高度な放射線治療装置等の医療機器の配置及び適切な活用に関する研究

文献情報

文献番号
201821033A
報告書区分
総括
研究課題名
高度な放射線治療装置等の医療機器の配置及び適切な活用に関する研究
課題番号
H29-医療-指定-006
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
本田 浩(九州大学 大学院医学研究院 臨床放射線科学分野)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
2,310,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
放射線診断・治療装置が安全・適切に実施されているかどうか調査することは、今後、医療計画等で配置・規制等の検討をするための重要な知見となる。本研究はこれまでの研究手法を発展させ、調査する装置に核医学検査装置や放射線治療装置を追加し、医療機器や専門医等の配置のあり方等について、地域における実情を把握し、基本方針策定等に役立てるための考え方を一定程度整理する。
研究方法
平成29年度のデータを踏まえ、平成30年度においては、医療施設(静態・動態)調査、医師・歯科医師・薬剤師調査、月刊新医療データ、全国地域別・病床機能情報等データベース、厚生局データ、全身麻酔件数を用いて、CT,MRIの実態分析、医療圏別の実態調査を行った。また、厚生局データを用い、急性期病院における画像診断管理加算取得の実態調査を行った。さらに、がん情報サービスデータを用い、大学病院本院の放射線科医のワークロードの実態を調査した。また、NDBオープンデータ及び医療機関へのアンケート調査を行い、MRI検査の施設共同利用の実態調査を行った。
結果と考察
1.CT, MRの実態分析:日本のCT, MRの設置台数の特筆すべき点として、シングルCT(18%)と1.5T未満MRI(28%)の設置台数が多いことがあげられる。平均稼動年数よりも長く稼働していると推測されるシングルCT(合計2593台:病院 819台,診療所1774台)と1.5T未満MRI(合計1918台:病院737台, 診療所1181台)は、病院に比べ診療所に多く設置されており、これらの装置の設置のあり方については、地理的条件等を考慮し、地域の医療ニーズにあった患者のアクセスと放射線診療の安全と質を担保する方策の検討が求められる。
2.医療圏別の実態調査:医療圏別にみた人口10万人あたりのCT台数と面積は弱い相関がある。人口10万人あたりのMRI台数と面積はほとんど相関がない。人口10万人あたりのCT台数CT1台あたりの患者数、人口10万人あたりのMRI台数とMRI1台あたりの患者数は負の相関がある。人口10万人あたりのCT台数と人口10万人あたりのCT患者数、人口10万人あたりのMRI台数と人口10万人あたりのMRI患者数は正の相関がある。放射線科専門医のいない医療圏、画像診断管理加算算定のない医療圏が全体の医療圏の10%以上を占めており、放射線診療の安全と質の担保がはかられていない医療圏の支援の必要性が示唆された。また、画像診断需要の高いものの放射線科専門医が平均に満たない医療圏は、流入・流出患者割合等の実態も考慮にいれつつ、放射線科専門医、装置の適正な配置のあり方の検討が必要である。
3.急性期病院における画像診断管理加算の取得の実態調査:急性期を担うDPC病院において、半数以上の施設が、画像診断管理加算2もしくは3が未取得であることから、画像診断の質や安全性を担保する取組の方策の検討が必要であることが示唆された。
4.大学病院本院のワークロードの実態:画像診断管理加算未算定(4施設)、画像診断管理加算1算定(16施設)の大学病院は、検査数に対し放射線科医数が少ないことが想定された。今回の分析は、CT、MRIの全ての画像を放射線科で読影していない大学病院が含まれている可能性がある点、常勤医と非常勤医の定義が施設によって異なる可能性がある点等により、実態と乖離している可能性がある。しかしながら、ワークロードが大きいにもかかわらず、放射線科医の増員が困難な施設における方策を検討していくうえで、本分析結果はベンチマークとして活用できるものと思われる。
5.施設共同利用の診療報酬算定の実態:施設共同利用の診療報酬導入初年度の調査であるため、準備段階の施設が多かったと想定されるが、CT、MRIの両方が施設共同利用率0%の都道府県が15もある実態は、施設共同率の割合や対象装置の拡大の検討が必要であることが示唆された。
6.施設共同利用と遠隔読影の実態:施設共同利用促進の方策として、現行の加算20点の増点よりも、共同利用算定のための施設基準要件である画像診断管理加算 2 又は 3と共同利用率の緩和の検討が必要であることが示唆された。遠隔読影については、民間読影会社への委託率が最も高く、診療報酬上遠隔読影の対象となる保険医療機関の委託率を増やすには、現行の施設基準の緩和が望まれることが示唆された。
結論
CT,MRIの実態分析、医療圏別の実態調査、急性期病院における画像診断管理加算取得の実態調査、大学病院本院の放射線科医のワークロードの実態調査、施設共同利用の実態調査を行った。これらの分析により、従来から指摘されていた放射線科専門医の不足に関してより詳細なデータが得られた。今後、これらのデータを踏まえ、どのような解釈をすべきか、詳細な検討が必要と思われる。

公開日・更新日

公開日
2021-11-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-11-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201821033Z