文献情報
文献番号
201825014A
報告書区分
総括
研究課題名
人工芝グラウンド用ゴムチップの健康リスク評価に関する研究
課題番号
H29-化学-指定-001
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
五十嵐 良明(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
研究分担者(所属機関)
- 河上 強志(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
- 酒井 信夫(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
- 久保田 領志(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
- 井上 薫(国立医薬品食品衛生研究所 安全性予測評価部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
19,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
ゴムチップを使用した人工芝グラウンドは我が国でも増加しており、その健康影響を早急に評価することが求められている。本研究は、ゴムチップを使用した人工芝グランド上で競技する人の健康リスクを評価することを目的として、我が国で使われている人工芝用ゴムチップで検出された化学物質のグラウンド大気中濃度の測定、ゴムチップの溶出試験、さらに各年代のサッカー競技者を想定した曝露シナリオの設定を行い、これらより推定される化学物質の曝露量をその許容値と比較した。
研究方法
揮発性有機化合物(VOCs)は53化合物について、廃タイヤ由来ゴムチップを充填した屋外人工芝グラウンド3か所及び屋内1か所の大気中濃度を調べた。金属類28元素、及びゴム添加剤等42化合物、並びに多環芳香族炭化水素類(PAHs)及び類縁化合物類32化合物の計74種類の準揮発性有機化合物(SVOCs)を対象にゴムチップ中の濃度を測定した。さらに、人工胃液、人工腸液、人工唾液及び人工汗を用いた溶出試験を行った。各年代のサッカー競技者の曝露シナリオを設定して、上記結果をもとに各物質の曝露量を求めた。経口、経皮、吸入経路ごとに平均一日摂取量あるいは曝露濃度を求め、許容値で除してハザード比を求めた。
結果と考察
ベンゼンはグラウンドのいずれの地点においてもWHO欧州地域事務局の環境基準、及び我が国における大気環境基準以下であった。1,3-ブタジエンは検出限界以下、ホルムアルデヒドはWHO欧州のガイドライン値を十分に下回っていた。屋外グラウンドではフィールド内とバックグラウンドにした地点(対照地点)とでVOCs濃度に大きな差は認められなかった。また、屋外及び屋内グラウンドにおいて、いずれもフィールド内と対照地点との間でほとんどのVOCs濃度に大きな差は認められなかった。
金属類は20元素がいずれかの試料で検出された。各金属類の濃度はグラウンド間でほとんど差を認めず、先行研究で収集したグラウンドに充填前のゴムチップの中央値とほぼ同程度であった。人工体液を用いた溶出試験では、人工胃液への溶出が多かった。グラウンドのゴムチップからは15元素が、充填前のゴムチップからは16元素の溶出が検出された。含有量に対して10%を超える溶出率を示す金属類もあったが、それらの溶出量は参考値として比較した土壌汚染対策法の土壌含有量基準や欧州の玩具の安全性規格の移行限度値を大きく下回った。
グラウンドから採取したゴムチップからはゴム添加剤等19化合物、PAHs及びその類縁化合物31化合物が検出され、ほとんどのゴム添加剤等の濃度は、屋内グラウンドから採取した試料の方が屋外の試料よりも高かった。グラウンドから採取した試料、並びに先行研究で収集したグラウンド充填前の8試料について人工体液を用いた溶出試験を実施した。ほとんどの化合物の人工体液中への溶出率はおおむね低く、多くは定量下限値以下であった。
リスク評価の対象とした物質の許容値は、米国有害物質疾病登録局、米国産業衛生専門家会議、米国環境保護庁、日本産業衛生学会の公表情報から得た。各年代のサッカー競技者の体重、皮膚面積、呼吸量、活動日数及び時間、ゴムチップの皮膚付着量及び経口摂取量、ゴムチップ由来PM10濃度のデータ、さらにゴムチップの溶出試験や大気中VOCs濃度の測定結果をもとに曝露シナリオを設定し、各物質の曝露量を求めた。今回、人工芝グラウンドのゴムチップに関連する測定値、及び先行研究で用いたゴムチップ製品の測定値を用いた解析では、許容値を得られたほぼ全ての物質は、いずれの曝露シナリオにおいてもハザード比は1未満であった。また、一部の曝露シナリオでハザード比が1を超えた物質についても、より現実的なシナリオによる評価あるいは毒性機序等に基づく検討の結果、これらの化学物質が日本人サッカー競技者に対し健康影響を及ぼす可能性は低いと判断した。
金属類は20元素がいずれかの試料で検出された。各金属類の濃度はグラウンド間でほとんど差を認めず、先行研究で収集したグラウンドに充填前のゴムチップの中央値とほぼ同程度であった。人工体液を用いた溶出試験では、人工胃液への溶出が多かった。グラウンドのゴムチップからは15元素が、充填前のゴムチップからは16元素の溶出が検出された。含有量に対して10%を超える溶出率を示す金属類もあったが、それらの溶出量は参考値として比較した土壌汚染対策法の土壌含有量基準や欧州の玩具の安全性規格の移行限度値を大きく下回った。
グラウンドから採取したゴムチップからはゴム添加剤等19化合物、PAHs及びその類縁化合物31化合物が検出され、ほとんどのゴム添加剤等の濃度は、屋内グラウンドから採取した試料の方が屋外の試料よりも高かった。グラウンドから採取した試料、並びに先行研究で収集したグラウンド充填前の8試料について人工体液を用いた溶出試験を実施した。ほとんどの化合物の人工体液中への溶出率はおおむね低く、多くは定量下限値以下であった。
リスク評価の対象とした物質の許容値は、米国有害物質疾病登録局、米国産業衛生専門家会議、米国環境保護庁、日本産業衛生学会の公表情報から得た。各年代のサッカー競技者の体重、皮膚面積、呼吸量、活動日数及び時間、ゴムチップの皮膚付着量及び経口摂取量、ゴムチップ由来PM10濃度のデータ、さらにゴムチップの溶出試験や大気中VOCs濃度の測定結果をもとに曝露シナリオを設定し、各物質の曝露量を求めた。今回、人工芝グラウンドのゴムチップに関連する測定値、及び先行研究で用いたゴムチップ製品の測定値を用いた解析では、許容値を得られたほぼ全ての物質は、いずれの曝露シナリオにおいてもハザード比は1未満であった。また、一部の曝露シナリオでハザード比が1を超えた物質についても、より現実的なシナリオによる評価あるいは毒性機序等に基づく検討の結果、これらの化学物質が日本人サッカー競技者に対し健康影響を及ぼす可能性は低いと判断した。
結論
ゴムチップを使用した人工芝グランド上で競技する人の健康リスクを評価することを目的に、実際の人工芝グラウンドでのフィールド上の大気分析、ゴムチップの各種人工体液を用いた溶出試験を行うとともに、各年代のサッカー競技者を想定した曝露シナリオの設定を行った。我が国のゴムチップから検出された化学物質について曝露量を推定し、許容値との比較をした。許容値を得ることができた対象物質については、日本人サッカー競技者に対して、発がん性や刺激性を含む健康リスクに関する懸念は十分低いことが確認できた。米国では調査研究が終了しておらず、新たな知見が公表された場合には、我が国においても必要に応じて再検討することが望ましい。
公開日・更新日
公開日
2019-09-13
更新日
-