正答率95%以上と良好な成績を得ている。
Percellome専用解析ソフトウェアの開発・改良で今年度開発したソフトウェアにより、新型反復曝露実験から有意な基線反応の抽出工程を自動化する目処が立った。
これら基盤データベースの拡充と解析ソフトウエアの開発・改良により、Percellomeデータベースを利用した実用的な解析パイプラインの構築が進んだ。

公開日・更新日

公開日
2019-06-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-06-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201825016Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
37,694,000円
(2)補助金確定額
37,694,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 15,966,881円
人件費・謝金 0円
旅費 2,493,093円
その他 19,234,026円
間接経費 0円
合計 37,694,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2021-09-07
更新日
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