新たなバイオテクノロジーを用いて得られた食品の安全性確保とリスクコミュニケーションのための研究

文献情報

文献番号
201823014A
報告書区分
総括
研究課題名
新たなバイオテクノロジーを用いて得られた食品の安全性確保とリスクコミュニケーションのための研究
課題番号
H30-食品-一般-002
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
近藤 一成(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 今村知明(公立大学法人 奈良県立医科大学 公衆衛生学講座)
  • 有田正規(理化学研究所 環境資源科学研究 センター メタボローム情報)
  • 竹内一郎(名古屋工業大学 工学研究科)
  • 中村公亮(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部)
  • 為広紀正(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部)
  • 木下政人(京都大学 農学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
29,755,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
諸外国の規制・ゲノム編集・合成生物学に関する情報収集を行い、その結果から仮想的モデル生物を用いたケース・スタディーを行うことで安全性確認に必要なデータや行政上の問題点を明らかにする。食品成分や有毒成分からなるマススペクトルデータベースを新たに構築して、新開発食品中の未知成分同定・推測できるツールを開発、タンパク質のアレルゲン性評価については、非アレルゲンタンパク情報も加味して単純な配列比較ではできない情報処理を人工知能(AI)を活用して行い新たなアレルゲン性予測評価手法の開発を行う。また、ゲノム編集生物開発者(魚類)とともに開発側の問題点や規制の進め方について検討する。
研究方法
・ケーススタディについては、ゲノム編集食品の情報収集結果から、仮想モデル食品を設定して安全性確認時に検討すべき項目、データの種類、問題点の抽出を行った。
・リスクコミュニケーションについては、2012年以来更新されていなかったパンフレット「遺伝子組換え食品の安全性について」の修正を優先して実施した。
・メタボローム解析については、公共データベースから質量スペクトルを網羅的に収集、選別して基礎データセットにした。
・ゲノム解析については、網羅的DNA切断部分解析法の一つSITE-seq法を参考に、全ゲノム解析することなく生じた変異を全ゲノム網羅的に再現性良く抽出する手法を検討した。
・アレルゲンデータベースについては、データ更新とともに機械学習を用いた新規アルゴリズム開発の検討を行った。
・ゲノム編集魚の解析と規制については、マダイとトラフグについて安全性確認に必要なデータについて、特にアレルゲン性について検討した。
結果と考察
・リスクコミュニケーション
厚生労働省担当室とのパンフレット改正に関する打合せを経て、新表示制度やゲノム編集等の追加すべき情報と、最新の消費者の関心動向を踏まえて削除すべき情報を整理し、パンフレット構成案を作成。
・ケーススタディー
ゲノム編集食品について仮想のモデル食品を設定し、安全性確認に必要なデータおよび問題点を抽出した。合成生物学研究の情報収集を行った。アレルゲンタンパクのpH条件における胃酸分解性の違いを検討してpH依存性を示した。
・メタボローム
これまでに化合物の構造類似性を反映した質量スペクトルデータをネットワーク構造として処理することで未知化合物のクラス判別・構造推定を行う基本アルゴリズムの開発を行ってきた。本手法を食品由来の成分の解析に適用するとともに、ゲノム編集前後での化合物の構造変化を正確に検出可能なツールへと展開する。
・ゲノム解析
予測できないオフターゲット切断について、SITE-seq改良法をヒト及びブタの特定遺伝子を標的としたゲノム編集した際のオフターゲット切断を網羅的に解析可能であることを示した。汎用性を向上させ有用性を高める改良を行っている。
・アレルゲンデータベース
H30年度はセリアック病の原因となるグルテンや新規エピトープ情報などDBを更新した。新規予測システム開発の基礎となるアレルゲン/非アレルゲンタンパク配列情報データセットを作製した、
・AI新規アルゴリズム開発
アレルゲン性・非アレルゲン性タンパク質データに、複数の機械学習アルゴリズムを適用した結果、予測に有用なアミノ酸部分配列を抽出できる系列パターンマイニングが最適であった。生物学的、統計学的な両面から分析し、本研究課題に適するような改良を行った。
・ゲノム編集魚作製
leptr遺伝子破壊したトラフグのメタボローム解析結果から、可食部である筋肉において、遊離アミノ酸やATP含量の増加から代謝亢進を認めた。また、新生ペプチドのアレルゲン性は非常に低かった。myostatin遺伝子破壊マダイで同様の検討を行い、欠失塩基数からアレルゲン性を有するペプチドの新生はなかった。
結論
以上の結果から、ゲノム編集生物の開発ほとんどの食用植物で開発研究され、オレンジなどかんきつ類など果樹への応用も見られる。動物では魚とブタで開発中である。厚生労働省作製遺伝子組換え食品のパンフレットを大きく改定して最新の内容にした。これをリスクコミュニケーションに活用していく。新規アレルゲン性予測システムは、最初のプロットタイプを作成した。これは、既存のものよりも精度が高いことが示された。今後さらに改良を重ねて新規構造をもったものでも対応可能なようにする。ゲノム編集時のオフターゲット解析について、ゲノム全体を解析することなくゲノム全体のDNA切断を検出する手法をSite-seq法をもとに検討して動植物細胞へ適応可能であることを示した。また、マダイおよびトラフグについて開発したものについて安全性に関わるデータを取得しながら不足点や問題点を明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2020-06-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-06-23
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201823014Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
33,000,000円
(2)補助金確定額
33,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 11,311,676円
人件費・謝金 8,092,085円
旅費 2,799,806円
その他 7,539,206円
間接経費 3,245,000円
合計 32,987,773円

備考

備考
研究代表者の補助金分で若干の予定よりも使用額が少なく済んだため

公開日・更新日

公開日
2020-06-23
更新日
-