ラベルへの化学物質の危険有害性情報の付加に関する調査と開発及びその効果の測定

文献情報

文献番号
201822011A
報告書区分
総括
研究課題名
ラベルへの化学物質の危険有害性情報の付加に関する調査と開発及びその効果の測定
課題番号
H29-労働-一般-003
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
山口 佳宏(国立大学法人 熊本大学 環境安全センター)
研究分担者(所属機関)
  • 林 瑠美子(国立大学法人 名古屋大学 環境安全衛生推進本部)
  • 喜多 敏博(国立大学法人 熊本大学 教授システム学研究センター)
  • 富田 賢吾(国立大学法人 名古屋大学 環境安全衛生推進本部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
2,930,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
化学物質の危険有害性情報(以下、「リスク情報」とする。)を知ることは、化学物質を安全に使用する上で必須である。しかし、リスク情報の入手には手間がかかり、実際に化学物質による事故が発生している。そのため、化学物質ユーザーが頻繁に見る薬品ラベルに着目して、さらにIT技術を使って、この課題を解決することを本研究の目的としている。
本研究は、(1)メーカーへの薬品ラベルに関する意向調査、(2)伝達すべきリスク情報の検討、(3)二次元コード変換および表示ツールプログラムの開発、(4)リスク情報の教育効果の評価、(5)リスク情報提供の効果測定という5つのサブテーマを設定している。
平成30年度は、意向調査、プログラム開発とその形成的評価を行った
研究方法
化学物質メーカーに対して、化学物質の危険有害性情報(以下、「リスク情報」とする。)のラベルへの付加についてヒアリング調査を行った。平成30年度は海外試薬メーカー1社およびバルクレベル(ばら積み品)の化学物質を使用、製造している化学工場2社に対して行った。また二次元コードを読み取り、その中の情報を表示するアプリケーションを開発した。二次元コードは、平成29年度に開発した試薬メーカーが収集して整理している製品マスタ(リスク情報、インプットデータに該当)に関する情報を変換したものである。主なプログラミングは委託業者が行った。開発されたアプリケーションは、Android版で開発した。アプリケーション開発の際に要件定義を作成し、仕様書を作成した。まず要件定義のアルファ版を作成し、安全管理の専門家(内容領域専門家:Subject Matter Expert; SME)から評価をもらった。また大学においてアプリの利用者である大学生および大学院生に対して、開発されたアプリの実際に利用して、1対1評価およびグループ・インタビューでアプリのアルファ版の評価を行った。
結果と考察
国内試薬メーカーよりも海外試薬メーカーの方がラベルに二次元コードを付加することに協力的であり、興味を持っていた。化学工場に対するヒアリング調査では、原油精製メーカーは、生産している品数が十数種類しかなく、さらにラベルについては取引相手の仕様書に従うものであるため、記載すべきラベル項目がない。そのため、教育によってリスク情報や法令情報を理解して作業に取りかかれる状況であることがわかった。中間加工メーカーは、400種類ほどの化学物質を数万種類の原料を使って生産している。労働者は化学の知識を有していないことが多いため、化学物質の取り扱いに対する教育について、様々な活動を行っていることがわかった。そのため、本研究で開発したプログラムは、教育に有効そうであることがわかった。
法令情報やGHSに基づくリスク情報を圧縮した二次元コードをスマートフォンなどのモバイル機器で読み取り、アプリケーションで展開することで法令情報やリスク情報をわかりやすく表示するアプリケーションを開発した。アプリケーションはAndroid版で開発した。さらにメガネ型モバイル機器であるスマートグラスでもアプリケーションが利用できるように開発を進めようと考えている。
安全管理の専門家および学生より、開発したアプリケーションの形成的評価を受けた。共通的な指摘として、法令情報やリスク情報の表示方法、特に伝達しやすい工夫が必要であることがわかった。これら情報はすべて文字情報であり、絵やイラストの必要性について提案も受けている。ただし、文字情報と絵やイラストの配置のバランスが伝えやすさに影響することがわかった。この課題に関しては、それら情報をアプリケーションで表示することを活かして、文字情報に色を付ける、知りたい情報、例えば危険性または有害性の高い項目を上部で示す、文字情報をスクロールさせている際に、危険性または有害性の高い項目が表示されたらポップアップで示すような機能を開発することを検討している。また二次元コードを読み取ろうという動機付けも必要であることがわかった。二次元コードの形、色、文字の付加など、二次元コードをアプリケーションで読み取らせようとする工夫が必要である。
結論
本研究によって、化学物質を生産しているメーカーの薬品ラベルに対する見解と状況を理解することができた。また本研究で開発されたシステムやアプリケーションというプログラムは、取り扱っている化学物質数が少ない時は教育支援ツールとして機能しそうであるが、多種の化学物質を取り扱っている大学や試薬メーカーおよび化学工場などでは、薬品ラベルへの二次元コードの付加だけでなく、労働者に対する化学物質の取り扱いに対する教育ツールとして有用であることがわかった。

公開日・更新日

公開日
2019-06-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-06-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201822011Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,800,000円
(2)補助金確定額
3,800,002円
差引額 [(1)-(2)]
-2円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 551,230円
人件費・謝金 0円
旅費 1,039,450円
その他 1,339,322円
間接経費 870,000円
合計 3,800,002円

備考

備考
2円の預金利息あり

公開日・更新日

公開日
2020-02-20
更新日
-