食品用器具・容器包装等に使用される化学物質に関する研究

文献情報

文献番号
201823003A
報告書区分
総括
研究課題名
食品用器具・容器包装等に使用される化学物質に関する研究
課題番号
H28-食品-一般-003
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
六鹿 元雄(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
14,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品用器具・容器包装、おもちゃ及び洗浄剤(以下、「器具・容器包装等」)の安全性は、食品衛生法の規格基準により担保されているが、製品の多様化、新規材質の開発、再生材料の使用、諸外国からの輸入品の増加等により多くの課題が生じている。さらに近年では、食品の安全性に関する関心が高まり、その試験及び分析に求められる信頼性の確保も重要な課題となっている。そこで本研究では、器具・容器包装等の安全性に対する信頼性確保及び向上を目的として、(1) 規格試験法の性能に関する研究では、蒸発残留物試験における蒸発乾固後の乾燥操作に関する検討及びホルムアルデヒド試験法の簡易化に関する検討、(2) 市販製品に残存する化学物質に関する研究では、器具・容器包装における溶出試験の精度の検証及び合成樹脂製器具・容器包装の製造に使用される化学物質の分析法に関する検討を実施した。
研究方法
(1) 規格試験の性能に関する研究では、食品衛生法における試験法について、試験法の改良や試験室間共同実験による性能評価を行った。(2) 市販製品に残存する化学物質に関する研究では、協力研究者より研究課題を募り、市販製品に残存する化学物質の実態等を調査するための分析法等に関する研究を行った。
結果と考察
蒸発残留物試験における蒸発乾固後の乾燥操作に関する検討では、蒸発乾固後の乾燥操作における容器形状や乾燥器の送風方式の違いなど風の影響が残存率にどのような影響を及ぼすかについて揮散しやすいアセチルクエン酸トリブチル(ATBC)及びセバシン酸ジブチル(DBS)を用いて検討した。その結果、現行公定法の規定に準拠している「蒸発皿、結晶皿等」よりも背が高いビーカーを使用すると、乾燥器の送風方式にかかわらず、残存率が増加し、試験機関間のばらつきも改善された。さらに、容器に蓋をして効果を調べたところ、残存率が大幅に高くなり、ばらつきも改善した。しかしながら、蒸発残留物試験では規格の対象となる溶出物の範囲が明確に定められていないことから、さらに試験精度を向上させるためには、蒸発残留物の規格の意義や目的を明確にし、その意義や目的に適した範囲の物質を精度よく測定できる試験法を検討する必要がある。
ホルムアルデヒド試験法の簡易化に関する検討では、アセチルアセトン試液の反応条件と水蒸気蒸留操作の省略について検討した。その結果、アセチルアセトン試液の反応条件を60℃10分間に簡易化することが可能であった。また、水蒸気蒸留操作についても省略可能と考えられた。一方、一部の試験溶液では蒸留操作中にホルムアルデヒドが生成するケースが存在することが判明したため、試験溶液中の夾雑物の除去方法として活性炭法の検証を行った。試験溶液の前処理法として水蒸気蒸留の代替法となり得る可能性が示唆された。しかし、試験溶液の着色や反応を妨害する成分の除去能力については、今後、適切な試料または試験溶液を用いて検証する必要がある。
合成樹脂製の器具・容器包装における溶出試験の精度の検証では、8種類の合成樹脂を用いて試験室間共同試験を行い溶出試験全体の精度を検証した。その結果、HorRat(r)は大部分が基準を満たしたが、HorRat(R)は基準を超過したものが多かった。そのため、単一試験室で行うには精度は概ね確保されるが、試験室間の精度には問題があった。この主な原因としては、試験機関間における溶出操作時の温度や時間管理等の試験溶液の調製操作の違いによるものと考えられた。今後、試験室間におけるばらつきの具体的な要因を解明し、十分な精度を有する溶出試験法を確立する必要がある。
合成樹脂製器具・容器包装の製造に使用される化学物質の分析法に関する検討では、国内の業界団体の自主基準、EUまたは米国の法規制において食品用合成樹脂製器具・容器包装への使用が認められている553物質についてGC/MS分析を行うための情報を収集した。その結果、133物質の保持時間、マススペクトル及び定量下限を確認でき、そのうち114物質の検量線の形状を確認した。これにより、既報のものとあわせて約300種類の物質がGC/MSで分析可能となった。ポジティブリストに収載される物質数は約1000~2000種におよぶと予想され、既に書籍や論文等で分析条件、保持時間等の情報が示されている物質を加えても検査・監視を行うには不十分である。そのため、今回の条件では検出できなかった物質も含め、試験法や分析法が確立されていない物質について、今後も検討を行い、情報を収集して行く必要がある。
結論
以上の研究成果は、我が国の器具・容器包装等に使用される化学物質の安全性確保と食品衛生行政の発展に大きく貢献するものと考える。

公開日・更新日

公開日
2020-03-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-03-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201823003B
報告書区分
総合
研究課題名
食品用器具・容器包装等に使用される化学物質に関する研究
課題番号
H28-食品-一般-003
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
六鹿 元雄(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品用器具・容器包装、おもちゃ及び洗浄剤(以下、「器具・容器包装等」)の安全性は、食品衛生法の規格基準により担保されているが、製品の多様化、新規材質の開発、再生材料の使用、諸外国からの輸入品の増加等により多くの課題が生じている。さらに近年では、食品の安全性に関する関心が高まり、その試験及び分析に求められる信頼性の確保も重要な課題となっている。また、食品には農薬、動物用医薬品、食品添加物、器具・容器包装からの移行物など多種多様な化学物質が混入する可能性があるが、それらの相互作用については情報収集が不十分である。そこで本研究では、器具・容器包装等の安全性に対する信頼性確保及び向上を目的として、(1) 規格試験法の性能に関する研究、(2) 市販製品に残存する化学物質に関する研究、(3) 食品添加物等の複合影響に関する研究を実施した。
研究方法
(1) 規格試験の性能に関する研究では、食品衛生法における試験法について、試験法の改良や試験室間共同実験による性能評価を行った。(2) 市販製品に残存する化学物質に関する研究では、協力研究者より研究課題を募り、市販製品に残存する化学物質の実態等を調査並びにその分析法等に関する研究を行った。(3) 食品添加物等の複合影響に関する研究では、食品添加物の複合影響に関する文献調査を行った。
結果と考察
(1) 規格試験法の性能に関する研究では、器具・容器包装またはおもちゃにおけるフタル酸エステル類の材質試験及び溶出試験、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(乳等省令)のヒ素試験、おもちゃにおける着色料試験、蒸発残留物試験における蒸発乾固後の乾燥操作に関する検討、ホルムアルデヒド試験の簡易化についての性能評価または改良法の開発を実施した。その結果、規格試験法及びその代替試験法の性能把握や問題点の抽出を行うことができた。また、開発した改良法を規格試験として採用することにより、試験精度の向上、試験時間の短縮、試験経費の削減などの効果が見込まれる。この成果は及び試験検体数の増加にもつながるため厚生労働行政に大きく貢献できるほか、消費者の市販製品の安全性に対する信頼性の確保に貢献できる。
(2) 市販製品に残存する化学物質に関する研究では、ポリ塩化ビニル(PVC)製玩具に含まれる可塑剤の調査、植物油総溶出物量試験法の改良法の検討、紙製品中の蛍光物質の検査法改良に関する検討、ポジティブリスト制度(PL制度)の施行後の合成樹脂製品の検査・監視等に資する添加剤の分析法開発、器具・容器包装における溶出試験の精度の検証を実施した。その結果、規格基準が設定されていない物質等について、製品中の残存量や食品等への移行量の実態を明らかにした。これらの結果は、器具・容器包装等の安全性を確保及び向上させるための規格基準の改正や製品の検査・監視等に有用である。
(3) 食品添加物等の複合影響に関する研究では、食品添加物の複合影響に関する文献調査を実施した。我が国で使用が許可され、かつ、その成分規格が設定されている食品添加物689品目を対象として調査した結果、多数の文献が複合影響に関連するものとしてヒットした。そこで、使用頻度及び摂取量が多いと考えられる20品目に対象を絞り、食品添加物としての複合影響に関する文献調査を行ったところ、悪影響を与えるとする文献は1件のみであった。しかしながら、本文献では、食品添加物の実際の使用濃度でのヒトへの複合影響については、今後の検討が必要と結論しており、明らかに複合影響を与えるとする文献を見出すことはできなかった。食品添加物及び食品の組合せは無限に存在することから、情報の収集は困難であり、継続的且つ体系的な調査が必要であると考えられた。
結論
以上の研究成果は、我が国の器具・容器包装等に使用される化学物質の安全性確保と食品衛生行政の発展に大きく貢献するものと考える。

公開日・更新日

公開日
2020-03-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201823003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
現行の5種の規格試験法について試験室間共同試験または試験法の改良を実施した。さらに、市販製品の安全性を確認・確保するための分析法開発や実態調査を行った。関連研究について、平成28年度から30年度末までの3年間に,9報の論文報告と20件の学会発表等を行った。
臨床的観点からの成果
なし
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
講習会または講演会において研究成果を発表した。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
5件
講演5件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2020-03-02
更新日
2023-06-22

収支報告書

文献番号
201823003Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
14,800,000円
(2)補助金確定額
14,800,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 8,123,475円
人件費・謝金 818,748円
旅費 1,278,446円
その他 4,579,331円
間接経費 0円
合計 14,800,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2021-10-15
更新日
-