かかりつけ薬剤師・薬局の多機関・多職種との連携に関する調査研究

文献情報

文献番号
201824022A
報告書区分
総括
研究課題名
かかりつけ薬剤師・薬局の多機関・多職種との連携に関する調査研究
課題番号
H30-医薬-指定-008
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
安原 眞人(帝京大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
  • 長谷川 洋一(名城大学 薬学部)
  • 赤池 昭紀(京都大学 薬学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
9,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 わが国は、地域包括ケアシステムによる医療・介護の総合的な展開において質が高く良質な医療提供体制の構築を推進しているが、適切な薬物療法を提供するためには、薬局や薬剤師等が、医療の高度化にも対応できる専門性を持ちながら、多職種と連携することが必要となる。近年、提唱されている「プロトコールに基づく薬物治療管理」(PBPM)は、医療機関と薬局の連携にも効果的な枠組みである。本研究では、地域包括ケアシステムの下で、かかりつけ薬剤師・薬局が、多職種・多機関と連携したPBPMに基づく高度薬学管理機能を患者に対して発揮する方策を検討し、その実践によるアウトカムを評価検討する。また、二つの分担研究班では、今後の薬剤師の需給見通しと薬剤師に係る各種認定制度、登録販売者のあり方についてそれぞれ検討する。
研究方法
 日本医療薬学会、日本臨床腫瘍薬学会、日本病院薬剤師会、日本薬剤師会の4団体を中心に研究班を編成し、先行研究となる「薬剤師が担う医療機関と薬局間の連携手法の検討とアウトカムの評価研究」で開始した2種類の経口抗がん薬(S-1、カペシタビン)に関するPBPMの実証研究を倫理審査を経て継続するとともに、実施地域の拡大を図った。研究対象薬剤の拡大に向けて副作用確認の手引きやトレーシングレポートを整備した。薬局の情報共有の現状を把握するため、平成30年12月末に全国の5838薬局に調査票を送付し、平成31年1月末までに書面もしくはWeb入力により寄せられた回答を集計した。 2043年まで25年間の薬剤師の需給動向を予測するために、今後の処方箋枚数、病床数の変動についての推計から薬剤師需要を予測し、直近3年間の薬剤師国家試験の合格者数の傾向と今後の大学院学予定者数の見込みを日本人の死亡率で補正して薬剤師の供給数を予測した。また、職域毎の需給要因を把握するためにフォーカスインタビューを実施した。
登録販売者試験の実施者である都道府県からの意見を収集し、「試験問題の作成に関する手引き」を見直した。薬局開設者、店舗販売業、配置販売業者を対象に登録販売者の研修に関するアンケートを実施した(平成31年1月~3月)。また、登録販売者の外部研修実施機関に対してもアンケートを実施した(平成31年2月~3月)。

結果と考察
PBPMによる外来抗がん薬治療管理システムをより多種類の経口抗がん薬に適用できるよう副作用確認の手引きやトレーシングレポートを整備した。長崎大学病院と長崎県薬剤師会会員薬局の連携では、地域的な広がりをもってPBPMによる経口抗がん薬治療管理が可能であることが示された。薬局の情報共有に関するアンケート調査では、1927件(回収率33%)の回答が寄せられた。薬剤師が調剤を行う上で必要とする情報と入手出来ている情報量とのギャップが窺われ、地域での情報連携において施設間の著しい格差の存在が推察された。
 薬剤師の需給動向について、薬剤師の総数としては、今後数年間は需要と供給が均衡している状況が続くが、長期的には供給が需要を上回ることが見込まれる。この推計は薬局や医療機関における薬剤師の業務の実態が現在と変わらない前提で推計したものであり、今後、薬剤師に求められる業務への対応や調剤業務等の効率化等の取組によって、薬剤師の必要性は変わりうるものであることに留意する必要がある。また、将来的な大学の入学者数・卒業者数、国家試験の合格状況によって供給は変動しうるものである。今回の供給数は、今後の人口減少社会を踏まえ、大学進学予定者数の減少予測をもとに推計しているが、薬剤師総数の観点では、今後、現在の水準以上に薬剤師養成が必要となる状況は考えにくい。さらに、地域での偏在も考えられるため、今後の人口減少社会における薬剤師の需要の変化も踏まえつつ、詳細な需給動向も今後検討すべきである。
登録販売者については、「試験問題の作成に関する手引き」を見直した。店舗販売業者等へのアンケートから、登録販売者全員に研修を受講させる義務があることは認識されているものの、外部研修後の習得状況の確認までは必ずしも行われていない状況が示された。外部研修実施機関に対するアンケートでは、厚生労働省のガイドラインが遵守されるよう更なる周知徹底が必要と考えられた。
結論
PBPMによる外来経口抗がん薬治療管理は医療機関と地域に分散する薬局間の連携にも適用可能である。薬局の情報連携の現状には施設間で格差が存在し、多職種・多機関との連携に向けて標準化が必要である。薬剤師の需給動向について、薬剤師の総数としては、今後数年間は需要と供給が均衡している状況が続くが、長期的には供給が需要を上回ることが見込まれる。登録販売者の資質向上に向けて、試験問題作成に関する手引きを見直し、登録販売者の外部研修について改善すべき点を明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2019-06-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201824022Z