室内環境中の化学物質リストに基づく優先取組物質の検索とリスク評価

文献情報

文献番号
201825008A
報告書区分
総括
研究課題名
室内環境中の化学物質リストに基づく優先取組物質の検索とリスク評価
課題番号
H29-化学-一般-004
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
雨谷 敬史(静岡県立大学 食品栄養科学部)
研究分担者(所属機関)
  • 小川 久美子(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
  • 小林 剛(横浜国立大学大学院 環境情報研究院)
  • 久米 一成(東京都市大学 環境学部)
  • 三宅 祐一(静岡県立大学 食品栄養科学部)
  • 高須 伸二(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
6,924,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
室内汚染の問題は、室内空気質ガイドラインの作成によりその一部が解決されたが、室内環境中に存在する化学物質は多種多様であり、建材や家具等から発生する未規制の化学物質の問題が残されている。  
本研究班では、以前、室内に存在する可能性がある化学物質1698種の名称、性状、用途、毒性情報、感作性情報を網羅的に収集した「室内環境中の化学物質リスト1698」を開発した。しかし、このリストには空白があり、懸念が高い物質から空白を埋めていく必要がある。この中でも、難燃剤や殺虫剤はWHOの室内空気質ガイドラインに挙げられている優先度が高い物質である。難燃剤では、これまでの3年間の研究により臭素系難燃剤のリスクより、有機リン系の難燃剤のリスクがより高いことや、新規化合物が続々と使用されていることが判った。そこで、以下の4つのサブテーマa)~d)を連携して進めることにより、リストに基づく優先取組物質の検索と、予備的リスク評価を行うこととした。
研究方法
a-1) 防炎カーテン中リン系難燃剤のハウスダストへの移行メカニズムの解明
 防炎カーテンは3種類使用。難燃剤が室内空気中へ放散した後、ハウスダストに吸着する間接移行実験は、カーテンの上にエミッションセルを置き、恒温槽に入れ、セルの中のPUFを分析した。付着したハウスダストに難燃剤が直接移行する実験は、ハウスダストをカーテン上に散布して恒温槽の中に入れた後、ダストを分析した。両実験とも、GC-MSで分析した。
a-2) 室内空気中のグリオキサールおよびグルタルアルデヒドの測定
パッシブサンプラーを用い、一般住宅4戸で24時間捕集した。捕集後、溶媒抽出してLC-MS/MSで分析した。
b) 新規有機リン系難燃剤のハザード評価
6週齢の雄性CD1マウス各群5匹に生理食塩水に溶解した新規難燃剤PMMMPを100、300又は1000 mg/kg/dayの用量で1日1回4週間強制経口投与した。対照群には生理食塩水を投与した。実験期間中は一般状態を観察するとともに、体重、摂餌量及び摂水量を週1回測定した。投与終了後、麻酔下にて採血し、血清生化学的検査を実施した。剖検時に全身諸器官・組織を摘出し、脳、肺、心臓、胸腺、肝臓、腎臓、脾臓、副腎、精巣に関しては重量測定・病理組織学的検査を実施。
c)室内化学物質のライブラリの情報更新及びスクリーニング評価ツールの作成
 「室内環境中の化学物質リスト1698」の情報の拡充のため、特に外の作業環境基準の情報を追加・更新を行った。 事業者らが任意の物質について、情報を入力してスクリーニング評価できるツールのプロトタイプを作成した。
d)室内・発生源調査
戸建・アパート等7家庭の居室等室内で、室内ハウスダスト調査と、QEESI 問診票による自己診断調査を実施した。ハウスダストは、市販のハンディー掃除機を用いて、室内のダストを夏期、冬期に採取した。また、1 家庭ではエミッションセルをフローリングやカーペット等に設置し、放散する物質の調査を夏期に実施した。
結果と考察
a)リン系難燃剤のハウスダストへの移行は、ダストとカーテンの接触に伴う直接移行が主であることが明らかとなった。また、上記のリストで高懸念物質として挙がったグリオキサールは検出下限値以下、グルタルアルデヒド濃度はいずれも1 µg/m3以下であった。
b)6週齢の雄性CD1マウス各群5匹に生理食塩水に溶解したPMMMPを100、300又は1000 mg/kg/dayの用量で4週間強制経口投与した結果、一般状態の変化は認められなかったが、投与終了後、PMMMP投与群において副腎重量の有意な増加が認められた。今後、病理組織学的検査を実施しPMMMPの生体影響について明らかにする。
c) 室内化学物質ライブラリの構築では、上記リストの情報の拡充を検討した。特に、多様な製品中の化学物質情報を収集・整理し、QSAR情報も活用するなどして評価できる対象物質を増した。さらに、高懸念物質のスクリーニング手法の改良や、事業者らが任意の物質について、情報を入力してスクリーニング評価が出来る簡易なツールのプロトタイプを作成した。
d)ハウスダストの捕集を夏季、冬季で行い、フローリングやカーペットから放散する物質の捕集を行った。現在、その分析法を検討している。
結論
研究2年目の平成30年度は、室内環境中の化学物質リストの拡充に努めると共に、新たな有機リン系難燃剤のハザード評価や発生源評価を進めた。このように、各グループの研究成果を活用することにより、優先的検討対象化合物の選定やその簡易リスク評価につなげたいと考えている。

公開日・更新日

公開日
2019-07-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-07-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201825008Z