全ゲノム情報を用いた腸管出血性大腸菌サーベイランス実用化に関する研究

文献情報

文献番号
201823032A
報告書区分
総括
研究課題名
全ゲノム情報を用いた腸管出血性大腸菌サーベイランス実用化に関する研究
課題番号
H29-食品-若手-009
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
李 謙一(国立感染症研究所 細菌第一部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
2,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
腸管出血性大腸菌(enterohemorrhagic Escherichia coli: EHEC)は、日本において年間3,000名以上の感染者が報告されており、反復塩基型別(MLVA)法などの分子疫学手法でのサーベイランスが行われている。本研究では、このようなEHEC全国サーベイランスの高精度化を目的として行った。そのために、サーベイランスの基盤的情報整備のためにmutSの欠失頻度の測定、同一患者由来株の解析および非メジャー血清群のゲノム解析を行った。
研究方法
SNP解析に影響を与える因子の解析として、EHEC計10株の長期的な保存によるmutS遺伝子等の欠失頻度の測定、および同一患者由来株のSNPおよび保有遺伝子の解析を行った。非メジャー血清群の解析として、O69計10株のWGS解析を行った。
結果と考察
mutSの欠失頻度測定では、室温での1年間の保存において同遺伝子の欠失は認められなかったが、stx遺伝子は最大で16.7%の頻度で脱落していた。同一患者におけるSNP蓄積頻度の推定では、0-7か所のSNPが認められ、既報の塩基置換速度の推定よりも高い値が出ることが示された。O69計10株のWGS解析では、複数のクローナルな集団が見出された。
結論
以上の結果から、WGSを用いたEHECサーベイランスにおける基盤となるような知見が得られたといえる。

公開日・更新日

公開日
2019-12-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201823032B
報告書区分
総合
研究課題名
全ゲノム情報を用いた腸管出血性大腸菌サーベイランス実用化に関する研究
課題番号
H29-食品-若手-009
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
李 謙一(国立感染症研究所 細菌第一部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
腸管出血性大腸菌(enterohemorrhagic Escherichia coli: EHEC)は、日本において年間3,000名以上の感染者が報告されており、反復塩基型別(MLVA)法などの分子疫学手法でのサーベイランスが行われている。本研究では、このようなEHEC全国サーベイランスの高精度化を目的として行った。そのために、サーベイランスの基盤的情報整備のためにmutSの欠失頻度の測定および非メジャー血清群のゲノム解析、実用化のためにコアゲノムMLSTなどの解析パイプラインの確立を行った。
研究方法
SNP解析に影響を与える因子の解析として、EHEC計10株の長期的な保存によるmutS遺伝子等の欠失頻度の測定、および同一患者由来株のSNPおよび保有遺伝子の解析を行った。非メジャー血清群の解析として、代表株1株の完全長ゲノム配列を決定するとともに、O69計10株のWGS解析を行った。サーベイランスに有用な解析手法として、core genome multi-locus sequence typing (cgMLST) 解析プログラムを確立するとともに、最適なアセンブラーなどの条件設定を行った。
結果と考察
mutSの欠失頻度測定では、室温での1年間の保存において同遺伝子の欠失は認められなかったが、stx遺伝子は最大で16.7%の頻度で脱落していた。同一患者におけるSNP蓄積頻度の推定では、0-7か所のSNPが認められ、既報の塩基置換速度の推定よりも高い値が出ることが示された。O69の完全長ゲノム配列を決定した結果、染色体に加えて3種のプラスミドを保有することが明らかとなった。このうち、最も巨大な97 kbpのプラスミドは各種病原性遺伝子を保有しており、病原性プラスミドと考えられた。本配列を参照配列として計10株の国内O69株のSNP解析を行った結果、O157 Sakai株を参照配列とした場合よりも多数のSNPが認められ、複数のクローナルな集団が見出された。cgMLST解析の検討では、SPAdesが最も適するアセンブラーと考えられた。本研究で確立したcgMLST解析を別事業で確立した in silico 型別プログラムと統合することで、自動解析パイプラインが確立された。
結論
以上の結果から、WGSを用いたEHECサーベイランスの際のSNPの解釈に有用な複数の知見が得られた。本結果は、国立感染症研究所などの国立機関および地方衛生研究所等などの地方の研究・検査機関でWGS解析を行う際の有用な情報となると考えられる。また、解析パイプラインは必要に応じて地方衛生研究所等の研究者に供与しており、地方自治体でのサーベイランス精度向上にも寄与すると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2019-12-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201823032C

収支報告書

文献番号
201823032Z