文献情報
文献番号
201822015A
報告書区分
総括
研究課題名
エビデンスに基づいた転倒予防体操の開発およびその検証
課題番号
H30-労働-一般-002
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
松平 浩(東京大学医学部附属病院22世紀医療センター 運動器疼痛メディカルリサーチ&マネジメント講座)
研究分担者(所属機関)
- 岡崎 裕司(独立行政法人労働者健康安全機構関東労災病院)
- 高野 賢一郎(関西労災病院 治療就労両立支援センター)
- 藤井 朋子( 東京大学医学部附属病院 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
2,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
厚労省統計によると労働災害中、転倒災害が最も多く、平成27年から「STOP!転倒災害プロジェクト」が推進され、リスク要因になる設備改善等が促されているものの転倒災害は減少していない。高齢者雇用が進む中、転倒のリスク要因は明らかにされてきており、ハード面での対策を含む教育、転倒等災害リスク評価の提案も、着実に普及されつつある。しかし、転倒防止体操に関しては、どのようなメニューが適切なのか明確化されておらず、現場での実践も浸透していない。本研究は、腰痛対策も加味した転倒予防体操の開発、普及を目的に、(1)建設業、小売業、製造業、保健衛生業等における実態調査および(2)文献検索と研究者協議による体操案開発を行うものである。
研究方法
(1) 建設業、小売業、製造業、保健衛生業等における実態調査
転倒災害の報告が比較的多い、建設業(n=11)、小売業(n=10)、保健衛生業(n=18)、の39の事業所を対象に、1) ラジオ体操を日常的に行っているか、2) 腰痛予防対策として、日常的に体操を行っているか、3) 転倒防止のために、日常的に体操をおこなっているかを調査し、実施率を算出した。また、製造業に従事する950人に対して健康診断受診時に、体操習慣の有無、体操実施時間、体操の目的、過去1年の転倒回数などを問診票にて調査した。体操習慣、就業時間内での体操の実施、そのうち転倒対策としての体操の実施率を算出した。
(2)文献検索と体操案開発
医学中央雑誌およびOvid Medlineで検索を行った。労働者、勤労者、労働災害、転倒転落、転倒予防、Accidental Falls、 Occupational Injuries、 Prevention & Controlなどの検索語を用い、アブストラクトから本研究と関連があると考えられたのは58件であった。このうち入手可能な53件の全文を読み、主要な23文献を中心にレビューを行った。
整形外科医、産業理学療法士、保健師などによるミーティングを複数回実施し、体操案を作成した。転倒予防体操の作成では筋力やバランス能力だけでなく、姿勢改善やバランスを崩した際の反応も考慮した。
転倒災害の報告が比較的多い、建設業(n=11)、小売業(n=10)、保健衛生業(n=18)、の39の事業所を対象に、1) ラジオ体操を日常的に行っているか、2) 腰痛予防対策として、日常的に体操を行っているか、3) 転倒防止のために、日常的に体操をおこなっているかを調査し、実施率を算出した。また、製造業に従事する950人に対して健康診断受診時に、体操習慣の有無、体操実施時間、体操の目的、過去1年の転倒回数などを問診票にて調査した。体操習慣、就業時間内での体操の実施、そのうち転倒対策としての体操の実施率を算出した。
(2)文献検索と体操案開発
医学中央雑誌およびOvid Medlineで検索を行った。労働者、勤労者、労働災害、転倒転落、転倒予防、Accidental Falls、 Occupational Injuries、 Prevention & Controlなどの検索語を用い、アブストラクトから本研究と関連があると考えられたのは58件であった。このうち入手可能な53件の全文を読み、主要な23文献を中心にレビューを行った。
整形外科医、産業理学療法士、保健師などによるミーティングを複数回実施し、体操案を作成した。転倒予防体操の作成では筋力やバランス能力だけでなく、姿勢改善やバランスを崩した際の反応も考慮した。
結果と考察
(1)設業、小売業、製造業、保健衛生業等における実態調査
建設業、小売業、保健衛生業の39の事業所で転倒防止を目的とした体操の実施率は5%であった。製造業に従事する950人のうち、体操習慣があったのは48%、そのうち就業時間に行っているのは50%、そのうち転倒対策として体操を行っているのは12%であった。
(2)文献検索と体操案開発
職場での転倒リスクの個人要因も、高齢者におけるものと同様にバランス能力、歩行機能、運動習慣などがあげられている。バランス能力の改善や筋力強化を目的としたエクササイズを用いた介入により、バランス能力の改善がみられたという報告がある。転倒対策としての体操については、マツダとJFEスティール西日本製鉄所の実施例があり、転倒やヒヤリハット事例が低下傾向であると報告している。これらの結果から、身体機能に介入する体操は、転倒対策として有効であると考えられる。その内容としては、肩甲帯や四肢のストレッチ、フォワードランジ、スクワットやつま先立ちなどの下肢筋力強化運動、バランス能力向上のための片足立ちやつぎ足などが有効であると考えられる。しかし、勤労者の転倒リスク要因や、転倒対策としての体操による介入効果に関する研究はまだ少なく、今後の縦断研究が必要であると考えられる。
転倒予防体操案の内容は、肩関節、肘関節、手関節、股関節、足関節の可動域向上のための動き、腸腰筋、アキレス腱ストレッチのためのランジ、体重移動のための4方向へのランジ、猫背改善のための胸郭やハムストリングのストレッチ、下肢筋力強化のためのスロースクワット、腰痛予防のためのこれだけ体操、バランス能力向上のためのつま先立ちと片足立ち、骨粗鬆対策として踵骨への刺激のための踵おとしなどである。全体で約3分のプログラムで、オリジナル曲を作成し動画を作成した。
建設業、小売業、保健衛生業の39の事業所で転倒防止を目的とした体操の実施率は5%であった。製造業に従事する950人のうち、体操習慣があったのは48%、そのうち就業時間に行っているのは50%、そのうち転倒対策として体操を行っているのは12%であった。
(2)文献検索と体操案開発
職場での転倒リスクの個人要因も、高齢者におけるものと同様にバランス能力、歩行機能、運動習慣などがあげられている。バランス能力の改善や筋力強化を目的としたエクササイズを用いた介入により、バランス能力の改善がみられたという報告がある。転倒対策としての体操については、マツダとJFEスティール西日本製鉄所の実施例があり、転倒やヒヤリハット事例が低下傾向であると報告している。これらの結果から、身体機能に介入する体操は、転倒対策として有効であると考えられる。その内容としては、肩甲帯や四肢のストレッチ、フォワードランジ、スクワットやつま先立ちなどの下肢筋力強化運動、バランス能力向上のための片足立ちやつぎ足などが有効であると考えられる。しかし、勤労者の転倒リスク要因や、転倒対策としての体操による介入効果に関する研究はまだ少なく、今後の縦断研究が必要であると考えられる。
転倒予防体操案の内容は、肩関節、肘関節、手関節、股関節、足関節の可動域向上のための動き、腸腰筋、アキレス腱ストレッチのためのランジ、体重移動のための4方向へのランジ、猫背改善のための胸郭やハムストリングのストレッチ、下肢筋力強化のためのスロースクワット、腰痛予防のためのこれだけ体操、バランス能力向上のためのつま先立ちと片足立ち、骨粗鬆対策として踵骨への刺激のための踵おとしなどである。全体で約3分のプログラムで、オリジナル曲を作成し動画を作成した。
結論
建設業、小売業、保健衛生業、製造業での転倒予防体操の実施率10%未満と低かった。文献的エビデンスと労働衛生、リハビリ分野の専門家との協議に基づき、腰痛対策も加味した転倒予防体操(新プログラム)を開発した。今後、新プログラムの効果検証を行う予定である。
公開日・更新日
公開日
2019-06-17
更新日
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