ナノマテリアルの吸入曝露によるヒト健康影響の評価手法に関する研究-生体内マクロファージの機能に着目した有害性カテゴリー評価基盤の構築-

文献情報

文献番号
201825007A
報告書区分
総括
研究課題名
ナノマテリアルの吸入曝露によるヒト健康影響の評価手法に関する研究-生体内マクロファージの機能に着目した有害性カテゴリー評価基盤の構築-
課題番号
H29-化学-一般-003
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
相磯 成敏(独立行政法人 労働者健康安全機構 日本バイオアッセイ研究センター 病理検査部)
研究分担者(所属機関)
  • 大西 誠(独立行政法人 労働者健康安全機構 日本バ イオアッセイ研究センター 試験管理部分析室)
  • 石丸直澄(徳島大学大学院 医歯薬学研究部 口腔分子病態学分野)
  • 高橋祐次(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部 第三室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
10,154,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
工業的ナノマテリアル(NM)の非意図的曝露経路であり有害性発現が最も懸念される吸入曝露において、異物除去に重要な役割を果たすマクロファージ(Mφ)のin vivo生体内反応に着目した生体影響を評価することにより、国際的に通用する高速で高効率な有害性スクリーニング評価手法の開発を目的とする。具体的には、肺内に吸引され貪食されたNM の肺胞Mφ胞体内の蓄積様式(長繊維貫通、毛玉状凝集、粒状凝集)と蓄積量を基に、Frustrated phagocytosis誘発の程度に着目したカテゴリー評価基盤の整備を目指して、三種類のモデルNMをマウスに中期吸入曝露を行って得られる肺サンプルについて肺負荷量、病理組織学的評価及び免疫機能評価の観点から有害性発現に連関する要因の分類とその強度スケールの構築を目指す。
研究方法
3種類のモデルNMを各年度に1物質づつ全身曝露によるマウスを用いた吸入実験を実施して、3ヵ年で研究成果を取り纏める計画でH29年度から班研究をスタートさせた。吸入曝露終後経時的に採取した肺サンプルを組織負荷量、病理組織学的評価、免疫機能評価の三方向から解析を行うことで「長繊維貫通様式」、「粒状凝集様式」及び「毛玉状凝集様式」のモデルに特徴的な有害性発現に連関する要因を抽出して、その発現強度からカテゴリー評価の基盤を構築する。H29年度は「長繊維貫通様式」モデルとしたMWNT-7の吸入曝露実験を実施したが、肺での肉芽腫と線維化病変の形成が弱く、明確な実験解析結果を得ることができなかった。H30年度は当初から予定していた「粒状凝集様式」のモデルとした二酸化チタンの実験に加えて、肺に肉芽腫と線維化病変の形成を期待してH29年度よりも粗大な成分が多いMWNT-7の吸入曝露実験を実施した結果、期待通り肺に肉芽腫や腫線維化を起こしたサンプルを解析することができた。また、肺胞内でのマクロファージによる貪食の状態や肺胞内の免疫担当細胞の種類を把握するために気管支肺胞洗浄液の塗末標本の観察を当初の計画に追加した。
結果と考察
本実験の吸入曝露条件では、二酸化チタンを曝露したマウスの肺では肺胞マクロファージの運動機能についての影響はみられていないと考えられた。一方、MWNT-7を曝露したマウスの肺では二酸化チタン曝露と比べてクリアランスされにくいことが示された。 病理組織学的に二酸化チタンの曝露で特徴的な所見は肺に毒性変化が見られないことであり、MWNT-7の曝露で特徴的な所見としては曝露後の早い時期からMWNT-7を巻き込んだ肉芽腫形成とその後の線維化であった。加えて、免疫機能評価でBALFフローサイトメトリー解析での生細胞と肺胞マクロファージの低下、単球、M1及びM2マクロファージ、好酸球の増加、MMP12のmRNA発現増加を抽出した。NMの有害性発現を引き起こす要因の分類として、肺内負荷量の推移、病理学的評価では肉芽腫と線維化病変の形成が候補になると考えられた。免疫機能評価でも、ナノマテリアル暴露後に肺免疫環境の急激な変化が生じている可能性も示唆されることから、肉芽腫形成に係るパラメータについてH30年度のサンプルで追加解析を行って発現強度の把握をしたうえで要因の絞り込みを行う。
結論
NMの有害性発現に連関する要因の分類として、肺内負荷量の推移、病理学的評価では肉芽腫と線維化病変の形成が候補になると考えられた。また、免疫機能評価での要因は、ALFフローサイトメトリー解析での生細胞と肺胞マクロファージの低下、単球、M1及びM2マクロファージ、好酸球の増加、MMP12のmRNA発現増加等の曝露等の変化がT-CNT7だけに認められる変化として抽出できたが、病理組織評価でT-CNT7に認められた肉芽腫形成に係るパラメータについてもH30年度のサンプルで解析を行って、その発現強度を把握したうえで要因の絞り込みを行う。

公開日・更新日

公開日
2019-07-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2019-07-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201825007Z