レポーター遺伝子導入動物を用いたクロロプロパノール類の発がん機序の解明

文献情報

文献番号
201823035A
報告書区分
総括
研究課題名
レポーター遺伝子導入動物を用いたクロロプロパノール類の発がん機序の解明
課題番号
H30-食品-若手-001
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
高須 伸二(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
研究分担者(所属機関)
  • 松下 幸平(国立医薬品食品衛生研究所 病理部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1,3-dichloro-2-propanol (1,3-DCP)は主に酸加水分解植物性たん白を原材料としたしょうゆ等の調味料の原材料やチーズ,穀物加工品など種々の食品に含まれる物質である.1,3-DCPはラットにおいて肝臓および腎臓等に明確な発がん性を示すものの,遺伝毒性を含む発がん機序に関する情報は限定的である.本研究では,レポーター遺伝子導入動物であるgpt deltaラットを用いた遺伝毒性・発がん性包括的検索モデル及びgptラットを用いた肝中期遺伝毒性・発がん性試験法(GPGモデル)による1,3-DCPの発がん機序の解明を目指す。
研究方法
遺伝毒性・発がん性包括的検索モデルによる検索は,6週齢雄性gpt deltaラットに1,3-DCPを27, 80および240 mg/Lの用量で13週間飲水投与し,投与終了後に全身諸器官・組織を摘出した.GPGモデルによる検索では,至適投与用量を決定するとともに,1,3-DCPの毒性プロファイルを検索する目的で,6週齢雄性F344ラットに1,3-DCPを25,50及び100 mg/kg体重の用量で28日間強制反復経口投与し,投与終了後に血液学的検査,血清生化学的検査及び病理組織学的検査を実施した.
結果と考察
遺伝毒性・発がん性包括的検索モデルでは,6週齢の雄性gpt deltaラットに1,3-DCPを27, 80および240 mg/Lの用量で13週間飲水投与した結果,肝臓及び腎臓の器官重量は1,3-DCP投与群において有意に増加し,用量依存的な変化が認められた.GPGモデルによる検索では,6週齢雄性F344ラットに1,3-DCPを25, 50及び100 mg/kg体重の用量で28日間強制反復経口投与した結果,投与開始2日後に100 mg/kg体重群の全例が死亡あるいは切迫屠殺となった.血液学的検査では25及び50 mg/kg体重群において貧血を示唆する赤血球系パラメータの変動がみられ,血清生化学的検査では50 mg/kg体重群においてアラニントランスアミナーゼの上昇がみられた.25及び50 mg/kg体重群において肝臓の絶対及び相対重量の有意な上昇が認められた.病理組織学的検索では,100 mg/kg体重群の肝臓に重度な小葉中心性肝細胞壊死が認められ,死因は急性肝障害であると考えられた.また,100 mg/kg体重群では心臓,鼻腔及び腎臓に毒性影響が認められた.25及び50 mg/kg体重群の肝臓において肝細胞の単細胞壊死が小葉中心帯に認められた.ラット肝前腫瘍性病変マーカーであるglutathione S-transferase placental form(GST-P)免疫染色の結果,25及び50 mg/kg体重群の肝臓において典型的な前腫瘍性病変は認められなかったものの,小葉中心帯の肝細胞が陽性を示し,同部位ではKi67陽性肝細胞も多数みられたことから,GST-P発現と細胞増殖との関連が疑われた.
結論
遺伝毒性・発がん性包括的検索モデルでは,gpt deltaラットに発がん用量の1,3-DCPを13週間反復投与した結果,肝臓及び腎臓重量は1,3-DCP投与群において有意に増加し,用量依存的な変化が認められたことから,投与に起因する変化である可能性が考えられた.今後,肝臓及び腎臓を用いたレポーター遺伝子変異頻度解析を実施し,発がん標的臓器における遺伝毒性の関与を明らかにする.GPGモデルによる検索では,野生型F344ラットを用いた1,3-DCPの28日間反復投与実験により,1,3-DCPの毒性プロファイルを明らかにした.また,GPGモデルの投与用量を50 mg/kg体重に決定した.

公開日・更新日

公開日
2021-11-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-11-09
更新日
2024-05-10

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201823035Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,000,000円
(2)補助金確定額
8,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 6,451,061円
人件費・謝金 0円
旅費 68,816円
その他 1,480,123円
間接経費 0円
合計 8,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2020-10-02
更新日
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