香料等の遺伝毒性・発がん性短・中期包括的試験法の開発と、その標準的安全性評価法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
201823015A
報告書区分
総括
研究課題名
香料等の遺伝毒性・発がん性短・中期包括的試験法の開発と、その標準的安全性評価法の確立に関する研究
課題番号
H30-食品-一般-003
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
本間 正充(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター変異遺伝部)
研究分担者(所属機関)
  • 西川 秋佳(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター病理部)
  • 小川 久美子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター病理部)
  • 石井 雄二(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター病理部)
  • 高須 伸二(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター病理部)
  • 安井 学(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター変異遺伝部)
  • 増村 健一(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター変異遺伝部)
  • 今井 俊夫(国立がん研究センター・研究所)
  • 落合 雅子(国立がん研究センター・研究所)
  • 戸塚 ゆ加里(国立がん研究センター・研究所)
  • 三好 規之(静岡県立大学・食品栄養科学部)
  • 筆宝 義隆(千葉県がんセンター・研究所)
  • 平田 暁大(岐阜大学・研究推進・社会連携機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
I. 香料化学物質の安全性をin silico、in vitro、in vivoで階層的に評価する評価系を構築する。QSAR(in silico)、Ames試験、TK6試験(in vitro)、一般毒性・遺伝毒性・発がん性短期包括試験法(in vivo)を階層的に組み合わせることにより遺伝毒性及び発がん性を包括的に評価する。遺伝毒性が疑われる香料についてin vivo試験(一般毒性・遺伝毒性・発がん性短期包括試験)や肝臓または腎臓を標的とする遺伝毒性・発がん性中期包括試験による評価を行う。
II. マウスオルガノイド系を用いる遺伝毒性・発がん性短中期試験法の確立を目指す。胃由来のオルガノイドに対する化学物質の反応性解析法の確立を目的とした技術基盤を構築する。
研究方法
I. DEREK Nexus、CASE Ultraの2つのQSARモデルを用いて、3,942物質の変異原性を予測した。TK変異試験の共同研究を立ち上げ、プロトコールの評価と共有化を行った。gpt deltaマウスを用いてアクリルアミド(AA)の飲水投与試験を行い、DNA付加体形成量を測定した。Acetamideの一般毒性・遺伝毒性・発がん性短期包括試験法による評価として、用量設定試験の後、F344系gpt deltaラットに13週間混餌投与し、一般毒性評価を実施した。3-acetyl-2,5-dimethylfuranの肝又は腎遺伝毒性・発がん性中期包括試験法による評価として、F344ラットを用いた用量設定試験を行った。
II. gpt deltaマウス、C57BL/BALB/c背景のTrp53 +/-マウス、LSL-KrasG12Dマウスの肺と肝臓からオルガノイドを調製した。発がん性試験法としての条件検討を行った。オルガノイドの調製と化学物質処置方法についての標準操作手順書を作成し、樹立したオルガノイドとともに分担研究者間で共有した。胃については、Trp53欠失とCdh1ノックダウンの影響を解析した。
結果と考察
I. 3,942物質のうち58化合物が2つのQSARモデルで陽性と予測された。このうち10化合物に関して実際にエームス試験を行ったところ、9化合物で陽性を示したことからエームス試験法の代替法として十分に可能性があることが示された。TK変異試験のプロトコールを共有化することによって安定したデータが得られた。AA投与マウスの肝臓、肺、精巣におけるDNA付加体(N7-dG-GA)量に顕著な差はなく、組織がAA代謝物に全身的に曝露されていることが示された。一般毒性に関しては、acetamideの本試験において1.25%から肝毒性パラメーターの上昇と、その他の血清生化学ならびに血液学的パラメーターの変化も認められた。3-acetyl-2,5-dimethylfuranについては、180及び540 mg/kg群で認められた肝及び腎相対重量の増加は投与に起因した変化と考えられた。
II. マウスオルガノイド系を用いる発がん性試験法としての条件設定に関して、被験物質によるマウス系統差があることが示された。幅広い被験物質に感受性を示すマウス系統をみつける必要がある。gpt deltaマウス由来のオルガノイドを用いる遺伝毒性試験法については解析を継続する。調製済みのオルガノイドは常温輸送にて他施設間で共有可能であり、標準操作手順書に従った継代・培養・被験物質処置に関する技術が短期間で習得できることが確認できた。
結論
I.食品香料化合物3,942物質について、2つのQSARを用いてエームス変異原性の予測を行ったところ、58化合物で陽性と予測された。10化合物について実際にエームス試験を実施した結果、9化合物が陽性を示した。この結果は香料の変異原性評価にQSAR手法が十分に利用可能であることを示している。TK変異試験の共同研究を開始し、プロトコールの評価と共有化を行った。gpt deltaマウスを用いたAA飲水投与実験を実施し、DNA付加体形成量を測定した。一般毒性・遺伝毒性・発がん性包括試験では、gpt deltaラットにアセタミドを混餌投与し、一般毒性評価を開始した。遺伝毒性・発がん性中期包括試験では、3-acetyl-2,5-dimethylfuranを被験物質として、F344ラットを用いた用量設定試験を実施した。
II. 各種遺伝子改変マウスなどの正常組織から調製したオルガノイド系に陽性対照としての遺伝毒性発がん物質を用いた検討を行った。発がん性試験法としての条件設定に関しては被験物質によるマウス系統差があることが示された。調整済みのオルガノイドは常温輸送にて多施設間で共有可能であり、標準操作手順書に従った継代・培養・被験物質処置に関する技術が短期間で習得できることが確認できた。

公開日・更新日

公開日
2019-09-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2019-09-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201823015Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
30,000,000円
(2)補助金確定額
30,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 20,871,993円
人件費・謝金 2,177,519円
旅費 2,029,478円
その他 4,921,509円
間接経費 0円
合計 30,000,499円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2020-10-02
更新日
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