じん肺エックス線写真による診断精度向上に関する研究

文献情報

文献番号
201822012A
報告書区分
総括
研究課題名
じん肺エックス線写真による診断精度向上に関する研究
課題番号
H29-労働-一般-004
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
芦澤 和人(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科 臨床腫瘍学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 岸本 卓巳(岡山労災病院 アスベスト疾患研究・研修センター)
  • 荒川 浩明(獨協医科大学 放射線診断学講座 )
  • 大塚 義紀  (北海道中央労災病院 呼吸器内科)
  • 加藤 勝也  (川崎医科大学 放射線医学(画像診断2) )
  • 高橋 雅士  (医療法人友仁会 友仁山崎病院)
  • 仁木 登  (徳島大学大学院 社会産業理工学研究部 理工学域 )
  • 野間 恵之  (天理よろづ相談所病院 放射線部 診断部門 )
  • 本田 純久  (長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科 )
  • 五十嵐 中  (横浜市立大学 医学群(健康社会医学ユニット))
  • 林 秀行  (諫早総合病院 放射線科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
7,370,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、現在じん肺診査に用いられている「じん肺標準エックス線写真集」(平成23年3月)フィルム版および電子媒体版に新たな症例を追加することで標準写真の取りまとめを行い、同時にデジタル画像におけるモニター診断のポイントを提示することにある。また、平成26年〜28年度の厚生労働科学研究費芦澤班を継続し、じん肺健診における胸部CT検査の課題を整理し、今後の施策を検討するうえで重要な基礎資料を提示する。他方、粉じん患者の新規発生を抑えるため、粉じん労働者の防じんマスク効率を調査・検討する。
研究方法
「じん肺標準エックス線写真集」電子媒体版における症例の偏りなどを検討し、CT画
像を含めた新たな症例の追加を検討する。地方じん肺診査の現状(電子媒体版の使用状況
やモニター診断の有無等)把握のためアンケート調査を行う。また、低線量CT画像を前向きに収集し、じん肺の存在診断に関して、CTにおける粒状影の定量化、CAD(コン
ピューター支援診断)の応用を試みる。一次予防に関しては、より効率の良いマスク施行の調査を行う。さらに介入予防による費用対効果の解析を行う。
結果と考察
医療用モニターを用い「じん肺標準エックス線写真集」電子媒体版の全症例を見直し、そのまま採用するか差し替えが望ましいかについて参加者の合議により判定を行った。さらに、症例の差し替えや追加が必要な病型に対して、旧芦澤班で収集した症例から事務局で候補となる症例を抽出し、研究分担者・協力者計10名の合議で症例を評価し、最終的に20例の候補が抽出された。低線量CT画像に関しては、62例の症例を前向きに収集することができた。内55例に関して9名の研究分担者ないし研究協力者の合議で病型の決定を行った(0/ 1 25例、1/ 0 15例、1/ 1 8例、2以上7例)。CADに関して、旧芦澤班第1回小班会議(平成21年8月21日)において合議制で病型を再決定した25例を用い、じん肺CT画像データベースの作成、および粒状影の定量的評価を行った。CADを用いた粒状影の個数,大きさとCT値,分布型による評価は、じん肺の病型の判断に有用であることが示された。防じんマスクに関しては、作業者76名に対して、PAPRと通常防じんマスクの比較検討を行った。通常防じんマスクの平均もれ率は25. 95%と高率で、PAPRのもれ率は0. 47±0. 46(0. 08〜3. 59)%であり、PAPRは通常防じんマスクと比較して、粉じん吸入濃度を有意に軽減していることが実証された。アンケート調査では、呼吸が楽で、粉じん吸入量が少ないというメリットが示され、59. 7%がPAPRを使用したいという結果を得た。また、PAPRと通常の防じんマスクを比較する費用対効果研究の方法論の検討では、客観的な評価項目ではじん肺罹患減少、主観的評価項目ではストレス指標に加えて生産性損失の評価指標であるWPAIが有用と思われた。
結論
「じん肺標準エックス線写真集」電子媒体版の症例の偏りや不足を再確認し、差し替え及び追加が望ましい症例に関して、候補症例を抽出した。来年度、班会議にて更に議論を重ね、「じん肺標準エックス線写真集」電子媒体を改定する予定としている。デジタル版の標準画像とアナログ版の標準画像の整合性については、ほぼ担保されていることが確認できたが、現行デジタル版は、溶接工肺などのその他の陰影や石綿肺などに不足がみられ、今後改訂を行う。また地方局へのモニター導入によってじん肺審査のデジタル化を推進すべきと考える。CADを用いた粒状影の個数,大きさとCT値,分布型による評価は、じん肺の病型の判断に有用であり、今後、前向きで収集している症例群を追加し、多数例の粒状影を統計解析し、高度じん肺診断支援システムの開発を目指す。PAPRは通常防じんマスクに比較して有意に粉じん吸入量を減少させる効果があり、呼吸のしやすさ等のメリットが大きく着用したいと望む作業者が過半数を占めることから、今後の新たなじん肺防止のため活用していく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2019-06-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-06-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201822012Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,100,000円
(2)補助金確定額
8,100,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,564,089円
人件費・謝金 990,384円
旅費 3,108,640円
その他 706,887円
間接経費 730,000円
合計 8,100,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2020-02-25
更新日
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