薬物乱用・依存状況等のモニタリング調査と薬物依存症者・家族に対する回復支援に関する研究

文献情報

文献番号
201824003A
報告書区分
総括
研究課題名
薬物乱用・依存状況等のモニタリング調査と薬物依存症者・家族に対する回復支援に関する研究
課題番号
H29-医薬-一般-001
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
嶋根 卓也(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 松本 俊彦(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)
  • 庄司 正実(目白大学人間学部)
  • 和田 清(埼玉県立精神医療センター依存症治療研究部)
  • 近藤あゆみ(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)
  • 引土 絵未(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)
  • 原 恵子(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター病院 薬剤部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
13,796,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
研究2は、飲酒・喫煙・薬物乱用に関する全国中学生意識・実態調査により、青少年における薬物乱用の状況、薬物乱用に関連する知識の周知状況などを明らかにすることを目的とした。
研究3は、全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患の実態調査を実施し、精神科医療施設における薬物乱用・依存患者の実態について明らかにすることを目的とした。
研究4は、全国の児童自立支援施設における薬物乱用・依存の意識・実態調査により、非行児童における薬物乱用の実態について明らかにすることを目的とした。
研究5は、薬物使用のモニタリング調査に関する国際比較研究の一環として、台湾を事例として国際シンポジウムを開催した。
研究6は、精神保健福祉センターにおける家族心理教育プログラムの効果を検証することを目的とした。
研究7は、民間支援団体で導入されている治療共同体(TC)エンカウンター・グループの有効性を評価することを目的とした。
研究8は、処方箋乱用に対する予防プログラムとして、精神科病院薬剤部と地域の調剤薬局との連携モデルの構築を検討することを目的とした。
研究方法
研究2:自記式質問紙調査法(全国規模)
研究3:診療録からの転記調査(全国規模)
研究4:自記式質問紙調査法(全国規模)
研究5:国際シンポジウムの開催
研究6:縦断的調査によるプログラム効果評価
研究7:縦断的調査によるプログラム効果評価
研究8:自記式質問紙調査法
結果と考察
研究2:対象校240校のうち、183校(実施率76.3%)から合計71,351名の有効回答を得た(想定生徒数の61.9%)。本調査は、1996年より隔年で実施され、今回で第12回目の調査となった。2016年から2018年にかけて飲酒・喫煙の生涯経験率はいずれも減少したが、有機溶剤および危険ドラッグは増加し、大麻および覚せい剤は横這いで推移していた。

研究3:今年度の調査では、対象施設1566施設のうち、1264施設(80.7%)の協力を得て、246施設(15.7%)の施設から総計2767例の薬物関連精神疾患症例が報告された。今年度調査では、危険ドラッグ関連精神疾患症例の減少が前回調査に引き続いて顕著であり、危険ドラッグ乱用問題が終息に向かっていることがうかがわれた。一方、最近の乱用が認められる薬物関連精神疾患症例のなかでは、市販薬と大麻の関連精神疾患症例の割合が増加傾向を呈しており、今後も慎重な注視が必要であると考えられた。

研究4 回答が得られた施設は41施設であった(施設回収率71.9%)。最終的調査対象者数は826人(男性618人、女性208人)であった。今回有機溶剤・ブタンが乱用薬物として比較的多く用いられており、また医薬品乱用も多いことが示された。

研究5:わが国は台湾に対して、NPS対策についての知見を提供し、台湾はわが国についてHIV感染対策としてのHarm Reduction政策についての知見を提供するという相互に学ぶシンポジウムを開催した。

研究6:家族支援によって家族の健康状態、家族と本人との関係性や本人に対する感じ方、本人の治療支援状況が改善されることが示されるとともに、家族心理教育プログラムへの参加がこれらの良い変化を促進することの可能性が示され、個別・集団を合わせた家族支援の重要性を裏付けるものとなった。

研究7:本研究では、民間支援団体ダルクにおける回復プログラムとして、新たに導入されつつある治療共同体エンカウンター・グループに着目し、新たに対照群を設定した効果検証を実施した。介入群では精神的健康度が高まっていることが示唆され、治療共同体エンカウンター・グループ自体の効果について支持する1つの結果であると考えられる。

研究8:医薬品の乱用歴のある入院中の患者が、退院後に利用する薬局薬剤師と共有したい情報を調査することで、情報提供書を用いて薬薬連携する際に共有可能と思われる情報を絞り込むことが出来た。
結論
1.危険ドラッグ乱用問題が終息に向かっていることが、複数の疫学調査により実証された。
2.一般住民においては、大麻乱用者の増加が報告されているが、全国の青少年においては、大麻の乱用拡大は確認できなかった。一方で、大麻使用を肯定する考えが増えており、今後の動向に注意が必要である。
3.精神科医療施設の薬物関連精神疾患患者においては、市販薬症例および大麻症例の割合が増加していた。
4.民間支援団体ダルクへの導入が進んでいる回復プログラム(治療共同体エンカウンター・グループ)は、薬物依存症者の精神的健康度を高め、精神保健福祉センターで導入されている家族心理教育プログラムは、家族の健康状態、家族と本人との関係性や本人に対する感じ方、本人の治療支援状況が改善されることが実証された。

公開日・更新日

公開日
2019-05-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2019-05-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201824003B
報告書区分
総合
研究課題名
薬物乱用・依存状況等のモニタリング調査と薬物依存症者・家族に対する回復支援に関する研究
課題番号
H29-医薬-一般-001
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
嶋根 卓也(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 松本 俊彦(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部 )
  • 庄司 正実(目白大学人間学部)
  • 和田 清(埼玉県立精神医療センター依存症治療研究部)
  • 近藤 あゆみ(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部 )
  • 引土 絵未(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部 )
  • 原 恵子(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター病院 薬剤部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
研究1は、薬物使用に関する全国住民調査により、一般住民における医薬品の使用を含めた薬物使用の実態を調べることを目的とした。
研究2は、飲酒・喫煙・薬物乱用に関する全国中学生意識・実態調査により、青少年における薬物乱用の状況、薬物乱用に関連する知識の周知状況などを明らかにすることを目的とした。
研究3は、全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患の実態調査を実施し、精神科医療施設における薬物乱用・依存患者の実態について明らかにすることを目的とした。
研究4は、全国の児童自立支援施設における薬物乱用・依存の意識・実態調査により、非行児童における薬物乱用の実態について明らかにすることを目的とした。
研究5は、薬物使用のモニタリング調査に関する国際比較研究の一環として、台湾を事例として国際シンポジウムを開催した。
研究6は、精神保健福祉センターにおける家族心理教育プログラムの効果を検証することを目的とした。
研究7は、民間支援団体で導入されている治療共同体(TC)エンカウンター・グループの有効性を評価することを目的とした。
研究8は、処方箋乱用に対する予防プログラムとして、精神科病院薬剤部と地域の調剤薬局との連携モデルの構築を検討することを目的とした。
研究方法
研究1:自記式質問紙調査法(全国規模)
研究2:自記式質問紙調査法(全国規模)
研究3:診療録からの転記調査(全国規模)
研究4:自記式質問紙調査法(全国規模)
研究5:国際シンポジウムの開催
研究6:縦断的調査によるプログラム効果評価
研究7:縦断的調査によるプログラム効果評価
研究8:自記式質問紙調査法
結果と考察
研究1:薬物使用の生涯経験率は、大麻1.4%、有機溶剤1.1%、覚せい剤0.5%、コカイン0.3%、危険ドラッグ0.2%であった。大麻の生涯経験率が上昇し、大麻の生涯経験率はモニタリング期間中で最も高い値となった(2009年と同率)。推計使用人口は、約133万人であった。
研究2: 対象校240校のうち、183校(実施率76.3%)から合計71,351名の有効回答を得た。2016年から2018年にかけて飲酒・喫煙の生涯経験率はいずれも減少したが、有機溶剤および危険ドラッグは増加し、大麻および覚せい剤は横這いで推移していた。
研究3:今年度調査では、危険ドラッグ関連精神疾患症例の減少が前回調査に引き続いて顕著であり、危険ドラッグ乱用問題が終息に向かっていることがうかがわれた。一方、最近の乱用が認められる薬物関連精神疾患症例のなかでは、市販薬と大麻の関連精神疾患症例の割合が増加傾向を呈しており、今後も慎重な注視が必要であると考えられた。
研究4:有機溶剤・ブタンが乱用薬物として比較的多く用いられており、また医薬品乱用も多いことが示された。
研究5:わが国は台湾に対して、NPS対策についての知見を提供し、台湾はわが国についてHIV感染対策としてのHarm Reduction政策についての知見を提供するという相互に学ぶシンポジウムを開催した。
研究6:家族支援によって家族の健康状態、家族と本人との関係性や本人に対する感じ方、本人の治療支援状況が改善されることが示されるとともに、家族心理教育プログラムへの参加がこれらの良い変化を促進することの可能性が示された。
研究7:治療共同体エンカウンター・グループに着目し、新たに対照群を設定した効果検証を実施した。介入群では精神的健康度が高まっていることが示唆され、治療共同体エンカウンター・グループ自体の効果について支持する1つの結果であると考えられる。
研究8:医薬品の乱用歴のある入院中の患者が、退院後に利用する薬局薬剤師と共有したい情報を調査することで、情報提供書を用いて薬薬連携する際に共有可能と思われる情報を絞り込むことが出来た。
結論
1)危険ドラッグ乱用問題が終息に向かっていることが、複数の疫学調査により実証された。
2)一般住民において大麻使用者の増加が確認された。これまで最も多かった有機溶剤に代わり、国内で最も乱用される薬物は大麻となった。推計使用者人口は約133万人であった。
3)青少年においては、大麻の乱用拡大は確認できなかった。一方で、大麻使用を肯定する考えが増えており、今後の動向に注意が必要である。
4)精神科医療施設の薬物関連精神疾患患者においては、市販薬症例および大麻症例の割合が増加していた。
5)民間支援団体ダルクへの導入が進んでいる回復プログラム(治療共同体エンカウンター・グループ)は、薬物依存症者の精神的健康度を高め、精神保健福祉センターで導入されている家族心理教育プログラムは、家族の健康状態、家族と本人との関係性や本人に対する感じ方、本人の治療支援状況が改善されることが実証された。

公開日・更新日

公開日
2019-05-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201824003C

収支報告書

文献番号
201824003Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
14,000,000円
(2)補助金確定額
13,999,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,565,142円
人件費・謝金 2,416,381円
旅費 1,581,661円
その他 8,232,735円
間接経費 204,000円
合計 13,999,919円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2019-09-10
更新日
2020-05-19