食品中の放射性物質等検査システムの評価手法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
201823024A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中の放射性物質等検査システムの評価手法の開発に関する研究
課題番号
H29-食品-指定-012
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
蜂須賀 暁子(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 山田 崇裕(近畿大学 原子力研究所)
  • 鍋師 裕美(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
  • 曽我 慶介(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部)
  • 畝山 智香子(国立医薬品食品衛生研究所安全情報部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
7,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成23年の東京電力福島第一原子力発電所事故により、放射性物質の食品への移行は食品衛生上の大きな問題となっている。食品中の放射性物質検査は、原子力災害対策本部で決定したガイドラインに従い、地方自治体において検査計画に基づくモニタリング検査を実施しており、毎年行われてきているガイドライン改定の影響評価およびその手法の開発が必要となっている。本研究においては、食品中の放射性物質の検査体制の評価、過去の食品中放射性物質濃度データ解析等を実施し、それらのデータを基に検査ガイドラインの改定とモニタリング検査の実効性の関係を明らかにし、ガイドライン改定の影響評価を行うとともに、今後のガイドライン改定案に資することを目的とする。また、生産者並びに自治体側の管理努力により、現在の流通食品の規制値超過率が極めて低く抑えられているにもかかわらず、依然として国内外の風評被害が存在し、被災地復興の障害となっていることから、消費者への効果的な食品検査及び食品安全性情報の発信の方法についても検討する。
研究方法
①食品中放射性物質の検査体制の評価手法の検討:検査精度の重要因子である濃度分布の評価手法について、非破壊測定機器を用いた方法について検討する。
②食品中放射性物質濃度データ解析:厚生労働省に報告される食品中の放射性セシウム検査データを年度ごとに解析し、モニタリング検査をより効果的・効率的に実施するための検査計画の検討を行う。
③食品中放射性物質等有害物質濃度データ調査:新たに検討すべき核種としてのポロニウム210の分析法を検討する。
④消費者への食品検査及び安全性情報伝達方法に関する検討:消費者の食品検査及び食品検査結果についての理解の状況を明らかにし、食品の安全性情報の伝え方と消費者意識調査を行い、安全だけでなく安心に繋げる方法の検討を行う。
⑤緊急時検査法に関する検討:原子力施設の事故等により規制対象となる放射性核種及び測定法の検討を行う。
結果と考察
① 1)非破壊式放射能測定装置の性能試験として、当該装置の測定室内における検出効率分布の評価を行った。その結果、当該装置2機種において計数効率の空間分布を実測して解析することにより、ほぼ理論通りであることを確認し、昨年度の1機種と併せてその特徴を考察した。2)実際に放射性セシウムで汚染した食品試料を用いた、非破壊式放射能測定装置による測定とGe検出器を用いた均質化試料の公定法による測定結果との比較検討を行った。新たに追加した1機種のキノコ類の測定結果については、Ge検出器による測定結果と良好な相関が得られ、100 Bq/kgに対するスクリーニング検査への適用性について回帰直線の予測区間による方法を用いて検討した結果、現在のスクリーニング法における適用条件をほぼ満足する結果となった。しかしながら、非破壊式装置測定では、いずれの機種においてもGe検出器による測定結果と大きなずれが観測されており、スクリーニング法の準用にあたっては、試料中の放射性セシウム不均一分布が測定に及ぼす影響の評価を実際の測定条件と同一の条件下で評価し、科学的なデータの下に具体的に適用試料種の選別、測定範囲の詳細な決定を行う必要があると考えられた。
②平成30年度に厚生労働省で公表された、非流通品/牛肉を除く食品中の放射性セシウム濃度データ43,678件を集計した結果、流通品の基準値超過率は0.09%で非常に低く、非流通品では0.97%であった。
③原子力施設事故等の人工放射性核種からの影響に比して、天然放射性核種ポロニウム210の影響が大きいと考えられたことから、より実用的な食品中ポロニウム210の分析法の開発を検討した。塩分含有量が少ない試料の場合は簡便な直接ステンレス板電着法が適用可能であるが、サンプリングから測定までを迅速に終えることがポロニウム210放射能を正確に見積もる上で重要と考えられた。
④「食品の基準値」に関する一般的認識を調査し、放射性物質の基準以前に食品の基準値の意味が理解されていないことを明らかにした。さらに適切な情報提供があれば理解が進む可能性を示し、食品の安全性確保と風評被害対策のためには放射性物質に限定しない適切な情報提供の重要性を再確認した。
⑤測定対象核種として、原子力災害対策指針、IAEA、WHO等の400余核種を比較検討した。
結論
放射性物質の検査結果解析から、規格不適合食品の排除は適切になされていると考えられた。今後、監視を継続すべき食品群は、山菜、きのこ、野生鳥獣肉、淡水魚のような山林にその起源をもつ食品と考えられた。より効率的な検査体制の構築・維持により適切な食品の流通を保証すること、並びに消費者が適切なリスク管理を行うために必要な情報を提供していくことは、食品の安全・安心に繋がると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2019-12-18
更新日
2021-07-07

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-12-25
更新日
2021-10-19

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201823024Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,000,000円
(2)補助金確定額
8,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,752,980円
人件費・謝金 280,800円
旅費 572,136円
その他 3,662,978円
間接経費 750,000円
合計 8,018,894円

備考

備考
支出には自己資金18,894円を含む


公開日・更新日

公開日
2021-10-13
更新日
-