食品中の放射性物質濃度の基準値に対する放射性核種濃度比の検証とその影響評価に関する研究

文献情報

文献番号
201823029A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中の放射性物質濃度の基準値に対する放射性核種濃度比の検証とその影響評価に関する研究
課題番号
H30-食品-指定-004
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
明石 真言(国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構 本部放射線緊急時支援センター)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋 知之(京都大学 複合原子力科学研究所)
  • 塚田 祥文(福島大学 環境放射能研究所)
  • 青野 辰雄(量子科学技術研究開発機構 放射線医学総合研究所 福島再生支援本部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
16,266,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
東京電力福島第一原子力発電所事故(FDNPS)により食品の摂取による内部被ばくが懸念され、厚生労働省は2012年4月以降、食品からの内部被ばくを年間線量1 mSvとして、導出された基準値を適用している。この基準値は、対象となる放射性Cs以外の核種(Sr-90、Ru-106、Pu)については、137Csとの放射能濃度比から、これらの核種の濃度を推定し、設定された。食品中の放射性物質の基準値に対して、国民が安心・安全を得ることができることそして国内の食品の安全に関する根拠を示すことを目的に、食品中の放射性物質の基準値の妥当性について検証を行ない、さらに得られた成果は学術論文だけでなく、福島県民や一般向けのセミナーや講演を通して理解が深まることを目的とした。
研究方法
営農再開地域、周辺地域等における農作物中の放射性物質の濃度測定を行い、これまでに求めたデータと比較すると共に、全国のモニタリング結果と比較・検証した。また福島県内に流通する水産物を入手し、これら水産物の放射性物質濃度と安定元素の測定を行った。福島県産品の食品(農産物)の放射性Cs濃度およびSr-90濃度を用いて内部被ばく線量評価を試み、介入線量レベルとして設定された年間1mSvよりも低い値であり、現行の基準値によって食品中の放射性物質について安全性が十分に確保されているかを確認した。また食品中放射性物質濃度等に関する知見の評価検討のための基礎資料について取りまとめも行った。
結果と考察
作物中放射性Cs濃度は、基準値の百分の一以下まで下がり、福島県内で採取した作物中のSr-90濃度は0.1 Bq/kg生重量以下で、I-129濃度は最も高い値でも0.1 mBq/kg生重量を下回った。圃場土壌中のI-129濃度が他の地域よりも高い南相馬市では、作物中のI-129はFDNPS由来であることが考えられた。一方で土壌中129I濃度と作物中129I濃度は有意な相関はなかった。またFDNPSから放出された放射性セシウムの作物への移行は、作物種が同様であれば、土壌中濃度に対する作物中濃度の比で示される「移行係数」で類推できることをあらためて示した。作物中90Sr濃度は、福島県外の作物から得られている値と同様であり、大気圏核実験由来と考えられる。淡水魚のCs濃度は、食品中の放射性物質の基準値100Bq/kgよりもはるかに低い濃度であった。一方で、ワカサギ中のCs-134 /Cs-137放射能濃度比は0.1で、これはFDNPS事故由来であり、影響を受けていることが明らかとなった。農作物の摂取による各核種による内部被ばく線量を推定したところ、最も高いCs-137による被ばく線量推定値は、南相馬市の「19歳以上男子」の年間0.0012 mSvであった。I-129による被ばく線量は、放射性Csによる被ばく線量よりも3桁以上低く、農作物摂取に起因するI-129による被ばく線量は、放射性Cs による被ばく線量に比べ十分に低いことが示唆された。調査対象資料を整理・解析し、放射性物質濃度の基準値の変遷とその時の根拠を資料にまとめたが、チェルノブイリ事故については、当時の時代と社会背景もあり、規制の設定根拠について詳細な解説は見当たらなかった。
結論
福島県内、周辺地域と比較対象地域における作物中放射性Cs濃度は全て基準値を大きく下回り、一般的なモニタリングでは測定も困難なレベルになってきている。作物中Sr-90濃度は、福島県を除く全国調査の範囲内にあり、事故由来によるSr-90濃度の増加は認められなかった。作物中I-129濃度は、浜通りで他の地点より高い傾向にあった。福島県内の淡水魚は基準値よりも非常に低い放射性Cs濃度のものが、市場に流通していることが確認できた。FDNPS事故由来に起因する年間内部被ばく線量は、Sr-90及びI-129の寄与を考慮しても、1 mSv/yの1/100を下回っており、現行の規準値によって食品中の放射性物質について安全性が十分に確保されていることを確認した。チェルノブイリ原発事故の影響を受けた周辺諸国のセシウムの規制は、常時摂取する食品に対して、介入レベルを適用しない厳しいものであった。ただチェルノブイリ事故後の対策や教訓を調査した各種のプロジェクトに関する知見を得るためには、改めて各種資料を精査する必要があると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2019-11-11
更新日
-

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文献番号
201823029Z